20


それほど遅くならないと言った猛の言葉通り、猛は午後7時前には屋敷へと帰って来た。
その時拓磨は珍しく携帯電話を片手にリビングのソファに座ったまま猛を出迎えた。

「…おかえり」

ここが自分の最後の家。そうしたいと、そうなれば良いと心の底で小さく願えば拓磨の口からは自然とその欠片が言葉として零れ落ちる。今まで猛との間に帰宅の挨拶などあってないようなものであったし、帰るべき家を失ってからは尚更口にしようとも思わなかった小さな想い。

「あぁ…」

猛は自分を見て、それからそらされた視線に僅かに驚きを見せたもののしっかりと頷き返した。

「誰かと連絡でもとってたのか?」

猛の視線が拓磨の右手に握られたままの携帯電話に向く。拓磨は特に隠す事も無くその問いに答えた。

「ちょっと報告を受けてただけだ」

ソファから腰を上げ、自室に携帯電話を置きに行った拓磨はその後、猛と共に母屋に繋がる渡り廊下を通り、夕食を再び奥の間で二人きりで食べた。

「美味い…けど、毎回こんな手の込んだ料理じゃなくても良い」

「文句をつけたきゃ、もう少し体重を付けろ」

実は昼のメニューも夜のメニューも拓磨の体調を考慮して作られたメニューであり、平均より少し軽すぎる拓磨に肉をつけさせる為に猛が注文を付けて用意させた内容となっていた。猛のみの食事であった時は特にあれをどうしろ、これをどうしろという注文もなかったので料理人である瀬良は腕を振るいつつもそこまで豪華なものではなかった。しかし、ここへきて入った注文に料理人である瀬良の魂に火がついた。久々に入った作り甲斐のある注文に栄養面なども色々と考えて熱の入った結果、拓磨の言う手の込んだ料理になってしまっていた。

拓磨はデザートとして出されたバニラアイスをスプーンですくいつつ、対面に座る猛を見る。当たり前の様にぶつかった視線が拓磨の言葉を待つように先を促して来る。

「佐々木に何か聞いたか?」

「いや。あいつがどうした?」

拓磨の問いに、迷うことなく返された返事。逆に聞き返されて拓磨は少し考えてから首を横に振る。

「何かあったわけじゃない。あっちこっち走らせたから、文句でも言ってなかったかと思って」

「アイツは思っても俺には言わねぇと思うがな」

自分の立場をよく分かっている。トップに立つ猛に文句を零すことは無いだろう。もし何かあれば今日の様に日向や唐澤辺りを経由して自分に伝えて来るだろう。余程の緊急事態にでもなりはしない限り。猛は直接佐々木から話を聞いたわけじゃない。屁理屈にも聞こえるかもしれないが。なので、何一つ嘘は口にしていなかった。

「そう」

納得したのかよく分からない声を漏らしてスプーンを進める拓磨に今度は猛の方から話を振る。

「それより拓磨。再来週の土日は空けておけ」

「何かあるのか?」

珍しい指定に拓磨は眉を寄せ、猛を見る。とはいえ、何度も言うようだが、今の自分には予定など何もない。大学の復学手続きと自分の身体のリハビリぐらいで、鴉については暫くノータッチだ。顔を出そうものなら小田桐に追い返されるか、大和に強制送還されるか、そのどちらかだろう。

