ストリート小話16(九琉×Signal)

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小話]Y(九琉×Signal)

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連休を利用して久し振りに戻って来た地元で、圭志は京介と賑わう街中を歩く。時おり向けられる周りからの秋波などまったく相手にせず、圭志は先程まで観ていた映画の話を楽しそうに京介としていた。

「最後の最後で話が引っくり返るとは思わなかったぜ」

「あぁ、まさか奴が裏切るとはな」

封切りしたばかりの話題の映画は騒がれるだけあって話の中身も一転二転して凄かった。

「…っと、十二時過ぎてるしどっかで昼にするか」

ちらと向けられた圭志の視線の先にはこの街のシンボルでもある大きな時計台がある。京介もそうだなと頷き返し、どこに入るか決めていた時に圭志は後ろから不意にとんと肩を叩かれた。

「黒月…?」

「あ?誰…だ、って工藤?」

「やっぱり黒月か。久し振りだな。いつこっちに戻って来たんだ?」

「戻って来たわけじゃねぇよ。連休だったから遊びにな」

へぇ、と納得した工藤の視線が京介に向けられる。それに合わせて圭志は京介を工藤に紹介し、工藤のことを京介に教えた。

「一応工藤の方が年上だけど敬語は要らねぇだろ」

「お前が言うな。まぁここは学校じゃねぇし俺も細かい事はあまり気にしないからそれで構わないぜ」

ふっと口許を緩めた工藤に京介は早速とばかりに口を開く。

「圭志とはどういう関係だ?」

「関係っていっても、な。知り合ったきっかけは確か黒月が夜の街でガラの悪い奴等に絡まれてたのを助けてからか」

「お前もそう大差無いだろ総長。コイツ、こう見えてこの街牛耳ってるDollってチームの総長なんだぜ」

可笑しそうに笑う圭志に工藤はどういう意味だその笑いはと軽く圭志の頭を小突く。気安いそのやり取りに京介はどこか面白く無さそうな顔をし、それに気付いた工藤が苦笑を溢した。

「ま、ただの友人だな。俺には…」

「あっ、居た、工藤!お前人待たせておいて何して…っとごめ…邪魔しちゃったか?」

その工藤の声を遮り、人混みを抜けて駆け寄って来た廉は声をかけてから工藤の側に他に人がいることに気付いて慌てて口を閉ざす。

「いや、待たせて悪かったな廉」

廉に視線が向いた途端、工藤の纏っていた空気が一変する。柔らかく穏やかな…。

「おい、圭志。アイツは?」

「Larkの坂下 廉。工藤の片想いの相手だ」

先程とは明らかに違う工藤の眼差しと態度に、京介は傍らに立つ圭志と視線を交わす。

「工藤、俺達もう行くぜ」

「ん、あぁ…引き留めて悪かったな、神城も。デートの邪魔しちまって」

「え?」

一人、話の飲み込めない廉が圭志と京介を交互に見て目を丸くした。
素直な反応を返す廉に圭志はクスリと笑い、京介に肩を引かれるまま抱かれる。

「じゃぁな、坂下も。次に会ったらダブルデートでもしようぜ」

かぁっとみるみる内に赤く染まっていく顔と、工藤のからかうな!と言う言葉を背に圭志と京介は歩き出す。人目を憚らずこめかみに口付けてきた京介に圭志は笑った。

「工藤に嫉妬したか?」

「少しな」

「ン…、でも、分かったろ?」

掠める様に重なった唇が離れ、圭志は瞳を細める。

「アイツ、坂下とかいう奴しか眼中になさそうだったな」

返された返事に圭志はその通りだと笑い、通りに面したファミレスの前で足を止めた。

「ここで良いか?」

「構わねぇぜ」

そうして、二人のデートはまだまだ続く…。



(京介、好きだぜ)
(何だいきなり)
(ん、何となく…な)

end...

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ストリート-小話]Y-
九琉メインCPとSignalメインCPのコラボ。遭遇編?の一幕を小話として配信。続く…かも。

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