学園新聞号外

二周年記念小説
未来設定 神城 京介×黒月 圭志 R18
おまけで、佐久間 静×新見 明



ざわざわと新聞部が張り出したスクープ写真に人だかりが出来る。
あちこちではそのスクープ写真を載せた紙が、学園新聞の号外として新聞部員から生徒へと配られていた。

学園の生徒、その中には当然生徒会長も含まれるわけで…

「かっ、会長!!?」

それを手にした京介と手渡した新聞部員は二人して動きを止めた。

青ざめる新聞部員に対し、手元の紙面に視線を落とした京介はスッと瞳を細め、ほぅと低い声音で言葉を吐き出した。

「これは…どういうことだ圭志」

自分に向けられたわけでもないのに新聞部員は京介の低い恫喝に恐怖で体を震えさせる。
そんな新聞部員の姿など目に入っていないのか、京介は手にした号外を握り潰し、今来た道を足早に戻って行った。

本日の学園新聞、号外。
その一面にドンッと圭志と顔ははっきりと分からないが確かに京介以外の男とのキスシーンが載っていた。
また時間がなかったのか見出しは何とも陳腐なもので風紀委員長浮気発覚か!?と太字でデカデカとかかれていた。

そして、スクープされた張本人はというと…

「…………」

朝に弱く、今だ布団の中。
騒ぎなど知る由もなかった。



東寮、七階。風紀委員長室は生徒会長室の向かいにある。
どの部屋の鍵も開けることの出来る京介は、風紀委員長室の部屋の鍵を開けると中へと侵入した。
しかし、本来そんな鍵など使わなくとも京介はこの部屋のスペアを部屋の主から貰っている。それを忘れるほど今は冷静じゃなかった。