「あぁ、面倒だが。宇津見さんがお前の顔を見ておきたいらしい」

「は?…俺?」

宇津見さんとは、日向の説明にもあった葉桜会No.2の人間の名前じゃないか。そんな人が何でまた、俺の様な一般人の顔を見たがるのか意味が分からない。

「何で?」

拓磨にしてみれば思いもよらぬ人物からの指名に驚きを隠せない。

「さぁな。何の気まぐれか」

不思議そうに表情を変えた拓磨に猛はさらりと流すと話を続けた。

「場所は向こうで押さえるだろう。お前はその日の予定だけ空けときゃいい」

特別何かをする必要もなけりゃ、俺の隣で黙って美味い飯でも喰ってりゃそれでいい。

「食事もするのか?」

空になった容器にスプーンを置いて、拓磨は呟くように聞き返す。猛の視線もリハビリ中の拓磨の右腕に流され、大した問題にはならないと言った調子で言葉を返される。

「お前が嫌なら食事は別にしてもらうが」

知らないとはいえ、怪我人を呼びつけているのは向こうだ。多少の我儘なら通せる。拓磨もわざわざ初対面の人間に弱みを見せたくはないのだろうと、拓磨の心情を慮った台詞が猛の口から告げられる。

「…少しだけ考えさせてくれ」

あまりにもあっさりと告げられた自分寄りの意見に、それでいいのかと猛側の人間関係を心配したが、猛本人がそう言うなら平気なんだろうと猛を信じて拓磨は少しだけ言葉を濁した。



食事を終えて、離れの屋敷に戻った拓磨は先に風呂をもらい、知らぬ間に自分用にと用意されていた部屋着兼寝巻用のズボンとTシャツに身を包む。肌触りも着心地も良い服に、洗面所にある鏡を覗き込めば、違和感なく自分に馴染んでいた。

「怖いな…」

口を突いて出た言葉とは裏腹に無意識に口からはほっと安堵の吐息が零れ落ちる。自分の中で張り詰めていた緊張の糸が緩んで、どっと身体が重たくなるのを感じる。
けれども、どうしても一人で先にベッドに入る気にはなれなくて、拓磨はのろのろと猛がいるリビングに戻る。キッチンに入って、水を飲む。これで少しは眠気も飛ぶような気がした。





環境の変化もあるだろう。体調も本人が思っているほど完璧ではない。ゆっくりと動き出した心の様相に、何気なくリビングへと戻って来た拓磨の行動を眺めていた猛は、自ら近寄って来た拓磨の顔を見て、僅かに眉をしかめた。
顔色はそれほど悪くはないが、はっきりと眠たそうにしているのが見て取れた。

拓磨は猛が座るソファから少し間を空けて腰を下ろすと、猛の視線に気付いて口を開く。

「なんだよ?」

風呂なら空いたぞと、一見するとまともな会話をしている様に見えるが。その声には力が無い。

「眠いなら先に寝ていろ」

部屋は教えただろうと、猛は拓磨の体調を考えてそう口にした。

しかし、

「まだ寝ない」

拓磨は何故かそこで猛の言葉に反発するようにそう言って、ずるずるとソファにその身を沈めた。まるでぐずる子供のようだ。
そして、僅かに下を向いた視線が意を決した様にもう一度猛を見つめた。

「…待ってる。ここでアンタを」

拓磨の眼差しには躊躇いの色はあるものの、羞恥の色などは一切浮かんでいなかった。

聞きようによっては何とも危ない台詞だが、拓磨にはその自覚がない様子で。ただ自分の本能に従って動いている様子であった。

猛もそんな拓磨の様子から今更誤解して受け取るような事も無い。だが、そんな状態の拓磨に目を向けると猛は自ら近い距離に座ってきた拓磨に手を伸ばす。拓磨の頬に触れ、そっと凪いだ声で聞く。

「ひとり寝が嫌か?」

まだ眠れないかと考えて口にした猛に拓磨は首を横に振る。

「そうじゃない。そうじゃないけど、今日は…」

語尾を濁しながら呟いた拓磨は無意識にか、自分の頬に添えられた猛の手にすり寄るような仕草を見せた。まるで言葉に出来ない声の代わりの様に零れた甘えに猛はソファに座っていた拓磨の身体を強引に自分の方へと引き寄せた。

