02


驚くオトウトに構わず俺は顔を近付けてキスをする。

「ん!?」

オトウトはそんな俺の行動に大きな瞳をさらに見開いてぴくりと肩を揺らした。

「んっ…ぁ…はっ…」

そして、驚きで薄く開かれた口内に舌を侵入させオトウトの舌を絡めとる。

「…やっ…んんっ…ふぁ…」

初めて受ける深い口付けにオトウトは首を振って俺から逃げようとする。

「…ぁっ…んっ…やぁ!?」

キスのせいでゆるく立ち上がっているオトウトのモノを布越しになぞるように触れてやれば、オトウトの唇からは艶を伴った嬌声が上がった。

「やっ…やだぁ…ふっ…ぅっ…」

顔を真っ赤に染めてぽろぽろと泣き出したオトウトの唇から口を離して、溢れ落ちた涙を舌で掬いとってやる。

「気付くまで三年待ってやった。それなのにまだ気付かないのかお前は…」

「ぅえ?…何、を?」

「だから、お前の好きと俺の好きの違いだ」

俺の言葉にオトウトはきょとんとした表情で俺を見上げた。

「え?せんぱ…オニイチャン、俺のこと好きなの?」

はぁ、そこからかよと俺はため息を吐いてオトウトの上から退いた。

「あのな、俺が好きでもない、ましてや冗談で男にキスすると思うか?」

オトウトはぶんぶんと首を横に振って否定した。

「じゃ、じゃぁ、やっと俺を恋人にしてくれるの?」

先程俺にされた行為も忘れ去りオトウトはきらきらと瞳を輝かせて俺を見つめてきた。

「お前さ、俺と付き合えるようになったらどうしたいんだ?」

「ずっと一緒にいたい。で、たまにデートして、朝はオレが先輩を起こして、先輩に手料理を食べてもらうの。いってらっしゃいのキスとお帰りのキスをして、お風呂も一緒に入って、寝る時はぎゅって抱き締めて貰って寝るの」

俺はオトウトの考えにため息を付きたくなった。

なんだその新婚夫婦みたいな乙女的発想は。どっから出てきたんだ。

これじゃ後何年待ったところで俺の感情を理解すんのは無理だな。

「仕方ない、教えてやる」

じゃないと俺の方が先に限界がきそうだ。

「いいか、良く聞けよ」

「う、うん」

俺はオトウトの両肩を掴んで視線を合わせると口を開いた。

「俺の好きは率直に言えばお前を抱きたいって事だ。さっきしたようなコトをしたいってこと。分かるか?」

「………///」

オトウトは俺の言葉に真っ赤になってうっ、と声を詰まらせた。

「俺に抱かれる覚悟があるなら、抱かれても良いって思えるようになったら、その時恋人にしてやる」

俺はそれだけ言ってソファーから立ち上がると自室に戻った。






side オトウト

自室に戻って行ったオニイチャン、(もとい今でも兄として見れずにオレは心の中で先輩と呼んでるけど…)の後ろ姿を見送ってオレはソファーに身を沈めた。

「先輩…」

オレは先輩にキスされた唇に指を這わせて、その感触と生々しさを思い出して一人赤面する。

うぅっ…恥ずかしぃ…。

でも先輩オレのこと好きだって。

「嬉しい…」

だけど、正直少し怖かった。

オレを押し倒してキスをしてくる先輩が知らない男の人のように見えて。

「あんな表情見たことない…」

オレの知らない、不可思議な感情を宿した瞳がオレの瞳を射抜き、心も体も捕えられたように身動き出来なくなってしまった。

それに…。

「オレを抱きたいって」

自分で口に出してオレはまたしても一人赤面してソファーに突っ伏した。

先輩がそんなことを思っていたなんて知らなかった。

オレはただ、ずっと先輩と一緒に居られたら良いとしか思っていなかったから。

「どうしよう…」

オレだって半端な覚悟で先輩に好きだって伝えたワケじゃない。

先輩がオレを抱きたいって言うなら、それで先輩と恋人同士になれるっていうならオレはこの身を差し出す覚悟だってする。

ただ少し、ほんの少し怖いだけで…。



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