05


一番最後に森の中に入った圭志と京介は少し進んだ先の木陰に隠れ、作戦を立てることにした。

「まず、俺に関するモノがどこにあるのか教えろ」

「知らねぇ。だいたい隠すモノは生徒会で決めたが、隠したのは俺達じゃねぇ」

「お前が自分のは自分で探せって言ったんだろ!?」

「そうだが本当に自分のを探す気か?んなもんほっときゃいいだろ。たかが写真やデート券一枚」

「それを見付けたのが可愛い子ならな。俺にだって相手を選ぶ権利はある」

いっこうに譲りそうにない圭志に京介はため息一つついて承諾する。

「ったく、わかった。お前のモノを探しながら進む。それでいいな?」

圭志が頷いたのを確認して京介は袋からペイント銃を取り出すと、袋を圭志に預ける。

「持ってろ」

木陰から足を踏み出して進み始めた京介の後について圭志も歩き始める。

「お前は何か欲しい宝ないのか?」

こいつなら無いとか言いそうだけど、と思いながらも圭志は一応尋ねてみる。

「ある」

しかし、返ってきたのは意外な返事だった。

「何が欲しいんだよ?さっき聞いた宝の内容でお前が欲しそうなもの無かっただろ?」

前方に人影を見付けて圭志は小声で問う。


京介はそれに答えずペイント銃を人影に向けて構えると躊躇いもせず引金を引く。

ベシャとヒットする音がして圭志は京介の肩越しから前方を見た。

「うまいなお前」

「まぁな。それよりあいつら手に青いカプセル持ってるだろ?取りに行くぞ」

周囲に人がいないことを確かめて、二人はたった今京介の手によってゲームの資格を失った二人組に近付く。

「おいお前ら。その手にあるカプセル寄越せ」

京介が服を赤く染めている背の高い優男に左手を差し出して言う。

「かっ、神城!?これお前の仕業かよ!!」

男は赤く染まった自分の服を掴んで見せる。

優男と一緒にいた背の低い少年はいきなり現れた京介と圭志に驚いて優男の後ろに隠れてしまった。

「そんなことより早くカプセル渡せ」

悪びれた風もなく京介は急かす。

「あぁ、ほら」

優男は諦めたのかおとなしくなると素直にカプセルを京介に手渡した。

それを京介は圭志に手渡す。

圭志は青いカプセルを開けながら優男に聞く。

「中身は見たか?」

「いや、拾ってすぐ神城にやられた」

「どうだ、圭志?」

圭志は中から紙を取り出して振る。

「外れ。佐久間と一日デート券だってよ」

「いらねぇなそれ。その辺に投げとけ」

「了解」

京介にそう言われ圭志は適当な方向に投げる。

「んじゃ、次行こうぜ」

圭志は左手首の手錠を引っ張って先に進み始める。









自分達で探すというより、人が取ったモノを奪っていく方が楽だと考えた京介と圭志は手辺りしだい、見付けた人物にペイント弾を撃ちこんでいく。

そのさい弾数が無くならないよう倒した相手から弾も回収していく。

「今度は緑と黄色のカプセルか」

圭志をきらきらした目で見てくる可愛いらしい少年二人組に、圭志は頬にキスしてやりカプセルを受けとる。

「で、肝心の中身は何だ?」

京介は辺りを警戒しつつ圭志に聞く。

「ん〜、緑は明の写真。しかも寝姿。こんなのいつ撮ったんだ?」

「あぁ、それは静が持ってきた写真だな。黄色い方は?」

「皐月と一緒に食事券。これは貰っておくかな…」

「好きにしろ」

緑のカプセルは二人組に返して京介と圭志は先に進む。

と、横から何かが飛んできた。

「伏せろ!!」

京介はとっさに繋がれている右手を引く。

引っ張られた圭志もすぐさまその声にその場に屈む。

その一瞬後、背後でベシャという着弾音がした。

二人はペイント弾が飛んで来た方向に視線を向ける。

「ちっ、外したか」

そんな声がしてから二人の前に姿を現したのは宗太だった。

隣にはすまなそうな顔をした皐月が一緒にいる。

「黒月君。貴方が持っている黄色いカプセル、こちらに渡して貰いましょうか」

銃を圭志につきつけたまま宗太は皐月の手を引いて近付いてくる。

「黒月先輩、会長。ごめんなさい。大丈夫ですか?」

二人の眼前まで来ると皐月は宗太の行いに対して二人に謝る。

「渡良瀬と皐月か…」

「宗太、渡してやるから圭志から銃口を外せ」

引金に指をかけたまま近付いてくる宗太に対し、用心のため京介も照準を宗太に合わせて言う。

圭志は特に欲しかったモノでは無かったので黄色いカプセルを袋から取り出すと皐月に向かって投げる。

皐月がちゃんとキャッチしたのを見届けると宗太はやっと圭志から銃口を外した。

それに合わせて京介も銃を降ろす。

「宗太。いくら皐月がかかってるからってやりすぎじゃねぇか?」

「全然。皐月を変な奴らに渡したくはありませんから」

カプセルを袋にしまっている皐月の肩を抱き寄せて宗太は言う。

「お前も圭志と同じような事してんのか」

その言葉を聞いて皐月が袋から別の色をしたカプセルを取り出す。

「あ、そうだ黒月先輩!!これあげます」

皐月が袋から出したのは黒いカプセルだった。

圭志はカプセルを受けとると開けて中を見る。

するとそこには〈黒月 圭志と一日デート券〉なるものが入っていた。


横に立つ京介も圭志の手元を覗き込む。

「まずは一つか…」

京介の言葉に圭志はそうだな、と頷いて紙をカプセルに戻すと袋にしまった。

「黒月君も自分のモノを集めているんですか?」

二人のやりとりを見ていた宗太が聞いてくる。

「まぁな。ところでどうして黄色いカプセルに皐月のモノが入ってるって分かった?」

「あぁ、簡単ですよ。その人ごとに色分けして紙を入れましたから」

あっさりそう告げた宗太に圭志は京介の方を睨んだ。

「なんで最初にそれを言わねぇんだ」

だが、そのことは京介も初耳だったのか片眉をあげると宗太を問いただす。

「何でそんなことになってる?俺達は適当にカプセルに入れたはずだ」

「えぇ、そうですね。ですがその後、私の私情で入れ換えさせて頂きました」

「僕もゲームが始まるまで知りませんでした…」

つまり、宗太が初めから皐月の紙を集める為に仕組んだ事らしい。

京介はそこまでやる宗太に呆れたような眼差しを向ける。

「済んだことはもういい。それで、誰のがどの色に入ってる?」

「白が京介、黒が黒月君。青が静で緑が明。私のが赤で皐月は黄色です。その他のモノは紫に、レアなモノはそのまま金色のカプセルに」

「そうか、わかった」

それだけ聞くと京介と圭志は黒いカプセルを求めて再び森の中を歩き出した。


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