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別々の部屋で衣装とメイクをされている京介達は圭志達とは違い燕尾服に髪を少しいじった程度でさほど時間もかからず用意が出来た。

髪をセットしている間外していた眼鏡を掛けて、静は室内の時計で時間を確認する。

「50分か…。そろそろ行かないとな」

「その前にあいつら迎えに行くぞ」

京介は座っていた椅子から立ち上がるとさっさと部屋を出ようとドアへ向かう。

それに静もはいはい、と言って続く。

最後に宗太が部屋を出る前に振り返り、部屋の中にいる面々にお礼を言ってから扉を閉めた。

先を行く京介に宗太は声を掛けた。

「そう言えば京介、黒月君のドレスは貴方が用意したんですか?」

この学園に通う生徒は大体が金持ちの生徒でこういったパーティーでは、衣装は各自用意する様になっているのだ。

「そうだ。アイツに似合いそうなのを俺が一着用意しておいた。お前等だって用意したんだろ?」

「もちろん、やっぱ自分のパートナーは着飾らなきゃな」

「それはまぁ。皐月にぴったりな衣装を用意しましたけど…」

そして、京介は辿り着いた部屋の扉をノックもせずに開けた。


-ガチャリ-


扉の向こうには丁度準備の終わった三人がいて、扉の開いた音に三人は振り返った。


皐月は淡いクリーム色のドレスを身に纏い、宗太に気付くとぱっと笑顔になり宗太に駆け寄る。

「わぁ〜、宗太先輩格好良い!!うわっ!!」

しかし、普段履く事のないヒールの高い靴のせいで前のめりに転びそうになる。

「皐月」

もちろん転ぶ前に宗太が受け止めたが。

「へぇ、皐月ちゃん可愛いじゃん」

抱き止められた皐月を上から下まで眺めて静が言う。

「あっ、ありがとうございます」

皐月は静の称賛に素直にお礼を返した。

「で、俺の明くんは…」

「誰がお前のだ!!」

グリーンのドレスを身につけた明は、テーブルの上に置いてあった口紅を静に向かって投げつける。

「おっと、人の物を投げたらいけないな」

静は投げつけられた口紅をキャッチし、明を観察しながら軽口をたたく。

「お前が変なこと言うからだろ!!」

「うん、似合ってるな。さすが俺」

明の言葉をスルーして静は一人うんうん、と頷く。

その隣で圭志を見ていた京介は、圭志に近付くとフッと笑った。

「お前も似合ってるぜ」

圭志は自身の髪色と似た、深紅と漆黒の混じり合うドレスを翻し、京介に嫌な顔を向けた。

「似合っても嬉しくねぇ。最悪だ」


圭志が不機嫌丸出しでいれば、他の面々が圭志を見て口を開く。

「黒月、もう諦めろよ。俺だって嫌だけどこれが決まりなんだし…」

「でも、黒月先輩は女装してても格好良いですよ!!ねっ、先輩」

「皐月それはフォローになってませんよ」

「たしかに。黒月って明達と違って美少女系じゃなくて、どっちかって言うと美女って感じだな」

静の発言に圭志は眉をしかめて更に嫌そうな顔をし、女装する原因になった京介を睨みつけた。

「覚えてろよ、京介」

京介はフッ、と鼻で笑っただけで何も言わなかった。

「しっかし、口を開くと女王様って感じだな」

「ははは、確に…」

「それでは行きましょうか。生徒達ももう集まってる頃でしょうし」

宗太は皐月の手をとって京介に言う。

「そうだな」

京介も室内の時計に視線をやって頷いた。


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