恋愛戦争小話21(猛×拓磨)

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小話21(猛×拓磨)


◇◆◇


不規則な生活の中で、ここ最近誰も知ることはない一つの習慣が猛には出来ていた。

それは…。

借金のカタとして差し出され、猛が買い取った青年。草壁 拓磨。その契約はつい先日猛の方から破棄してしまったが…。

締めていたネクタイを緩めながら寝室に入った猛はベッドがこんもりと山のようになっているのに気付き微かに口端を吊り上げる。

本人に自覚は無いようだが拓磨は一人だとたまにこうして子供のように丸まって眠っている時がある。

脱いだ上着をハンガーにかけ、スーツからラフな服装に着替えた猛はそんな拓磨を横目に一度寝室から静かに離れた。
さっさと所用を済ませ、リビングの明かりを落とすと再び寝室に足を踏み入れる。

キシリとスプリングのきいたベッドを揺らし、拓磨を起こさぬようベッドに入れば、突如隣に現れた熱源に無意識に拓磨の体が小さく震えた。だが、やがてその熱が自分にとって馴染みのあるものだと分かると拓磨の体は無防備に弛緩する。
その瞬間を狙って猛は拓磨の身体を抱き寄せた。

「ん…ぅ…」

普段から人との接触を嫌っている、怖がっている拓磨に触れるには多少強引な手に出なければならない。
それはそれで愉しくはあるがたまには素直になって欲しいものだ。

腕の中に抱き込んだ拓磨の耳朶に触れ、耳元で低く囁く。

「たまには起きて俺を待つという気遣いはないのかお前は」

よほど深い眠りに入っているのか拓磨から返事は返らない。代わりに、嫌がるように顔を反らした拓磨の額に前髪が落ちる。

「ん……」

「寝てても反抗的な態度は変わらねぇな」

拓磨の額にかかった前髪を指先で払い、露になった額に唇で触れる。
それには嫌がる素振りを見せず拓磨はただすやすやと寝息を立てていた。

今はまだ…猛の気配に、体温に気付いて飛び起きないだけマシか。

手負いの拓磨を包み込むように腕の中に抱いて猛はその寝顔を暫く眺めていた。


(……あった…かい)
(朝まで他人を抱いて寝たのはコイツが初めてか…)

end...

◇◆◇
恋愛×戦争-小話21-
話のまんま誰も知らない、知ることもない猛の行動と想い。本編に挿入されなかった一幕を小話として配信。

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