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ゴール地点にはばらばらと生徒達が戻って来ていた。

「皐月、カプセルのチェックをしろ」

「はい」

皐月はゴール地点の一角に前もって準備していたテントに入り、拡声器を手に生徒達に話し掛ける。

「カプセルを見つけた人はカプセルを持ってこちらに報告しに来て下さい」

皐月の声に促され生徒達はテントに並ぶ。

「静も手伝ってこい」

「はいはい。一人でやらせて何かあったら宗太に殺されるからな」

静はそう呟いて皐月の手伝いに向かった。

「圭志、お前も手伝え」

「何で俺が」

「いいから来い」

京介は圭志の腕を掴み、中央に設置されている台に上がると端に置かれていた拡声器を手にとる。

「たった今、この時間をもってゲーム終了とする。ゲームに使われた道具は静に返却、宝を手に入れた奴は皐月に報告しろ。それが終わったのものは邪魔にならねぇようテントから離れて待ってろ」

それから、と京介は言葉を続ける。

「こいつがパーティーでも俺のパートナーになる。間違っても手ぇ出すなよ」

圭志の腕を引いて、京介は生徒達にそう告げた。

「「えぇ〜〜〜!!!」」

それに大多数の生徒から不満の声が漏れる。

「俺だって断れれば断ってる」

煩く騒ぐ生徒達に圭志はぼやいた。


「俺の決めたことに文句でもあんのか?」

京介がそう言えば騒いでいた生徒達がぴたりと静かになる。

「京介!!」

そこへ、足早にゲーム会場に向かって来た宗太の声が響いた。

台の前に辿り着くと京介に降りるよう言って拡声器を奪う。

「心配になって早く来てみれば貴方って人は!!」

「パーティーで騒がれるより今言った方がいいだろ」

「そうですが、黒月君の事も考えろと言ってるんです!!前置きもなく宣言して、敵意を向けられるのは黒月君なんですよ!?」

宗太に心配された圭志はそう言えばそうだな、と他人事の様に頷いて京介を見る。

しかし、京介は宗太の言葉を鼻で笑った。

「はっ、こいつがそんなんにヤられるわけねぇだろ」

どこからくるのか分からないが、京介は自分のことの様に自信満々に答えて、視線を圭志に向けた。

それを受けて圭志も言う。

「まっ、京介の言う通りだな。渡良瀬が心配してくれんのは嬉しいけど俺はそんなに弱くない」

「ですが…」

今までの京介と圭志の攻防を見ていない宗太は納得できず、圭志を心配そうに見る。

「それより早くゲームを終らせようぜ」

この話しは終わりだ、と圭志は宗太に笑いかけてその肩を叩いた。


テントに向かって歩き始めた圭志の後ろ姿を見ながら宗太は京介にきつい口調で言う。

「もし、黒月君に何かあったら責任は貴方がとるんですよ」

「んなことわかってる。アイツなら大丈夫だ」

はぁ、と諦めたようにため息を吐いて宗太は拡声器を握り締めると台に上がりスイッチをオンにした。

「それではこれからサバイバルゲームで手に入れたお宝と今夜行われるパーティーの説明をしますのでこちらへ集まって下さい」

端に避けていた生徒達が台の前に集まる。

「まず、ゲームで手に入れた宝にはそれぞれ私達生徒会と編入生に関する紙、その他食堂券など様々な物が入っていたと思いますが誰が何を手に入れたのかはこちらで確認したのちパーティーで発表させて頂きます」

ちらりとテントでカプセルを回収している皐月に視線をやる。

「パーティーについては今夜18時、正装をして、第一ホールに集合して下さい。その際、交流会の決まりでパートナーのどちらか一方は必ず女性役でお願いします。以上、解散」

宗太はスイッチを切ると台から下りて下で待つ京介に視線を投げる。

「後はパーティーが無事すめばいいんですけどね」

「何で俺を見て言うんだ」

「貴方が一番心配だからです。二番はもちろん静ですけど…」


生徒がホテルに帰った後、テントに京介と宗太も集まる。

「あっ、会長!!カプセルのチェック終わりました。でも、一つだけ無いんですけどどうしますか?」

皐月は机に並べられた色とりどりのカプセルと詳細を記した紙を見比べて聞いた。

「何がねぇのか分かるか?」

「えっと…、金色のカプセルです」

他の生徒達と一緒に戻らなかった圭志があ、と声を上げる。

「あぁ、それなら無くても問題無い」

圭志が言う前に京介が答える。

金色のカプセル…中身は理事長と2S担任のツーショット写真だった。

だが、それは京介の手によって処分されたはず。

それを知らない皐月はそうですか、と京介の言葉に納得した。

その場で一部始終を見ていた静もその事については口を開くことはなかった。

「では、ホテルに戻ってから確認しましょう」

テントの片付けは後日業者がするのでそのままにして、圭志達はホテルに戻った。


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