中に入ればカーテンはまだ閉めきられており、シンと静まり返っている。

「まだ寝てんのか」

京介は険しい顔のまま眉を寄せ、寝室へと足を向けた。
そして辿り着いた寝室の扉を音が立つのも気にせずバンと開け放つ。

「ん……んぅ…」

音に反応したのか、布団にくるまった圭志は小さく声を漏らすと寝返りを打った。

「おい、起きろ」

それさえも今の京介には苛立つ材料にしかならない。
京介はズカズカと圭志の寝る布団に近付くと、強引に布団を捲り上げた。

「起きろ圭志」

「…ん…ぅ…るせ…」

不機嫌な声が返り、圭志はゆっくりと目を開ける。

「お前どういうつもりだ」

「…ん。きょーすけ?ンだよ?」

圭志は眠そうに欠伸をもらし上体を起こすと、いやに不機嫌だなと京介を見た。
そんな圭志に京介は握り潰してぐしゃぐしゃになった号外を伸ばして圭志に突き付ける。

「これに心当たりは」

寝起きでぼんやりしていた圭志の目が、写真を目にして見開かれる。

「っ!?」

「あるんだな」

次の瞬間、京介の鋭い声が聞こえて圭志の視界が回った。
起きたばかりのベッドに押し戻され、圭志は慌てる。

「ちょっと待てよ京介!アレは――事故だ」

「事故?事故ならなんでお前はソイツの首に腕を絡めてる?……嘘を吐くなよ圭志」

しゅるりと引き抜かれたネクタイで両腕を頭の上で縛られる。
寝間着にしているスウェットの中には京介の手が侵入してきた。

「―っ、く…止めっ…京介!」

「嘘吐きにはお仕置きが必要だろ?」

「…っあ!…ばっ、マジで止めっ…っ…」

下着の中にまで侵入してきた手が寝起きで無防備なモノへと触れる。

「くっ…ぅ…ぁっ…」

緩やかな刺激を受けて、圭志の口からは声とも吐息ともとれぬ音が漏れた。

「俺には言えねぇってか?」

「だ…からっ、…っアレは事故だって…はっ…」

口を割ろうとしない圭志に、京介は指を絡めた圭志のモノの先端に爪を立てた。

「いっ…―っは、…お前っ…ふざけんなよっ―」

涙を滲ませて尚、睨み付けてくる圭志に、京介は一度圭志の上から退くと勝手にクローゼットを開ける。そして、赤いストライプのネクタイを引っ張り出すと圭志の上へ戻る。

「まさかっ…」

何かを悟って口元を引き吊らせた圭志に京介は手を動かしながら言った。

「お仕置きだって言っただろ」

ズボンごと下着を下げられ、抵抗する間もなく圭志のモノにネクタイが巻き付けられる。最後にぎゅっとキツくネクタイを引き、京介は手を離した。

「くっ―…てめっ…京介ぇ…」

「その虚勢、いつまで持つか見ものだな」

圭志の上に覆い被さった京介は臀部へと指を進めた。

「どうした、もう限界か?」

何がどうしてこうなったのか、圭志は自然と溢れた涙をこぼす。息苦しい、熱い吐息を唇から吐き出し体を震わせる。

「…っ…はぁ…ぁ…誰がっ…ぁあ――」

ぐちゅりと戒めを解かれないまま熱を溢す先端に強い刺激を与えられる。
圭志のモノは痛いぐらい張り詰め、出口を求めて高まった熱が逆流したかの様に身体中を暴れまわっていた。

「今、本当の事を言えば許してやってもいい」

「んぁ…っ、…ぁ…あ…」

後ろをどろどろになるまで解され、中へ入れられた京介の指が良い所を掠める。

「…言え、圭志」

一方的に、それも恋人にするこの行為は自分の本意ではない。だが、こうでもしなければ圭志は口を割らないだろう。
疚しいことがないのなら何故俺に嘘を吐く?

「ぅ…から、…」

「あ?」

「言うから…っ…やく…解けっ…ば…か…野郎っ…!」

息も絶え絶えに京介を睨み付け、更には文句を圭志は投げつけた。

「それが人にものを頼む態度か?」

グリグリと圭志の中の良い所を指先で押してやる。

「ぁあっ―く…っ、はっ…ンの…。教えて…やるから…んっ…イかせろ…」

目元を染めた圭志のこれが精一杯の虚勢だった。

「しょうがねぇ。…いかせてやる。だが、次は嘘を吐くなよ」

京介は圭志の中に入れていた指を引き抜くと堅く結んだ戒めをしゅるりと解いた。
同時に圭志のモノの先端から塞き止められていた熱が勢いよく弾けた。

「っ…はぁー、はー…。どうして…くれんだ、てめぇ」

身体を弛緩させベッドに沈んだ圭志は、汚れてしまった布団とネクタイを目だけで指し、ティッシュで手を拭いている京介を睨み付ける。

「ンなことより写真の説明が先だ」

しかし、京介は圭志の睨みなど意に介さず、圭志の手を縛っていた己のネクタイに指をかけ、話を続ける。
ここまで来て流石の圭志も言わないわけにはいかないと腹をくくったのかため息混じりに話し出した。

「本当に俺からしたらアレは事故だ。それに、お前に言ったら怒るんじゃねぇかと思って俺は…」

「黙ってるつもりだったのか」

「いや、まぁ…」

言葉を濁す圭志に京介の纏う空気が剣呑なものになる。それを素早く感じ取った圭志は慌てて言葉を繋げた。

「ともかく本当の事を言うとだな、…間違えたんだよ。お前と」

「間違えた?」

「…そう。俺は昨日、屋上で昼寝してたんだ。その俺の隣に誰かがやって来た。屋上ってのは特殊な鍵が必要で、俺じゃなけりゃお前しかいないだろ。そう思って、まぁ夢現だった俺も悪ぃけど…だから俺はソイツとお前を間違えて…だな」

そこで言葉を切ると圭志はばつが悪そうに京介から視線を反らした。
二人の間に何とも言えない沈黙が落ち、圭志は居心地悪そうにしながらのろのろと身体を動かして、脱がされた下着とズボンを履く。

