路地裏小話14(Signal×彩王)

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小話]W(Signal×彩王)


◇◆◇

まだまだ陽は高く、影の落ちる路地裏も今は未だ明るい。少しだけ、と…近道をしようと路地裏に足を踏み入れた廉は少し進んだ先の曲がり角でいきなり飛び出してきた人と正面衝突した。

「っ、て…!」

「いっ〜…っ、悪ぃ!急いでて」

互いにぶつけた額を押さえ、鈍く痛みを発する額に顔を歪めて二人は顔を合わせた。
そして、廉は目に飛び込んできた鮮やかな蒼い瞳と綺麗な銀髪に息を飲む。

「本当悪ぃ。俺急いでて…」

「あ、いや…大丈夫」

背は廉と同じぐらいか。
襟足の長い銀髪を罰の悪そうな顔で掻き上げ、ちらちらと自分の背後を気にしている。

「それと悪いついでにここ何処だか分かるか?」

「え?ここは…」

道にでも迷ったのだろうかと、首を傾げつつ答えようとした廉の言葉に、ばたばたと駆けてくる足音が被った。

「見つけたぜ、ヒサ!」

「チッ、しつこい奴等だな」

そうしてあっと言う間に何故か廉もろとも不良集団に囲まれる。

「おいおい、一般人を巻き込むなよ。頭の程度が知れるぜ」

「ンだと!」

ヒサと呼ばれた銀髪の少年は場を収めるのではなく相手を挑発すると、廉を庇うように一歩前に出た。ちらと廉を振り返りヒサは言う。

「アンタ、俺から離れるなよ」

「あ、待っ…!」

敵意を一身に集めたヒサは廉を背に守りながら不良集団と乱闘を始めた。
しかし、相手も馬鹿ではない。ヒサの弱点を突こうと隙を狙って廉へと拳が飛ぶ。

「っ、クソ!逃げろ!」

路地裏にヒサの焦った声が響き、…廉は自分に迫り来る拳を冷静に捌くと僅かばかり腰を落として敵の腹部に握った拳を突き入れた。

「がはっ…!」

「なっ、お前!戦えたのか!?」

驚くヒサの背中に背中を合わせ、廉は一つ頷く。

「これでも仲間内では一応強い方だと思う。それより、前」

「はっ、ンじゃ後ろは任せた!」

気掛かりがなくなったお陰か先程までの動きが嘘のようにヒサは不良集団を沈めていき、廉の前に立ち塞がっていた不良達も数分と持たず地面に転がった。

服についた汚れを払いながら振り返ったヒサに廉が聞く。

「ところでこの人達は何なの?」

「あぁ…。ここは俺の縄張りじゃねぇってのに、誰から話を聞いたのか俺を倒しに追ってきたんだ」

「縄張り?」

「俺はこの街の住人じゃねぇからな。あ〜ぁ、用事で出てきたってのに…迷子だよ」

詳しくは分からないが今ヒサが困っているというのは良く分かった。
廉は少し考え、これも何かの縁かと道案内を申し出る。

「俺のは急ぐ用でも無いし。どう?」

「なら頼む。正直助かったぜ」

倒れ伏す不良共には目もくれずヒサは歩き出す。それに釣られるように、廉は少しだけ伸びてる不良達を気にしつつ路地裏から抜け出した。


(そういえばアンタ名前は?俺、糸井 久弥。彩王の一年)
(俺は坂下 廉。白桜の一年。もしかして同い年?)
(だな。短い間だけどよろしく)

end...

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路地裏-小話]W-
Signalと彩王学園の主人公の邂逅。互いにチームの総長だとは知らず背中を合わせた二人。共闘の一幕を小話として配信。


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