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場所を応接室に移し、圭志は透の横に腰を下ろした。

テーブルには教科書とノートが開かれており、透はシャープペンを右手に持つ。

「ねぇ、圭ちゃん。もしかして会長の個人情報でも覗いてたの?」

パソコンの中に何が入っているのか知っている透は好奇心に満ちた目で圭志を見上げた。

「何で俺が京介の…」

「でも、それは駄目だよ。いくら気になったからってそういうのは本人に聞かないと!圭ちゃんが聞けば会長はきっと何でも教えてくれるよv」

「透。前から思ってたんだけどお前なんか勘違いしてねぇか?」

やたら京介とくっつけようとする透に圭志は口を挟む。

すると透は一瞬きょとんとし、してないよと言い切った。

「だって圭ちゃん会長の事好きでしょ?」

「はぁ…。だからそれが間違いだって言ってんだ。どう見たら俺がアイツを好きだってことになる?」

さ、この話は終わりだ。時間も無いしさっさと勉強始めるぞ、と圭志は無理矢理話を切り上げてしまう。

「そうかなぁ?最近の圭ちゃん、よく会長を目で追ってる気がしたんだけどなぁ」

「おい、明!お前もいつまでぼんやりしてんだよ。暇ならこっち来い!」

ポツリと溢した透の声は圭志の声と重なり、圭志本人の耳には届かなかった。






圭志が透に勉強を教え終えた頃にはすでに十時を回っていた。

「ありがと圭ちゃんvこれならなんとか出来そうだよ」

「そうか。頑張れよ」

圭志は残り少なくなったコーヒーカップを傾け、一息吐いた。

そして、圭志の正面で黙々と自分の勉強をする明を見てテーブルに身を乗り出す。

「明、お前ももう切り上げろ」

「…ん」

まだどこか元気のない明にさすがの圭志も心配になってきた。

その様子を見かねて、横で筆記用具を片付けていた透がこっそり圭志に耳打ちした。

「数日前、佐久間さんにキスされたんだって」

「それだけでコレ?」

もっと深刻な問題かと思っていた圭志はあまりにも軽い問題に心配顔から呆れたような表情に変わる。

と言っても明からすれば深刻な問題で。

「そればっかりは自分でなんとかするしかねぇな」

何でもない、と口を割らなかった明の気持ちが少なからず分かった圭志はそれ以上問うのを止めた。

「とにかく今日はもう遅いし、自分の部屋に帰ろうぜ」

そう言って圭志が立ち上がれば片付けを済ませた透も立ち上がる。

「あっ、そうだ!まだ圭ちゃんにお礼してない」

「今度でいい」



エレベーターで六階へ降り、圭志は二人と別れた。


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