「…圭志。相手は誰だ?当然見てるだろ」

「聞いてどうする?」

「決まってんだろ。俺のモノに手ぇ出したんだ、それ相応の罰を受けさせる」

手を出したのはどっちかと言えば、相手を京介だと間違えた圭志の方だ。
しかし、圭志はあえて否定せず、京介の怒りの矛先を相手に押し付けることにした。

「屋上に入れんのは俺とお前、…それから理事長の竜哉さんだけだってよ」

「そうか。理事の首もそろそろ挿げ替え時だな」

「………そうかもな」

圭志は他人事の様に聞き流し、シャワーでも浴びてこようとクローゼットから着替えを取り出す。
それを持って寝室から出ようとして、あっと声を上げて圭志は立ち止まった。

「京介」

不機嫌な京介に近付くとその腕を強く引き、圭志は心持ち顔を上向かせて軽く自身の唇を京介の唇に押してた。

「ん…、これでチャラだな」

俗に言う上書き。圭志はこれでスッキリしたと言う様に今度こそ寝室を出て行った。

「…ったく、俺とあんな野郎間違えんじゃねぇよ」

圭志の姿が見えなくなり、京介は悪態を吐きながら自分も寝室を出る。圭志が出て来るまでリビングで待つ事にした。

そして、二人揃って遅刻して登校して来た事で号外で出された記事は真実味を失い、その日の内に消えていった。






おまけ…

「佐久間副会長!」

「是非、我が新聞部に!」

「部長もそう思いますよね!」

閉めきられた部室、静は優雅にソファに座り、人指し指で眼鏡を押し上げた。

「必要としてもらえるのは嬉しいけど、今のところ生徒会を辞めるつもりはないから」

「そこを何とか!掛け持ちでも結構ですからっ!」

「こんな凄いスクープを撮れるのは佐久間副会長だけですよ!」

そう言って、号外でばらまかれた写真を部員はテーブルの上にバシンと叩き付けた。

「俺だけ、か。新聞部が言う言葉じゃないな。それに俺の写真は趣味の範囲内で、今回みたいに新聞に載せるような物でもない」

それはそうだろう。
屋上は本来、俺でも立ち入れない場所。…それを破るのが楽しみではあるが。

「そういう事で失礼させてもらう。…あぁ、忘れてたけど写真を誰が撮ったのか、自分がスクープされる側に回りたくなければ他言無用で」

一瞬にしてシンと静まり返った新聞部の部室を背に静は歩き出した。
そして…。

「あっ、見つけた。静!こっ、この写真撮ったのお前だろ!」

頬を薄く赤く染めながら、明が手にした号外を突き付けてくる。
こういう勘は鋭いんだよなコイツ。
静は突き付けられた号外を受け取り、この写真って?と聞き返す。

「だからっ…」

「どんな写真か説明してくれないと俺には分からないな」

「…っ、もういい。黒月にバラしてやる」

少しからかってみれば明は怒ってくるりと背を向けた。

「待てって。何でこれでお前が怒るんだ。黒月が好きなのか?」

「ちがっ、…友達を心配するのは普通だろ。お前の変な見方で見るなよ」

「ふぅん。なら友達として、時にはソッとしておくのも必要だぜ。どうせ黒月の所には京介が行くだろうしな」

正論を織り混ぜて言った静の言葉には効果があったのか、明はうっ…と動きを止める。

「明。揉め事を増やしてあの二人の仲がどうなっても良いなら止めねぇけど、…黙ってた方が二人の為だと俺は思うね」

立ち止まった明の肩をポンと叩き静は歩みを再開させる。

「…分かった。でも、聞かれたら正直に答えるからな」

「はいはい。それよりももう授業始まってんじゃないのか」

「えっ…やばい。戻らなきゃ」

ばたばたと慌てて静の横を通り過ぎる明に、静はクスリと笑みを溢した。

黒月が友達なら俺は何だって聞いてやれば良かったかな―?


end.


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