Signal小話8(工藤×廉)

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小話[(工藤×廉)


◇◆◇



バタバタと直ぐ側を駆けていく複数の足音。

「おいっ、いたか!」

「いや…。何処行きやがった、クソッ!」

手を引かれ、強い力で胸の中に抱き締められる。とくとくと、胸に押し当てられた耳から鼓動が伝わり…。

「行ったか?」

廉は薄く頬を染めて頷き返した。

「…う、うん。でも別に隠れなくても工藤なら余裕で勝てるだろ?」

そろりと表通りを覗く工藤を、抱き締められたまま廉は見上げる。

すると、表通りから廉に視線を落とした工藤は廉を見つめたままさらりと事も無げにその理由を告げた。

「勝てても、喧嘩した分だけお前といる時間が減るだろ」

「なっ!?何言ってんだよ!」

真面目な顔して何を言うのかと思えば、廉はカァッと顔を赤く染めて狼狽えた。ついでに何だか近くなった顔の距離に、廉は工藤の胸を押し返し慌てて離れようとする。

その中に嫌悪の感情は見えず、ただ耳まで真っ赤にして恥ずかしがる廉の様子に工藤はふっと優しげな笑みを溢した。

「廉」

ふわりと廉の額に触れるだけのキスをして、抱き締めていた腕から力を抜く。
途端、ぱっと自分から離れた廉に工藤は苦笑を浮かべた。

そして、廉に向かって右手を差し出す。

「〜っ、な…に?」

その手を、もういっぱいいっぱいな廉は目元を赤くしたままキッと睨む。

「ん?デートの続きしようぜ」

差し出された右手が、だらりと下げられた廉の左手を掬い、手を繋がれる。

「ちょっ!手、離し…!それにデートじゃ…」

「まだ、な」

恋人という甘い関係ではない。だが、近い内…



(俺は良い返事だけ待ってるからな、廉)
(〜〜っ)


end...

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友達以上恋人未満な二人。デート…ではなく、二人で遊びに出掛けた時の一幕を小話として配信。

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