夏の一コマ(圭志中心小話三本)


黒月、明日海に遊びに行かないか?

・海-圭志+明


熱い日差しが照りつける中、圭志はパラソルの下寝転がっていた。
そこへ、海から上がった明がやってきて声をかける。

「せっかく来たんだから黒月も海に入れよ」

圭志は上半身を起こし、海の方からこちらに向かって手を振る、透と夏樹に軽く手を振り返す。
圭志は明の誘いにパラソルの下から出て、明と一緒に海に向かって暑い砂浜を歩く。

「なんか凄い視線感じるんだけど…」

明は周りから圭志に向けられる多くの視線を感じて萎縮する。

「明」

「え?」

周りに気をとられていた明は次の瞬間、バシャンと海に突き飛ばされていた。

「俺はお前に誘われてここにいるんだぜ?余所見してる暇があるのか?」

にやりと笑った圭志が格好良くて、明は太陽のせいだけでなく頬が熱くなるのを感じた。

「俺と遊ぶんだろ?なぁ、明」

明の熱い暑い夏は始まったばかりである。


end



あ、黒月くん。生徒会室に寄って行きませんか?

・スイカ-圭志+宗太


宗太に生徒会室へと誘われた圭志は応接室のソファに座ると室内を見回す。

「他の連中は?」

「サボりと職員室、皐月は実家の用事で休みです」

そう言って運んできたトレイの上には綺麗に切り分けられたスイカが乗っていた。
圭志が視線でそれは?と、聞けば宗太は圭志の前に一切れ分置きながら答えた。

「先程、学内の備品の補充を頼みに行った時、用務員さんに貰ったんです」

私達だけじゃ食べきれそうにないので…。

「それで俺を呼んだのか。まぁ、いいけどな」

ふっと笑みを溢して、スイカなんて久しぶりに食べるなと言って圭志はスイカを手に取った。

「私もですよ」

向かいに座った宗太も微笑み、スイカに手を伸ばす。

「そういやもうすぐ夏休みだな。渡良瀬、予定は?」

「私は…」

窓の外では蝉が一生懸命鳴いている。
暑い夏の日の午後、冷房の聞いた涼しい部屋で二人は夏の風物を手に楽しいひとときを過ごしていた。


end



圭志、今から出かけんぞ。用意しろ。

・避暑-京介×圭志


寝室の扉を開け、リビングに入った途端、ここ居る筈の無い人物がいた。
そして今、圭志はなぜか窓から見える、真っ白な砂浜と何処までも続く青い海を眺めていた。

「お前はいつまでそこに立ってんだ。こっち来い」

すっと視線を窓から室内に移し圭志は呆れた表情を浮かべた。

「ったく、朝から何かと思えば、出掛けるなら前もって言えよ。で、いつまで此処に居るつもりなんだ?」

海があるにも関わらず人が誰も居ないってことはこの辺り一帯プライベートビーチなのだろう。
連れてこられたこの別荘しかり。
京介は隣に座ってきた圭志の腰に右腕を回すと、もう片方の手を圭志の頬に持っていく。

「もちろん、休みが終わるまでだ」

お前も一緒になと京介が愉しげに笑う。

「それは良いけど、渡良瀬に怒られても俺は知らねぇからな」

圭志も似たような笑みを浮かべ、頬に添えられた京介の手に己の手を重ねた。

「はっ、ンなのどうとでもなる。それより…」

此処に居る間、他の奴の名前を口にすんじゃねぇぞと唇を塞がれる。

「んっ…」

学園から離れ二人きり。
避暑にきたはずの圭志の夏は、照りつける太陽と同じぐらい熱い口付けから始まった。


end


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