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「明うるさいよ〜」

「こんにちは、新見先輩」

そこへ明の怒鳴り声に文句を言いながら透と夏樹が現れた。

「京介また問題起こしたんですか?」

「うわぁ、皆ぼろぼろになってますよ」

次いで宗太と皐月が透達とは反対方向からやって来た。

「またも何も俺に歯向かってきた奴らが悪ぃ」

「だからって即暴力で解決するなと私は言ってるんです」

縛られている生徒達の名前と学年を紙に記している皐月の隣に立ち、宗太は京介に咎めるように言った。

夏樹と透はそれを背後で聞きながら気絶している生徒達の手当てをし始める。

「でも、いつにもまして酷い怪我だね」

男達の服をぺろりと捲って痣になっている上に湿布を貼りながら透が言う。

「そいつは俺じゃねぇ。圭志だ」

「圭ちゃんが?」

京介の言葉に透が圭志を振り返る。

「久々に暴れたら手加減出来なかったんだ。別に平気だろ?そいつ等頑丈そうだし」

圭志は京介の足を踏んでからこほんと咳払いをし、肩を竦めて仕方なかったんだと言う。

「黒月君、貴方もですか…」

宗太は呆れた顔で圭志を見やる。

「だいたい明と静がいながらどうして二人を止めないんですか」

そして矛先は二人と一緒にいた静と明に向かった。

「止める暇がなかったんだよ…」

明がすまなそうに言えば静がそうそう、と頷く。


宗太はまったく、と肩を落とし京介に声を掛ける。

「手当てが終わりしだいホテルに連れていきます」

「あぁ。その後、学園に戻しとけ」

会話を続ける二人の横で圭志は明に聞く。

「なぁ、透と夏樹って風紀なのか?」

その疑問に明は答えていいものか静を見る。

静は教えても平気だろ、と言って作業をしている宗太に声を掛けた。

「宗太、そいつら運ぶんならこれ外してもいいだろ」

繋がれた右手を上げて言うと、そうですね、ゲームももう終わりですし、と返ってきた。

「だってよ、京介」

それを聞いてポケットにしまってあった手錠の鍵を取りだし、それぞれ手錠を外す。

宗太と静は手錠をポケットにしまうと、気絶している男達の襟首を掴み引きずる様にして歩き始めた。

「明もそこの二人連れてこい」

静にそう言われ明は残された二人に、心の中で謝りつつ同じようにして引きずる。

「話は歩きながらできるだろ。行くぞ」

京介は手伝いもせずその三人の後を歩く。

圭志は自由になった左手をポケットに突っ込み、袋を肩に掛けて明に話を聞くため明の横に並ぶ。

「で?」

「ん?あぁ、透も高原も風紀委員だよ。他にもいるんだけどこの場所に一番近くにいたのが二人だったから」

「じゃ、あいつらも生徒会に指名されたのか?」

「そう」

一番後ろを着いてくる透と夏樹は楽しそうに二人でおしゃべりをしていた。









ホテルに着いた頃には引きずられた男達の服はますます汚くなっていた。

「こんな汚い人物をホテルに入れるわけには行きませんから、このまま船に乗せて帰しましょうか」

「そうだな、荷物は後で送れば良いし」

なにげに冷たい事をさらりと言った宗太に静が同意する。

「大丈夫なんですか、そんなことをして?」

宗太の厳しい態度に皐月は怯むでもなく心配顔で聞いた。

「大丈夫だろ。俺がこいつらに文句なんて言わせねぇし。むしろ今後の処置しだいで謝ってくるかもな」

くくっ、と愉快そうに口端を吊り上げて京介は言う。

「そういう事だから皐月ちゃんが心配することは何もない」

こちらは爽やか笑顔で皐月の頭を撫でる。

しかしすぐさまその手は宗太によって払われた。

「静」

「はいはい」

払われた手をひらひら振って静は呆れたように肩を竦めた。

「後は私と風紀で何とかしますからあなた方はゲームの進行と終了を予定通り行って下さい」

「わかってる」

京介は頷くと宗太と風紀の面々を残して、ゲーム会場に戻った。


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