九琉学園小話25(受けs)

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小話25(受けs)


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相変わらず生徒会室の応接室が仕事場になっている明は一段落した書類から顔を上げると、同じく生徒会室に入り浸って優雅に紅茶を飲んでいる圭志に目を向けた。

「ん?どうした?」

「あーっと…何でもな…いや、ちょっと聞いてもいいか?」

おずおずと窺うように口を開いた明に圭志は首を傾げ、先を促す。
すると明はちらりと今は出払っていて皐月しかいない室内を気にした様子で言った。

「黒月はさ…神城のどこが、その、…す、好きになったんだ?」

「……質問の意図が読めねぇがまぁいい」

何を思って聞いてきたのか知らないが明の目が真剣だったので圭志もそれに応えるよう返す。

「そうだな。あえて一つあげるなら自分の発言には責任を持ってるとこか」

それは自分の意思をちゃんと持っている証拠。

こう言っては何だが、意外と普通の答えに明はぱちりと目を瞬かせる。
素直に、思ったことが表情に出ている明に圭志は苦笑を浮かべ、言葉を付け足した。

「つまり、アイツは本気で俺を愛してくれてる。それに落ちねぇ奴はいねぇだろ?」

ふっと瞳を細めて笑った圭志に妙な色気を感じて明は顔を赤く染める。
そこへ、紅茶のお供にと皐月がクッキーを運んできた。

「明。何なら参考に皐月にも聞いてみたらどうだ?」

「はい?」

急に話を振られた皐月はクッキーを出しながら小首を傾げる。反応の鈍い明の代わりに圭志が皐月へ言葉を投げた。実は少し、圭志も気にはなっていたことだ。

「皐月は渡良瀬のどこを好きになったんだ?一度振ったとか聞いたけど」

「えっ?それは…」

かぁっと皐月の頬が薄く朱に染まる。そして、照れたようにはにかんで言った。

「僕、先輩から告白されたのは中二の時で。でも当時はまだ恋とか全然分からなくて断ったんです」

そうしたら宗太先輩、友達からでも良いのでって。

「告白されてから付き合うまで半年、先輩は僕の気持ちが追い付くまで待ってくれたんです。向くかどうかも分からなかったのに」

そこまで想われて皐月は宗太と恋に落ちた。
幸せそうにはにかんだ皐月は何となく明が何を聞きたかったのか悟って言葉を紡いだ。

「たぶん僕も一緒だと思います。いつの間にか僕も宗太先輩を好きになってた。好きになるのに理由なんて本当に無いんです。どこが好きかなんて後から付いてくるものだと僕は思います」

だって、

「僕は宗太先輩だから好きになった」

告げられた台詞に明ははっとして皐月を見返す。
実のところ、明は静が好きだと言ったがどこがと聞かれると途端曖昧になってしまい、自分は本当に静が好きなのかどうか一人不安になってしまっていた。

圭志は二人の様子を眺め思う。

「確かに皐月の言う通りかもな」

どこが、じゃない。
アイツだから、好きになった。

皐月を応接室のソファに座らせ、圭志は恋愛の上で先輩な皐月を明の相談相手にと指名した。


(ところで皐月は渡良瀬と喧嘩したりしねぇのか?)
(あまり…と言うより僕、宗太先輩に怒られたこと無いです)
(えっ、嘘!俺なんてしょっちゅう静に怒ってるんだけど)
(お前はよく佐久間にからかわれてるからな…)

end...

◇◆◇
九琉学園-小話25-
珍しく攻めのいない受けのみの集まりを小話として配信。圭志と皐月は明の良き相談相手。

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