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一方、会場を後にした圭志は部屋に向かって長い廊下を足早に歩いていた。

「黒月先輩、待って下さいよ〜」

その後を一夜が追い駆けてきて、圭志の着ていたドレスの裾を掴む。

「放せ」

「嫌っス」

「俺に構うな」

「どうしてアイツとの関係を否定しないンスか?」

冷めた表情で圭志が一夜を見下ろしても一夜は怯むこと無くそう聞いてきた。

「……お前には関係ねぇだろ」

圭志は学園に来てからというもの、この手の話や生徒達から様々な視線を向けられ、自身でも気付かぬうちに精神が疲弊していたらしく一夜に返す言葉が更に冷めたものになっていった。

「関係あるっス。俺、先輩に興味あるんです」

「へぇ、俺に?」

圭志は冷めた瞳のまま口元だけ歪めて笑った。

「そうっス。だから…」

一夜が続きを言い終える前に圭志は手近な部屋に一夜を押し込めてドアに鍵を掛けた。

「は?先輩何してンスか?」

急に腕を掴まれたと思ったら部屋の中に突き飛ばされ、ワケが分からず一夜は圭志を見つめた。

そして、くるりと振り返った圭志を見て一夜ははっ、と息を飲んだ。

「せ、んぱい?」

口元に笑みが浮かんではいるものの、目がまったくと言っていい程笑っていなかった。

その瞳に灯る光も弱々しくなっているように思えた。


「速水」

圭志の唇から普段聞いているより低い声が溢れる。

「なっ、何っスか?」

一夜はそれでも圭志の雰囲気に呑まれまいと、いつもの調子で軽口を叩こうとして失敗した。

「お前、俺を鳴かせたいって言ったよな?」

圭志は座り込んでいる一夜の前にしゃがむとその顎を左手で掴み上げ瞳を覗きこんだ。

それに対し一夜も反らすこと無くじっと見つめて頷く。

「言ったけど…何?もしかして今からヤらせてくれるンスか?」

「まさか…」

フッと笑って圭志は一夜の顔に唇が触れ合いそうになるぐらい自身の顔を近付けて囁いた。

「ヤられんのはお前の方だ」

圭志は驚きで目を見開いた一夜の唇を奪うとその場に押し倒した。

「痛っ―、んんっ!?」

一夜は抵抗する間も無く両手足を抑えられ、口内を荒らされる。

「っ…んっ…あっ…」

圭志の舌が一夜の口内を味わうよう、歯列をなぞり時に舌を甘咬みし互いの唾液が交ざり合う。

「…ちょ…ふっ…まっ」

「……何だ?」

一夜の制止の声に唇から口を放した圭志は、自分と一夜を繋ぐように出来た銀の糸をぺろりと紅い舌を翻して舐めとると、依然として冷めた瞳に抑揚のない声を発した。


「先輩、何か変っスよ?おかしい」

「どこが?」

一夜が圭志の行動に疑問を抱いて投げ掛けるが、圭志はまったく気にした様子もなかった。

「どこがって……っぁ」

話をしている間にも圭志の右手が一夜の服の中に侵入し、一夜は思わず出た自分の甘い声に唇を噛み締める。

「噛むなよ。もっと声を聞かせろ」

圭志は瞳を細めうっとりと一夜の耳にそう流し込む。

「……っ。先輩、本当におかしいっスよ…」

一夜は快感に流されまいと圭志の肩を両手で掴んで押し返す。

「俺を抱きたいって言った癖に俺に抱かれんのは嫌なのか?」

「べ、つに…んっ。そういうワケじゃないっ。元々俺は気持ちよければどっちでも…」

「ならいいだろ?」

上着を脱がされ、中に着ていたワイシャツもボタンが外される。

圭志はほどよく鍛えられ筋肉のついている一夜の胸に顔を寄せると、紅く熟れた二つの突起に舌を這わせ口に含んだ。

「……っ」

「声出せよ」

「はっ…ぁっ…せんぱい…ヤるなら…ベットに」

ヤってもいいけど、このままここでヤるのは嫌だと一夜が告げると、圭志は一旦手を止めて一夜を軽々抱き上げた。

「先輩力持ち〜」

一夜は落ちないよう圭志の首に両手を回して口笛を吹いた。


綺麗に整えられたシーツの上に一夜を下ろすと、圭志はその上に覆い被さる。

それを見て一夜が圭志の顔を引き寄せて口付けながら言う。

「先輩、ドレス着たままヤるンスか?」

「それもそうだな」

そう言って圭志は起き上がると着ていたドレスを脱ぎ始める。

「俺も手伝いますよ」

一夜はワイシャツの前をはだけさせたまま起き上がると、圭志の後ろに回りドレスを留めていたホックを外す。

そして現れた綺麗な背中に唇を寄せてキスをする。

「先輩、やっぱ俺に抱かせてよ」

「………」

邪魔なドレスを部屋の端に脱ぎ捨てた圭志は再び一夜をベットに押し倒すとキスを与えながら、右手で一夜のベルトを外し前を寛げさせ右手を下着の中に侵入させた。

「んっ…せんぱ…っ…はぁ…」

緩やかな刺激を与えられ、一夜はたまらず圭志の首に回していた腕に力を籠める。

圭志は耳に掛る熱い吐息と艶を含んだ甘い声にくくっと声に出さず肩を小刻に揺らして笑うと、一夜の背中に回してた左手を背中から尾骨のラインに添って上から下へ下ろしていく。

そして、臀部に辿り着くとゆっくりとした動作で人差し指と中指を割れ目に押し当て、その奥に存在する秘所につぷりと指を挿入させた。

「…んっ…ぁ…はっ…あぁ…」

身を僅かにこわばらせた一夜に、圭志は添えていた右手を上下に激しく動かす。

「つぁ…はぁ…っ…んん…」

頬を朱に染めて、潤んだ瞳に、口から溢れる吐息と声、その姿は普段の生意気な一夜からはまったく想像出来ないくらい欠け離れていた。

圭志はそんな一夜の様子に笑みを深めると、目尻に溜って今にも溢れ落ちそうになっている滴を舐めとり口付けた。

「一回出しとけ」

「…ぁっ…ん…ぁ…ぁあ…あっ―――」


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