06
そのまま力の抜けた身体をソファーに運ばれる。
乱暴な口調とは裏腹に優しい手つきでソファーに下ろされた。
「そこで待ってろ」
そう言って猛はリビングから出て行ってしまう。
その後ろ姿を見送り、俺はぼぅっとした頭を働かせた。
俺は正論を言っただけだ。なのに何処に怒る必要がある?意味わかんねぇ。
アンタにとって俺は道端に転がる石ころと同じはずだろ。
だって俺に価値はない。アンタが欲しがる様なものは何一つ持っていない。
人との関わりをそうやってしか捉えられない俺には、始めから猛の考えていることなど分かるわけがなかった。
「拓磨」
猛がリビングへ戻ってきて、俺に向かって何か投げる。
ソレを何とか落とさず受け取ると、手の中でカチャリと音を立てた。
ヒヤリと冷たい感触に、まさかと視線を落とせば…
「…バイクの鍵」
ギシッと隣に腰を下ろした猛を見上げどういうことだ、と視線で問う。
「俺は従順な人形が欲しいわけじゃねぇ。まして監禁なんざ低俗な連中がやることだ」
絡まる視線が強さを増す。
「ソレは返しといてやる。だが、出掛ける時は必ず誰かに声をかけろ。いいな」
念を押すように鋭く睨まれ、雰囲気に呑まれる前に俺は頷いておいた。
「さて、と。じゃぁ続きといくか?」
ニィ、と張り詰めた空気を一掃し、猛の右腕が肩に回される。
「………」
問われても拒否権を持っていない俺は口を閉ざした。
耳元に唇が寄せられ吐息がかかるのを奥歯を噛み締めて耐える。
「抵抗しなけりゃ昨夜みたいに気持ち良くしてやるぜ」
「…っ」
ぬるりと湿った舌が這い、耳朶を甘噛みされ、くちゅり、と鼓膜を犯す音に身体が震える。
意識したくなくても、昨夜の行為を覚えている身体が勝手に反応してしまう。
「…っ…く…」
猛の左手がシャツのボタンを外して侵入してくる。
肌の上を滑り、胸の飾りを摘ままれぐりぐりと刺激されれば耐えきれず噛み締めた唇から声が漏れた。
「ひっ…っ…ん…」
声を噛み殺し、ビクビクと震える拓磨に猛は瞳を細めて笑う。
「感じてんのか拓磨?」
カァッと顔に熱が集まるのが分かる。けれど、正直に認める事が出来ない俺は首を横に振って否定した。
「そうか…、ならコレは何だ?」
胸を弄っていた手が、シャツから出ていき、足のつけねにズボンの上から触れる。
ゆっくりとなぞるように触れた手が下から上へと動く。
「…んっ…っぁ…」
「気持ち良いんだろ?こんなに反応して」
ジィとジッパーの下ろされる音が耳に届く。
昨夜の情景が思い出され、心は冷えていくのに身体は反対に熱くなっていった。
「くっ…ゃめ…っ…んぁ…」
猛に与えられる愛撫に俺は恐怖を感じ、逃れようと首を振る。
こんなの俺じゃねぇ。
二度目の自分が自分じゃなくなる感覚に酷く怯える。
猛から伝わる熱に恐怖が沸く。
このままいったら俺はどうなってしまうのか…。
「あぁ…っ…くっ…んぁ!」
猛が動く度、ぐちゅぐちゅと結合部から湿った音が立つ。
「はっ…、昨日ヤったばっかなのにキツいな」
眉を寄せ、ギラギラと本性を剥き出しにした獰猛な獣が低く唸るように言う。
「…あっ…ぁ…ゃ…っ…」
欲情に満ちた目で見下ろす猛に、知らずゾクゾクと背筋が震え中に入っている猛を締め付けてしまった。
「―っ。…やるじゃねぇか拓磨」
額に汗を浮かべ、ニヤリと牙を剥いた猛に追い詰められる。
「…ひぁ…っ…ぅ…あっ…ゃめ…」
腰を抱かれ、ギリギリまで抜かれた猛のモノで何度も中を突かれ、次第にその間隔が短くなっていく。
そして、
「ぁ…ぁっ…ぁ、ぁああぁ―――」
ヒクリと足が痙攣し、背を反らして俺は熱を吐き出した。
「くっ――」
その直ぐ後に中で熱い液体が弾けた。
「…ぁあっ…っ…」
何とも言えぬその感覚にふるりと身体が震え、意識が霞んでいく。
「拓磨、…おいっ」
猛が何か言っていたが俺の意識はそこで途切れた。
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