13


交流会…毎年5月の上旬に1泊2日の日程で行われる1、2年生だけの行事。

ようは1年生の歓迎会でこれを機に先輩方と親睦を深めようということらしい。

そのためなのかルールがあり、2年生は交流会が始まる前までに自分で自分のパートナーを決めなければならない。

もちろん組む相手は1年生に限り、同学年は認められない。

そして、それが交流会中共に行動する相手になり、部屋割りもそのまま割り当てられる。

しかし、生徒会は例外で一般生徒間で争いが起きないよう始めからパートナーは決められているのだ。

生徒会長は風紀委員長と、副会長は副委員長、会計は書記と。

このように本来なら会長は委員長と組むのだが、委員長不在の今会長だけは自由に相手を指名できるのだ。

明の説明を聞き終えた圭志は苦い顔をしてソファに身を預ける。

「と、言うことは俺はずっとアイツと一緒にいなきゃいけねぇってことか…」

「そうなる。俺も静と一緒だし。嫌だなぁ…。しかも、今年の交流会の内容はサバイバル宝探しだとか」

ため息をついて明はうなだれた。


そんな明の様子を圭志は気だるげに髪をかきあげ、眺めながら言う。

「何だそれ?去年は違ったのか?」

「俺もよく知らないけど、どうせろくなもんじゃない。去年は巨大迷路で鬼ごっこだった。パートナーと手首を紐で繋いで逃げ回ったよ」

「…よく分かんねぇ行事だな。それのどこが交流なんだか」

「あと、最後にパーティーがあって終了なんだけど…あの、その…怒らないで聞いてくれよ?」

急に歯切れの悪くなった明に、まだ何かあるのかと圭志は片眉を微かにはねあげて先を促す。

「パーティーに出席する時、片方は女役になって必ず女装させられるんだ。黒月の場合、相手が生徒会長の神城だから女役は必然的に黒月になるんじゃないかなぁと…」

「………」

明の言葉に圭志は無言で返すとソファから身を起こして立ち上がる。

「く、黒月?」

その姿は傍目から見ても怒っているのが分かるほどの怒気をともなっていた。

「明、俺をアイツのいる生徒会室まで案内しろ」

ここには居ない人物を見据える圭志に、明は心の中で一人冷や汗をかきながら頷いた。










-バァン!!-

勢いよく開かれた生徒会室の扉に、ソファーでお茶をしていた2人は何事かと扉の方を振り返る。

「彼は…」

「あっ、黒月先輩だ!」

「神城 京介!!」

乱暴に扉を開けて入ってきた圭志にフルネームで呼ばれた京介は、一番奥の机に座り、ペンを片手に驚いたそぶりも見せず、視線だけを向けた。

「来たか…」

生徒会室に突入した圭志は周りに目もくれず、一直線に京介の元に進むと座っていた京介の胸ぐらを掴む。

「お前、分かってて俺を指名してきたな!?」

「何のことだ?」

「今さらシラきってんじゃねぇ!?パーティーの件だ!何で俺が女装しなきゃいけねぇんだ!!冗談じゃない!!」

「何だ、そっちのことか」

「そっちって他にも何かあんのか?あぁ?」

圭志はガラ悪く京介を睨みつける。

一方、胸ぐらを掴まれているというのに京介は顔色一つ変えずに飄飄として言う。

「俺と2日間一緒に過ごすことはいいんだな」

「…それも嫌に決まってんだろ!でも、それよりももっと俺は女装する方が嫌なんだ!!俺は絶対にしねぇからな!!」

「なら、俺にしろと?」

「…………そうだ」

その言葉に生徒会室内には妙な沈黙が落ちる。

「京介の女装姿なんて絶対に見たくもないですね」

「でも会長なら意外とイケるんじゃないですか?」

「黒月、いくらなんでもそれは…」

圭志の後ろから室内にいた人物達の感想がもらされる。

そんな中、圭志もその姿を想像したのか顔をしかめると京介の胸ぐらから手を放し、離れる。

「ほらな、俺の女装姿なんて見たくねぇだろ?だから圭志がやれ」

「だからって、俺がやったってたいして変わんねぇだろ!?」

「まぁまぁ、京介相手に怒鳴るだけ無駄ですよ。とりあえずこっちに来て座りませんか?」

圭志はソファーに座っている金髪茶目の男にそう声をかけられて、一度ため息をついて自分を落ち着かせると、男の言う通りソファーに座った。

一緒についてきた明もその様子に安堵したように息をもらすと圭志の横に座る。

2人が座ったのを見ると男は室内に設置されている簡易キッチンに2人分の飲み物を用意しに立ち上がる。

その途中、京介が手を止めて圭志達の方を見ているのに気付き、言う。

「京介はそのまま仕事を続けて下さいね」

「チッ…」



[ 14 ]

[*prev] [next#]
[top]



- ナノ -