九琉学園小話24(京介+圭志)

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小話24(京介+圭志)


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暇だったからと圭志が昼間に作った珈琲ゼリーを食後のデザートとして堪能している時、京介はふと頭の中を掠めた疑問に今更かと思いながら聞いてみることにした。

「そういやお前、何であの時女の格好してたんだ?」

「ん?」

同じく珈琲ゼリーを食べていた圭志は唐突に投げられた話題に暫し首を傾げ、何の事かと行き当たるとあぁ…と声に出した。

「俺、あの頃何度か誘拐されかけたことがあってさ。後で母さんに聞いたら女装は誘拐対策の一環だって」

「ふぅん。…でもそれ意味あんのか?」

「え?」

「よく考えてみろよ。出掛けるにしてもお前、家の前から車に乗るだろ?それで降りたのは俺の家の前。まぁ敷地内だな。それでどこで誘拐されるんだ。使用人に誘拐犯が混じってるならともかく」

手にしていたスプーンを止めて、圭志は言われた言葉を反芻する。

「言われてみりゃ確かにそうだな」

「だろ?それに女装なんかさせたら更に可愛くなって誘拐される確率が上がる」

〔圭ちゃん可愛い〜!さすが私の息子ね〕

京介の台詞に、思い返していた中から母さんの台詞飛び出してきて重なる。

「…まさか」

「なんだ分かったのか?」

「母さんの趣味だったのかも。やたら楽しそうにしてたし」

やけに真剣な顔をして呟いた圭志に京介は呆れた表情を浮かべ、次いで感嘆とした声を漏らす。

「お前の親父の破天荒振りも相当だが母親もか」

「いや、ある意味親父より母さんの方が強者かも。…ここに来る前初めて知ったんだけどよ、昔親父もバイだったらしくて結構遊んでたらしいんだ。それを母さんに知ってるか聞いてみたら…」

「お前もよくそんなこと直球で聞くよな」

呆れたような顔をしてスプーンを口に運ぶ京介に圭志は構わず話を続ける。

「笑顔で知ってるわって言われて、逆に俺が驚かされた。当時親父と良い雰囲気だった男から親父を奪いと…っじゃなくて振り向かせたんだって」

「奪い取ったのか。すげぇなお前の母親」

「まぁ普通とはどこか違うってのは俺も分かってるから別に良いけどな」

再びスプーンを動かし、自作のゼリーを口に放り込んだ圭志は話の流れに乗って京介に聞く。

「そういうお前の親はどうなんだ?お前の母さんってうちの親父の姉さんにあたるわけだろ?」

「普通って言い難いのは同じだが…、今言わなくても家に来れば分かる」

綺麗にゼリーを平らげ、スプーンを置いて立ち上がった京介を圭志は半眼で見上げた。

「逃げたな」

「ゼリー美味かったぜ。また時間のある時にでも作ってくれ」

「……しょうがねぇな」

さっさと退散した京介の背中を眺めながら圭志は呆れ混じりに小さく口許を緩ませた。


(あぁそうだ。誤解のねぇよう一つ言っておくが)
(ん?)
(俺が好きなのは男とか女とかじゃなく…圭志、お前だからだ)
(……っ分かってるよ)


end...

◇◆◇
九琉学園-小話24-
圭志が京介に捕まってから、謎となっていた過去の話。+ちょっぴり親についてを小話として配信。


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