三者三様02(小話詰め合せ)

・静×明



「何で俺はここにいるんだ…?」

目の前に置かれたショートケーキと紅茶を明はうろんげな目で見つめた。

「それは俺が廊下でお前を拉致したから」

フォークを添えた静が、明の隣に座りにっこりと笑う。

「………」

明はそんな静を警戒しながら少し距離をとった。

「食べないのか?それとも、俺に食べさせて欲しいのか?」

ひっそりと耳元で囁くように静が笑う。

「―っ、ばば馬鹿じゃねぇの!じ、自分で食べれるし!」

何言ってんだコイツっ!だから嫌なんだ!

がしっとフォークを右手で握り、ショートケーキの上に乗っていた苺に突き刺した。
その勢いのまま苺を取って口の中へ…

「ん、…まぁまぁだな」

「〜っ、何でお前が食べるんだよ!」

口の中へと運ぼうとして、その途中、右手を静に掴まれた。進路を変えられた苺は静の口の中へ姿を消した。

「こうした方が自分で食べるより美味いだろ?」

ニヤリと距離を詰めた静が甘く嘯く。

「知らないし!それにっ、お前今、まぁまぁだって言ったじゃんか!」

掴まれた右手を残して明は逃げようとソファの上を後ずさる。

「明は我が儘だな。しょうがない、苺が欲しかったんなら俺のやるよ。ほら、あーん」

明の腕を掴んでいるのとは逆の手で静は自分のフォークを持ち、その先に苺を刺して明に向ける。

「い、いらな…っ!んぐっ」

拒否しようと開いた口に静は問答無用で苺を押し入れた。

「どうだ?美味しいか?」

しっかり噛んで飲み込んだのを確認してから静が聞く。
明は一連の行為が恥ずかしくて、真っ赤に染まった顔に涙目で静を睨み付けた。

「ぅ〜、美味しくなんかねぇ…」

どういうわけか甘すぎて味なんてまったく分からなかった。

すぐにふぃと顔を横に反らした明に静は口元を緩める。

「そうか、ならもう一口だ。ほら口開けろ」

思ってることが全部顔に出るのがお前の可愛い所だ。
本当に嫌なら始めから俺の部屋に何か来ないだろ、明?

その日、明が静の部屋から出てくることはなかった。

-Merry Christmas!!-



end.


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