九琉学園小話29(攻めs)
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小話29(攻めs)
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カタカタとキーボードを叩く音。ガチリとホチキスを止める音。
ふと判子を押す手を止めた京介は一人少ない面子に気付き、宗太へ声をかけた。
「皐月はどうした?」
書類の左角をホチキスで止めていた宗太は京介へ顔を向け、口を開く。
「皐月は家の用事で一時帰宅ですよ。五日前ぐらいに申請書を渡したと思いますけど」
言われて京介は五日前のことを思い出し、あぁ…今日だったかと呟いた。
「あ〜ぁ、皐月ちゃんいないと生徒会室に華がないよな」
キーボードを打つ手を止めて、二人の会話に静が加わる。
「それなら貴方の華を連れて来たらどうです?」
毎度馴れ馴れしい呼び方に、宗太の声が若干刺々しさを増す。しかし、静は気にした様子もなく肩を竦めて会話を続けた。
「それが最近、明の態度が挙動不審気味なんだよな。京介、お前何か聞いてない?」
「圭志からなら何も聞いてねぇぜ」
「宗太も?」
「知りませんね。皐月も何も言ってませんでしたよ」
三人は仕事の手を止めたまま、流れで休憩に入る。宗太がお茶を淹れ、各自自席に着いたまま話は続けられた。
「何かこの間三人で話してたんだよな。それからよそよそしいと言うか…」
「圭志と明と皐月でか?」
「皐月はただ三人でお茶をしたと言ってましたが」
つい最近、偶然にも今いるメンバーが出払っていて、圭志達三人が生徒会室でお茶をしていた。
「俺の予測では黒月が明に要らぬことでも言ったんじゃないかと」
ちらりと京介を見て言った静を、京介は一蹴する。
「圭志がそんなことするわけねぇだろ。したとしても明の為になることだろ」
「明は何て言ってるんですか?」
「訊いても何でもないの一点張りだ」
そろそろ攻めるかとぼやいた静に宗太が助言染みたことを口にする。
「それならたまには引いてみたらどうです?明が言い出すまで待ってみては?何か変化があるかも知れませんよ」
「引く、か…」
「いいんじゃねぇの。相手は明だ。それぐらいが調度いいだろ」
顎に指先を添え、繰り返した静の横顔へ京介はカップに口を付けながら言う。
「京介、そういうお前はこういう時どうしてるんだ?」
「俺?」
「そ。参考までに。宗太は押して駄目なら引く、だろ?」
「えぇ、余程のことが無い限り皐月は素直に応えてくれますよ」
二人の視線が京介へと集まる。カップをソーサーに戻した京介はその疑問に対して事も無げに答えた。
「口を割らせるに決まってんだろ。それでも言わなきゃ周囲を探る」
「強行突破か」
「引いた所で圭志は誤魔化すだけだ。だったら無理矢理いくしかねぇだろ」
「まぁ黒月君ならそうですね」
京介の意見を聞いた所で静は顎に添えていた指先を下ろした。
「なら俺は周囲を探って誘導してみるか」
「待たないんですか?」
「待ってられない」
「お前がいいならそうしろ。ただ俺達まで巻き込むなよ」
「分かってる。上手くやるさ」
切り良く話が終わったのと一緒に自然と仕事を再開させる。不思議と休憩を入れる前より書類を処理するスピードが上がっていた。
(お、圭志からメールだ。今夜は何が食いたいかって…)
(お前らは何処ぞの新婚か。っと、珍しい明からメールだ)
(私も皐月にメールでもしましょうかね)
end...
◇◆◇
九琉学園-小話29-
今度は攻めのみの集まりを小話にして配信。受けの集まりから話がちょっぴり続いてます。
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