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九琉学園の門の前に一人の青年が立っていた。全身を黒い服で統一したその立ち姿は雑誌のモデルのようで青空の下、異様な雰囲気を醸しだしていた。また、両耳に光る赤いピアスと赤みがかった黒い髪、切れ長の鋭い瞳が青年をより際立たせていた。

「ここが九琉学園か…」

青年、黒月 圭志(クロツキ ケイシ)は門を見上げて呟くと、門に設置されているインターフォンを押した。軽快な音楽の後、事務的な男性の声が流れた。

「どちら様でしょうか?」

「あ、今日から九琉学園に編入する黒月です」

しばらくインターフォンの向こうで紙を捲る音がした。

「それでは門を開けますので、中に入りましたらそのまま真っ直ぐに進んで下さい。右手に見える校舎の六階に理事長室がありますのでそちらに向かって下さい」

インターフォンは一方的にそう告げると切れた。





圭志は言われた通り門をくぐると真っ直ぐ進んだ。

進んだ、が…。

「一向に校舎が見えねぇ」

圭志は急な転校による荷造りと睡眠不足で疲れていた。その上、門からかれこれ20分は歩いていた。圭志は少し休憩しようと勝手に決めると横道にそれて休める場所を探した。


少し進むと、木々に囲まれてはいるがちょっとした噴水があり、その側にベンチが設置された開けた場所にでた。

「へぇ、学園の中にこんな場所あるんだ」

圭志はぐるりと見渡してベンチに寝転がると、右腕を顔の上に乗せて目を瞑り寝る体勢をとった。

それからすぐに圭志は眠りに落ちた―。



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