「っ、ちょっと!何すっ…」

猛の胸元に顔をぶつけそうになって拓磨は慌てて身を引こうとしたが、それを背に回された猛の手が阻んだ。

「今日は、どうした?」

言ってみろと、猛が先を問う。

猛の胸元に飛び込む様な形で緩く抱きしめられた拓磨は、なにか自分が言葉に出来ない想いを抱えるたびに、こうして猛の腕の中に囚われたことをふと思い出す。そうして何故だか泣きたくなるぐらいの安心を覚えて、身体から余計な力が抜ける。手を伸ばして猛のシャツに触れても怒られない、許されている。そう感じて無防備に解けた心がようよう言葉を成して音となる。

「――今日は一緒に寝たい」

何もかもが自分に都合の良い夢のようで、一人で眠るのが少し怖くなった。だから、今夜は一緒に寝たい。これが夢ではないと実感させて欲しい。

そう吐露して大人しく腕の中に収まった拓磨に、随分と可愛らしい我儘だと猛はゆるりと口端を吊り上げる。

「それだけでいいのか?」

そうして、拓磨の奥深くに眠る熱を揺り起こすかのように猛は拓磨の耳元で優しげに囁く。緩く拘束していた拓磨の頭をそっと撫で、胸元に寄り掛かる拓磨の腰を抱く。
互いの体温が感じられる距離に、拓磨は僅かに肩を震わせると顔を上げぬままポツリと言葉を漏らした。

「朝まで。俺が起きるまで、側にいて欲しい」

でも、もし、猛が先に起きるのであれば、その時は一緒に起こして欲しい。

マンションで過ごして来た時には聞かなかった言葉だが、それは口にせずとも猛が拓磨に声を掛けていたからか。
結局、ささやかな願い事しか口にしない拓磨に猛は顔を上げさせると、教え込むようにその瞳に自分を映し込んで、目の前に無防備に差し出されている拓磨の心に触れる。

「お前はまた少し勘違いをしているな」

「なにを?」

無意識には感じ取っているようだが。

「確かにお前の帰る家は変わったが、帰る場所は変わってない」

ぐっと近づいた距離に拓磨からの抵抗はない。

答えを探すように見つめ返してくる素直な拓磨に喉の奥で笑って、素直な感情を覗かせるその目元に猛は唇を寄せた。

「分からねぇか?…最初からお前の帰る場所は俺の腕の中だ」

「っ…」

「もっと欲張りになれ、拓磨」

お前がさっき口にした些細なあれらはすでにお前の手の中にある。後はお前が欲しいと望むものに手を伸ばせばいい。

拓磨の後頭部に添えていた手を頬に滑らせ、そっと親指の腹で拓磨の唇をなぞる。

「お前が良いと言うなら、一晩と言わず、毎日でも抱いてやるぜ」

怪我さえなければそうしていたと、言わんばかりの台詞に腕の中にいた拓磨の肩が震える。体温が上昇したのが抱き締めた腕から伝わって来る。かっと頬を赤く色づかせた拓磨はそれでも腕の中から逃げずに、僅かに身じろぎをすると小さな声を零した。

「怪我が治るまで待ってくれるんじゃないのか」

それは拓磨も猛と同じ思いでいるという意味か。

「へぇ…」

途端に熱い視線に晒された拓磨は息を呑んで、慌てて口を開く。

「―っ、そうじゃなくて。俺が言いたのは…」

そろそろ腕の中で暴れ出しそうな気配を感じて、猛は話を元に戻す。

「分かってる。実感が欲しいんだろう?」

これは現実だという。傷だらけで治療中の心がそれを欲している。

猛の上着を抱いて眠れば悪夢を見ずに済んだように。新しく変わった家でも拓磨が心から安心して安らげる場所だと、その心が思えるように。それには猛の協力が必要であった。

「一晩中、抱いて欲しいんだろう」

「誤解を招くような言い方は止めろ」

「とはいえ、俺にも限界はある」

どこの世界に恋人から一晩中抱き締めて欲しいなど、温もりに包まれて眠りたいなどと言われて我慢出来る人間がいるというのか。ましてや、拓磨の場合は怪我人ということで猛にしては抑えてきた方だ。
さて、どうしてやるかと僅かに逸れた意識に、拓磨も敏感にそれを感じ取ったのか、猛のシャツを掴んだ手に力が込められた。

