01
深夜12時―
チームの集会に顔を出し、疲れきって帰って来た俺は跨がっていた愛車のエンジンを止め、バイクから降りた。
「ふぅ」
ヘルメットを脱げは夜風が髪を撫でる。
バイクのキーをポケットに突っ込み、俺は駐輪場を後にした。
駐輪場とセットで借りているアパートの一室の前に立ち、鍵を差し込む。
表札には草壁。
中へ入り、鍵を再びかける。
玄関を上がり、電気は付けぬまま俺は自分の部屋へ直行した。
「あ〜、疲れた。シャワーは明日の朝浴びればいいか…」
疲れ果てていた俺はベッドにダイブしてそのまま眠りについた。
しかし、それも深い眠りに入る前に邪魔される事となる。
―ガンガン、ガンガン
誰かがドアを叩いている。
「うるせぇな、今何時だと思ってんだよ」
俺はその辺に放ってあった携帯を手に取り、時刻を確認する。
AM12:34―
「馬鹿じゃねぇ」
眠かった俺は無視を決め込もうと思ったが、一向に止む気配のない音に一言言ってやろうと起き上がった。
「うるせぇんだよ」
相手が開いたドアにぶつかろうがしったこっちゃねぇ、とばかりに俺は勢いよくドアを開けた。
「草壁拓磨だな?」
そこにはダークスーツに身を包んだ、眼鏡をした長身の男と他数名あまり人相の宜しくない男が立っていた。
「そうだけどアンタ誰だよ?」
俺が胡散臭そうに目の前の眼鏡男に視線を向けて言えば、周りにいた男達がざわりと騒いだ。
「口を慎めボウズ」
それ以外にも俺に鋭い視線を向けてくる。
眼鏡の男は片手でソレを制して俺に話しかけてきた。
「私は唐澤と申します。貴方に用事がありまして、ついて来て頂けますね?」
疑問系なのに否定を許さない、丁寧な口調なのに眼鏡の奥の瞳は一切笑っていない。
コイツぜってぇ只者じゃねぇ。
かけてくるプレッシャーに俺は内心冷や汗ものだったが、表には出さず俺は口を開いた。
「何処に?」
「行けば分かります」
柔らかく微笑まれて、何となくそれが最後の最終警告だと言われたような気がした。
これ以上はヤバイか、と俺はこっそりため息を吐いて首を縦に振った。
「ではこちらへ」
そう言って案内された先には黒塗りのベンツ。
まさかコイツ等…。
有無を言わさず押し込まれ、数十分。
近代的で綺麗なビルの前で降ろされた。
「さ、行きますよ」
先頭を行く唐澤の後ろを歩く俺の後ろには、先程周りにいた人相のあまりよろしくない男が二人。
まるで逃げ道を塞がれた気分だった。
いや、逃げないけど。
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