恋愛戦争小話18(氷堂組幹部)

メルマガ限定-恋愛×戦争-
小話][(氷堂組幹部)


◇◆◇


会長が本宅とは別に、仮の自宅として使用しているマンションへ人を連れ込み、あまつさえ住まわせるなんて初めてのことであった。

その日、事務所で唐澤からその話を聞かされた氷堂組幹部の二人は酷く驚いた。

「マジで…?」

砕けた口調で声を漏らしたのは氷堂組幹部の一人、日向。その隣で、声には出さずとも同じ幹部である上総も驚いた表情を浮かべた。

「会長の思惑は私にも分かりませんが事実です」

「はぁ〜、会長がなぁ」

「それで拓磨さんの護衛兼世話係ですが、仮でもあのマンションは現在会長の自宅でもあります。なので護衛には機転も利く、使える人材を配置したいと…」

「でも、相手は借金のカタなんだろう?」

テーブルを挟んで唐澤の向かい側に座った上総が、皆まで言わせず唐澤の言葉を遮る。

「えぇ」

「そこまでする必要があるのか?」

たかが借金のカタに。

「そうだよなぁ。家に置くってのは驚きだが、それって会長の指示なのか?」

二人に疑問を投げ掛けられた唐澤は首を横に振る。

「いえ、私が会長に進言しました」

「そりゃまた何で?何か引っ掛かることでもあんのか?」

鋭くなった日向の双眸に唐澤はらしくなく言葉を濁した。

「そこまでハッキリとは言えませんが、何か予感がするんです」

へぇ…と話を聞いた二人も神妙な顔付きになる。裏の世界に身を置いてる人間としてはたかが勘と馬鹿に出来ないものがあった。

「…良し、分かった。俺がその拓磨くんとやらの護衛に付く」

「日向一人じゃ心配だな。会長から許可が下りれば俺も付こう。どんな人間か見極める必要もありそうだからな」

「では、抜ける間の仕事の割り振りをきちんとしてから御願いします。特に日向」

「何で俺だけ。散々な扱いだな」

ガタガタと椅子を鳴らしながら立ち上がった日向のぼやきを綺麗に無視して唐澤はさっさと退室する。

「お前、間違っても会長のイロに手出すなよ」

「っ、だから、お前等は俺を何だとおもっ…!」

背を向けた上総の後を追い日向も部屋を出て行き、後ろ手に静かに扉が閉められた。


(それで、拓磨さんの第一印象はどうでしたか)
(会長と対等にやりあうって点じゃ中々面白い餓鬼だ。けど、ありゃ何かありそうだな)
(同感だ。あの歳で対等に渡り合えるなど、反面何かしら抱えてる人間だろう)


end...

◇◆◇
恋愛×戦争-小話][-
幹部達から見た始まり。護衛決めの話を小話として配信。護衛兼世話係+監視や観察としてこうして二人が拓磨に付くことに。

[ 19 ]

[*prev] [next#]
[top]



- ナノ -