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それぞれ動きやすい服装に着替えた生徒達がロビーに集合していた。

到着した時と同様に皐月が拡声機片手に話し始める。

「え〜、サバイバル宝探しを始める前に、生徒会長から挨拶、副会長からゲームについての説明があります。皆さん静かに聞いて下さい」

皐月はそう言って京介に拡声機を手渡した。

京介が生徒達の前に姿を現すと、皐月の注意も虚しく生徒達は騒ぎ始める。

「「「きゃ〜〜、会長!!」」」

「おら、お前ら静かにしろ!!」

しかし、それは京介の一言でぴたりと静かになった。

その様子に明の横に立って見ていた圭志が感心したように呟く。

「腐っても生徒会長か…」

「いや、腐ってもないから」

すぐさま突っ込んだ明を無視して圭志は京介の方を見ていた。

「今日から二日間ある交流会、思う存分楽しめ。ただし、問題を起こさない程度にな」

京介は最後に不敵に笑むとさっさと皐月と交代する。

「では、続きまして副会長からゲームについて説明があります」

ゲームの発案、企画者である静が先程確認した袋を片手に前に出る。


静はまず袋の中から地図を取り出すと赤く線で囲われた場所を指差して言う。

「サバイバル宝探しはこの線で囲まれたエリア内を貸し切って行う。時間は夕方5時まで。このエリアから出た者は失格とする。ついでに迷わないようコンパスも入れておいたから」

それから、と言って今度は袋から手錠とペイント弾入りの銃を取り出す。

「ゲーム中はそれぞれパートナーと手錠で手首を繋ぎ共に行動すること。これも勝手に外した場合失格」

手錠と耳にした瞬間、2年生組が明のように嫌な顔をしたが静はあえてスルーして続ける。

「こっちの銃は赤いペイント弾が入っていて邪魔な相手を倒す時に使うこと。これで撃たれた人もパートナーと共に失格になるから気を付けて」

最後に、中に入っている軽食は休息時等に食べるように。と静は締め括った。

それを受けて皐月が生徒達に質問がないか聞く。

「はい」

前列に並んでいた小柄な生徒が手を挙げる。

どうぞ、と皐月が促せばその生徒は静を見て口を開く。

「その、隠されているお宝って具体的になんですか?」

皆がその質問にうんうんと頷いて、静が口を開くのを待つ。


「見てからのお楽しみ、と言いたい所だけどゲームを盛り上げるために教えてあげよう」

静は眼鏡のブリッジを中指で押し上げて言う。

そんな静に京介が時間がねぇんだからさっさと言えと急かす。

「はいはい。お宝の中身は生徒会メンバーの写真だったり、指名権、一日デート券、食堂券など様々な物があって丸いカプセルに入ってる。その中にレアな物が一つだけあるから是非とも頑張って探して欲しい」

お宝の中身が生徒会メンバーに関わっている物だと知り生徒達はたちまち騒ぎ出す。

そんな中、圭志は生徒会メンバーを見回してため息交じりに言う。

「こいつらが人気なのは分かるけど俺はいらねぇな」

「俺も同感…」

そこへ説明を終えた静が戻ってくる。

「そんなこと言ってもいいのかなお二人さん?」

「どういう意味だ?」

圭志がいぶかしげに静に視線をやる。

静の後ろでは生徒達が宗太から袋を受け取って次々ロビーから出て行く。

ゲームエリアに移動しているのだろう。

「お宝の中には明の写真も黒月の写真もあるんだよ?もちろんデート券もある」

「何でだよ!?俺ら生徒会じゃないじゃん」

静の言葉に明が反論する。

「何言ってんの。明は風紀だからあって当然だろ。黒月は今、色々な意味で有名人だからな。使わない手はないだろ?」

静は楽しければそれでいい、という表情でそう言うと明の腕を掴んで宗太の方へ向かう。


それに入れ替わるようにして京介が圭志の元へやって来た。

「俺達も行くぞ」

京介は袋片手に圭志にそう声をかける。

「おい、宝の内容聞いたぞ。勝手に俺を使ってんじゃねぇ」

圭志は京介の隣を並んで歩きながら文句を言う。

「俺に言うな。それを決めたのは静だ」

「でも最終的に決定したのはお前だろ」

「そうだが、そんなに嫌なら自分のモノは取られる前に取ればいいだけの話だろ?」

先にゲームエリアに到着した生徒達は皐月の指示で袋から手錠を取り出し、互いのパートナーと手首を繋いでいた。

圭志達のすぐ前にいた明が静に左手を差し出して低く唸るように言う。

「変なことすんなよ」

「変なことって何だ?」

それに静は楽しげに口元を緩めて返しただけだった。

「圭志、お前も左手だせ」

京介は自分の右手首に手錠をかけながらそう促す。

「いいのかよ、お前右利きじゃないのか?」

左手を京介の方に差し出して圭志は聞く。

「俺は両利きだ。左も右と同じぐらいに使える」

圭志があいつは?と視線で前方にいる静を見やれば京介は、あぁと同じ方向に視線を向けて言う。

「あいつは元から左利きだ」

全員が準備し終えたのを確認すると皐月は宗太と手首を繋いだまま京介の方を見て頷く。

それを受けて京介が宣言する。

「では、これからサバイバル宝探しゲームを開始する!!!」

ゲーム開始を告げる京介の声に生徒達はそれぞれパートナーと共にゲームエリアである森の中に散って行った。



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