そして、

「――いやだ」

はっきりと意思のこもった声が猛の鼓膜を揺らす。

「拓磨?」

様子の変わった拓磨に視線を落とせば、拓磨は猛のシャツをぎゅっと握り締めて、まるで突き放されるのを恐れるように言った。

「俺はアンタじゃなきゃ嫌だからな」

もし無理だというなら、我慢すると拓磨は自分が口に出したこと、些細な我儘すらなかったことにすると、その感情を切り捨てようとした。昔から染みついたクセというのは中々抜けないらしい。そう猛はまた何か思い違いをしている拓磨を導くように、拓磨の腰を抱いていた手をそっと妖しく拓磨の下肢へと滑らせる。

「無理を強いているのはお前の方だろう?」

毎日でもと言った猛の言葉に嘘はない。

一度は誤魔化されてやっても良いかと思ったが、俺じゃなきゃ嫌だと煽られて、その気も失せた。猛は拓磨の視線を絡めとると微熱交じりの低い声で拓磨の鼓膜を揺らした。

「そこまで言うなら、お前がよく眠れるように身体の奥から温めてやる」





ふわりふわりと優しげに降ってきた唇を拓磨は戸惑いながらも自らも手を伸ばして受け入れる。何だかんだと言いながらも、包み込むように抱き締めてくれる力強くて温かな腕に拓磨はすっかり安心していた。ゆっくりと閉じた瞼の上にも口付けが降り、唇を塞がれる。

「ん……」

触れ合った唇から、隙間を縫うようにして割り入ってきた舌が拓磨の舌を絡めとり、口腔内で絡み合う。

「は…ぁ…、んっ…」

角度を変え、深さを増した口付けにじりじりと体温が上昇し、鼓動が加速していく。
上顎や歯列をなぞられ、ぞくぞくと震えにも似たあまやかな熱が背筋を伝って身体へと広がっていく。絡み合う舌がぴちゃりと湿った音を立て、鼓膜を揺らす。

「ん、…は……ぁ…」

心地良い眠りを求めていた拓磨は荒くなった呼吸に、そこでようやく自分の間違いに気付く。ぐっと押し付けられた下肢の熱さにびくりと腰が震えた。

「ぁ、…っ」

もとから拓磨は欲求が薄い方である。だから猛の言っていた限界の意味が正確に理解できなかった。これは自分が悪いのかと拓磨は自分の色恋方面での免疫のなさにばつの悪さを覚える。口付けを交わしながら、シャツの中へ侵入してきた手に背中を撫でられ、拓磨はぴくりと肩を震わせた。

「あ、っ…まて、…猛」

息つぎの合間に声を上げれば、拓磨が何やら勘違いをしていると全て分かった上で動いていた猛が面白そうに唇を緩めて聞き返す。

「なんだ?」

「…俺は怪我人だからな」

その行為を咎める様な声音は出たが、その行為自体を止める言葉は零れなかった。何故なら、猛の背中を押したのは紛れもなく自分であり、猛のぬくもりを求めたのも拓磨自身であったから。

目元を朱に染めながら、睨み付けるように見てきた拓磨に猛はゆるりと笑みを深めると良い覚悟だと笑って言う。口付けだけで僅かに熱を持った拓磨の分身を、ズボンの上からそっとなぞるように撫で上げ、猛は甘く囁く。

