07


今にも掴みかからんばかりの勢いで圭志を睨みつける河合の腕を一夜は掴んで言う。

「河合先輩、落ち着けって。あれで撃たれたら失格になっちゃいますよ?」

一夜は京介が手にしている銃にちらりと視線を向けた。

「くっ…」

河合は悔しそうにうめくと使い物ならなくなった銃に視線を落としておとなしくなった。

「河合、お前達が集めたカプセルを渡せ」

京介は容赦なく河合に銃口を向ける。

「まぁまぁ、会長様。いきなりそれは横暴じゃないんスか?」

そう反論してきた一夜に圭志が返す。

「お前らだって同じ事してただろ」

「ありゃ、見てたのか」

一夜は仕方ないなぁと圭志に自分達の袋を渡した。

袋の中には緑のカプセルが二つ。白と青が一つ。紫が五つ入っていた。

「黒いカプセルはどうした?」

圭志が一夜に鋭い視線を向けて言う。

「黒?そんなの知りませんよ。ね、河合先輩」

それに一夜はおどけて河合に同意を求めた。

しかし、河合はその言葉に顔を上げると圭志を見て笑った。

「なぁに、黒いカプセルを探してるの?」

「持ってるんだろ。俺達に渡せ」

一夜の言葉をまったく信じていない圭志は河合にも鋭い視線を向けて言う。

その視線の鋭さに多少うろたえた河合だが次の瞬間拳を握り締めて自分を奮い起たせると口を開いた。


「渡してもいいけど条件がある」

河合はポケットから黒いカプセルを一つ取り出すと圭志に条件をつきつける。

「何だ?」

「今後一切、明様に近付かないで」

「それは無理だろ。あいつは俺の友達でクラスメイトだ」

河合の無理な条件に圭志はあっさり否定する。

「なら、これは渡さない。ゲームが終了した時、後悔するといい」

河合が勝ち誇ったように笑むと、今まで黙っていた京介が銃を降ろし、肩を揺らして笑い始める。

「くくくっ。河合、お前は一つ勘違いをしてる。明がこいつに誘惑されてるって思ってんだろ?」

「思ってるんじゃなくて実際にそうでしょ!?明様に無理矢理キスしたあげく側にいるなんて!!」

河合からは圭志の行動がそう見えているらしい。

圭志を見る河合の目つきが再び険をおびてくる。

「お前が慕う明様はそんなすぐ誘惑されるような奴か?違うだろ」

京介が河合に何を言いたいのか圭志は黙って聞く。

一夜も口を挟むことなく楽しげに二人の会話を聞いている。

「明様は…」

視線を下に落として河合は口ごもってしまった。

「それに明と圭志はお前が心配するような関係じゃない。なんたってコイツは俺のだからな」

京介は右手首の鎖を自分の方に引いて圭志を抱き込む。

唐突な京介のその言動に、説得してくれるのかと傍らで関心し始めていた圭志は怒りを覚えた。


だが、圭志は文句を言おうと口を開いたが京介に頭を抑えられて何も言えなかった。

「京介様の…?」

河合は京介の言葉に信じられないと目を見開き、京介に黙って抱き締められている圭志を見る。

これには一夜も驚いたのか河合と同様に目を見開いている。

「そうだ。こいつは俺のだ。証拠も見してやろうか?」

京介は小声で圭志に騒ぐなよ、と告げて圭志の後ろ髪を掻きあげる。

「「!!!」」

そこにはゲームを始める前、部屋で京介が付けたシルシがあった。

「きょう…!!」

圭志がその存在を思い出して否定しようとしたが、圭志が騒ぎ出す前に京介はそこから手を離し再び圭志の頭を肩に押し付けて黙らせた。

「本当に…?」

信じきれないのか河合は呆然と聞き返す。

「俺の言うことが信じられねぇのか?」

自信満々に言い切る京介に圭志は腕の中で抵抗し始める。

それを目聡く見つけた一夜が驚きから立ち直り、ふぅんそうゆうことか、と心の中で一人呟き真面目な表情を作って言う。

「河合先輩。信じられないんだったら、ここは一つ目の前で証明して貰ったらどう?」

圭志は一夜の言葉に内心焦った。

まさか、さっきの交換条件をここでやらせたりしねぇよな?と圭志は目だけで京介に尋ねる。

京介はそれに圭志だけに分かるよう口端をにやりと吊り上げ、二人に頷いてみせた。

「いいぜ」


京介は銃を右手に持ち変え、左手を圭志の顎にかける。

そのまま顔を吐息がかかるぐらい近付け、二人には聞こえない声量で圭志に囁く。

「圭志、約束は守れよ」

「……」

京介は押し黙る圭志の唇に触れるだけのキスを落とす。

「ほら、お前からは?」

「…すりゃいんだろ」

ぼそりと、圭志はなかばヤケになって京介の首に右腕を回し京介の唇に自分の唇を合わせた。

「んっ…」

京介は薄く開いた唇から圭志の口内に舌を差し入れ、逃げようとした圭志の舌を絡めとる。

「んっ…ふっ…」

歯列をなぞり、ゆっくり味わうように圭志の舌を嬲る。

「…んぁ…はっ…ぁ…」

そして、時折自身の口内に引き込んでは甘噛みしたりして圭志が抵抗できない程の快楽を与えていく。

(…っ、巧いとは分かってたけど…ヤバイ…もってかれそ)

「…ぁ…んっ…はっ」

事実、幾度か抵抗してきた圭志が京介に反撃もできず、逆に京介のキスに快楽を引きずり出されて、首に回していた右腕は力なくだらりと落ちそうになっていた。

「ふっ…はぁ…んんっ…」

次第に息が上がり、頬を紅潮させた圭志の口端から飲み込みきれなかった唾液が顎を伝い落ちる。

あまりに生々しい二人の行為に河合は顔を真っ赤にさせ、声を上擦らせて止めに入った。

「わっ、わかった!!分かったからもう止めてっ!!!」

「そうっスね。俺も楽しめたしもういっか」

一夜は河合とは違いまじまじと二人の行為を眺めていた。


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