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圭志達がさわぎを無視して黙々とご飯を食べ進めていると、いつの間にか辺りは静まり返り、視線が圭志達の座るテーブルに集中していた。

それに初めに気付いた明が皿から顔を上げて、正面に座る圭志の後ろを見る。

と、そこには思わぬ人物が立っていた。

「何だ、神城が来たのか。交流会の準備が忙しくて生徒会室から出てこれなかったんじゃなかったのか?」

明の言葉に神城と呼ばれた人物が答える。

「んなもん宗太に押し付けてきた。それよりもコイツとずいぶん仲良くなったみたいだな?」

圭志は聞き覚えのある声にちらりと視線を上にあげてその人物を確認する。

すると、ちょうど視線を落とした神城とばっちり目が合った。

(こいつ、神城って名前なのか)

圭志は表情も変えずにふいと視線を前に戻す。

「え?黒月、神城と知り合いだったのか?」

「圭ちゃん、会長の知り合いなの?」

驚く2人の顔を見ながら、圭志は背後に立つ神城に向かって棘のある言葉を吐く。

「いや、まったく知らねぇ」

きっぱりと言い切った圭志に、2人は困惑した表情で顔を見合わせる。

「ほぉ、あんなに熱いキスを交した仲なのに?」

圭志を見下ろしながら、神城はにやりと妖しい笑みを浮かべて言った。


それに反応したのは圭志ではなく、周りで状況を見ていた生徒達だった。

「えぇぇぇぇ!!」

「圭ちゃん本当なの!?」

「キャ〜〜〜!!!」

「あいつ会長とどういう関係!?」

「嘘っ!?京介様と?」

様々な会話が飛び交う中、圭志はガタンと音を立てて椅子から立ち上がると、背後にいる神城に向き直る。

そして、先程とは一転してこう口を開く。

「それがどうした?キスの一つや二つしたトコで何が変わるってもんでもないだろ」

自ら認める発言をして周りをさらに驚かせると、少し高い位置にある神城の顔に自分の顔を近付けて、触れるだけのキスをして離れる。

「「「キャ〜〜〜!!!」」」

「圭ちゃん!?」

「〜〜っ」

唐突な圭志の行動に神城も目を見開く。

神城の驚いた表情を見て圭志は仕返だとばかりに、にやりと笑う。

(ざまーみろ。これで少しはすっきりした)

その笑みから圭志の意図を汲み取り、神城は好戦的な光をその瞳に灯す。

「フッ、いい度胸だな…」

神城は圭志の腕を掴んで引き寄せると、腰に手をまわそうとする。
が、その手は圭志の手に掴まれて阻止される。


「手ぇ放せ」

「嫌だね。俺は男を抱くことはあっても、抱かれる趣味は無い」

「そう言ってられるのも今のうちだけだぜ?」

神城は手を掴まれたままそう言って、圭志に鋭い視線を向けると、右足を一歩踏みだして圭志の足の間に滑り込ませる。

そのことでさらに密着した体を押し返そうと圭志が手の力を緩めた瞬間、その隙をついて神城が圭志にかみつくようなキスをする。

「んんっ!?」

(…この野郎!!)

軽いものではなく、しっかりと舌を絡ませてディープキスをしてくる相手に、そうはいくかと圭志は思い切り舌を咬んでやる。

「―っ」

瞬間的に走った痛みに顔を歪めて神城は圭志から離れた。

圭志は神城から視線を反らさずに多少乱れた呼吸の下、言う。

「そう何度もキスされてたまるかっ」

「はっ、なら次からは抵抗できないぐらいの快楽に堕としてやるよ」

「次なんてねぇ」

「それはどうかな?」

互いに視線をぶつけ合う2人には、最早ここが食堂で辺りに人がいることなど眼中になかった。

「神城と張り合うなんてやるな編入生」

「あぁっ、京介先輩かっこいい〜!!」

など、感嘆する生徒達がいる中、一番間近で見ていた透は興奮気味に明の肩を叩く。

「ねぇねぇ、会長と圭ちゃんどういう関係なのかな?」

しかし、肩を叩かれた明は目の前で行われた刺激的な光景についていけず真っ赤になって固まっていた。




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