「優しく抱いてやるさ」

「っ、あ……ッ」






優しいとは何を指していたのか。
負担の少ないようにと移動した寝室の大きなベッドの上で、拓磨は緩やかに与えられる甘い刺激と猛の熱に啼かされる事になった。

「ふっ、…ぅ…、ぁ…あ…」

誰に抱かれているのか、分かりやすく正面から抱かれた拓磨は下肢から聞こえる湿った音に、吐息を震わせ、上擦った声を漏らす。

「まだイくなよ」

自分とは違う温度を持った指先が、熱を宿して上を向く拓磨のものに絡み付きゆるゆると緩やかに上下に動く。すでに一度、達しているそれはぬちゃぬちゃと水音を立て、拓磨を責め立てる。
同時に秘所へと潜り込んでいた指先が中を押し広げる様に蠢き、固く閉ざされていた内壁を擦る。

「っ、はぁ…ッ」

慣れない感覚に、拓磨の眉間にしわがよる。その度にゆるゆると与えられていた刺激に新たな刺激を加えられ、拓磨の意識がそちらに傾く。
じわりと再び蜜を滲ませていた先端をぐりぐりと親指の腹で擦られ、びくびくと腰が震えた。

「あっ、…ぁ、…やだ…っ」

「良いの間違いだろう、…拓磨」

拓磨の意識がそれている隙に、秘所へと潜り込ませていた指が数を増す。猛は拓磨を宥めるように赤く染まった目元に口付けを落とすと、腰を震わせてイきそうになった拓磨のものをぐっと握ってその出口を塞き止めた。

「ひ…ゃッ、ぁ…あ…っ、…な……ん」

「何度もイくと辛いだろ」

だからまだ我慢しろと猛は拓磨の耳元で囁き、この辺だったかと探っていた拓磨の中を強く擦るように指先を動かした。その瞬間、拓磨の身体の中をぞわりとした感覚が走り抜け、腰の奥からは甘い疼きが生まれる。ずくりと疼いた内壁に、僅かに変わった濡れた声が口から零れる。

「ぁ…ッ、ぁ…あ…」

猛の手で塞き止められた熱の塊がぶるりと脈打ち、そこに集まっていた熱が出口を見失って拓磨の中を逆流してくるようだ。

「…っ…ぁ、あ…ッ、…た…ける…っ」

それが余計に拓磨の身体を熱くさせ、苦しめる。
声色の変わった拓磨に熱の解放を求められたが猛はまだその手を緩めることはせず、次の行為へと進む。猛は何も意地悪で拓磨を責め立てていたわけではない。拓磨には時間をかけて、気持ち良いことを教え込み、その中でさらに強烈に猛の熱を焼き付ける。

「もう少し待て」

ぐちぐちと先に拓磨に出させたものと寝室に予め用意していた円滑剤がわりのローションで、拓磨の秘所をひたひたに濡らし、丹念にほぐし続ける。

「んッ…ぁ、…はっ、…もっ、むり…だっ…」

拓磨の左手が熱の出口を塞き止めている猛の腕を掴む。もう限界だと、生理的に涙を滲ませた眼差しで猛を睨みつけ、吐息を震わせながら拓磨は首を横に振って訴える。中を刺激してくる指先に腰はびくびくと震え、いきたくてもいけない状態に身体は火照り、熱くて、熱くて、どうにかなってしまいそうだ。

「たけるっ…」

そのせいか、もういいだろうと、催促するような言葉が拓磨の口から零れ落ちてしまう。
塞き止められた熱が拓磨の理性を溶かしていく。とろりと熱く濡れた眼差しの訴えに猛は唇を寄せ、中がほどよく緩んだ所を見計らって指を引き抜いた。

「そろそろいけるか」

「は…ぁ、ぁ…ン…っ……」

ずるりと引き抜かれた指に、異物感の無くなった秘孔が収縮する。安堵に似た溜め息が拓磨の口から零れたのも束の間、熱くて硬いものが秘孔に押し付けられた。

「っ、…ぁ…」

その熱さに、拓磨はおののくように瞳を揺らし、猛を見上げる。逃げるようにシーツの上で身じろぎをした腰に片手が添えられ、戸惑いと微かに恐怖を宿した拓磨の瞳に猛が映る。




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