魔王様小話22(ライヴィズ×カケル)

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小話22(ライヴィズ×カケル)


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室内に灯る灯りを弾いて輝く、背を覆うほど長い銀髪に指を挿し込みさらりと梳く。
…さらさらと指通りの良い髪に指先を絡め、右手で掬い上げた銀の髪にライヴィズは唇を寄せた。

そして、紫電の瞳を愛しげに細めると己の腕の中で熱い吐息を溢すその者の名を口にする。

「カケル」

蕩けるように酷く甘い声音が空気を震わせ、髪へと触れた唇は耳元へ寄せられる。

「っ、ライ…」

ぼんやりと熱に浮かされた頬は赤く色付き、ライヴィズを見上げた紫電の瞳が涙で滲む。
目元から零れ落ちそうになった滴を寄せた唇で優しく吸い取り、ライヴィズは安心させるように言葉を紡いだ。

「大丈夫だ。お前には俺様が付いている」

「…ラ…イ」

見つめ合い視線を絡めたままカケルは熱い吐息を溢し、ライヴィズの背中に腕を回す。

「お前一人に心細い思いはさせぬ」

自ら抱きついてきたカケルを抱き締め返し、その心に巣食う感情をライヴィズは慰めるように囁いた。
ふるふるとライヴィズの背に回されたカケルの腕が小刻みに震え、ライヴィズは続けて力強く言う。

「安心しろ、カケル。ここに怖いものなど何一つな…」

「…れのせいで」

「カケル?」

震えていたかと思えばカケルは瞳に涙を滲ませたままキッとライヴィズを睨み上げた。

「誰のせいでこんなことになってると思ってんだ」

ぞくぞくと背筋を這う悪寒にカケルはぁっ…と熱混じりの吐息を溢し、ライヴィズに噛み付く。

「何だよ…っ…魔王族だけが引く、風邪って…」

朝、目を覚ました時点で身体は火照ったように熱く、ベッドから起きることもままならなかった。それが丸一日続くと言う。何の拷問か。

「一度引いてしまえば抗体が出来て二度とは引かぬ。今は辛いだろうが我慢だカケル」

「〜〜っ、俺、人間の時は風邪なんて一度も引いたことなかったんだぞ!それをっ…こんな辛い思いをするぐらいなら俺にんげ…ンぅ!?」

続く言葉はライヴィズの口腔へと消える。
唐突にカケルの言葉を奪ったライヴィズはそのままカケルの吐息も奪った。

「ん、ンッ…ふっ…っ」

角度を変え口付けの合間にカケルの口端から熱い吐息が零れる。

「たかが風邪にそこまで言われるとは…腹が立つ」

「は、ふっ…っにすんだ。俺、病人…なんだ、ぞ…」

とろりと、口付けと熱で潤んだカケルの瞳を深みを増した紫電の双眸が射抜く。

「気に入らん。その身を蝕む熱、すぐに俺様の熱に変えてやる」

するりと整った長い指先がカケルの頬を滑り、再び顔を寄せられる。
それをふいと顔を横に背けることで拒否したカケルにライヴィズは容赦なく甘い声音で告げた。

「冒されるなら俺様の熱に浮かされろ」


(ンな無茶なこと…)
(病人だという事を考慮してとびきり優しくしてやろう)
(だったらやめっ…)

end...

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魔王様のお妃-小話22-
本編から少し外れて番外編を小話として配信。風邪っぴきのカケルと無茶な事を言う魔王様。全ては愛故ってことで!


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