Christmas(未来設定、京介×圭志)


2008クリスマス企画



ザワザワとスーツやドレスに身を包んだ紳士淑女が大勢いるパーティー会場で、圭志はノンアルコールの飲み物が入ったグラスを片手に、チラリと視界の端に止まった人物を見て軽く目を見開いた。

「京介?」

ダークグレイのスーツに身を包み、普段は下ろしている紫のメッシュが入った前髪を上げた京介がそこにはいた。
誰かと話しているらしく圭志には気付いていない。

「それにしても…」

学園にいる時の雰囲気と違い、どこか大人っぽい感じの京介を圭志はついジッと見つめてしまった。
恋人の欲目を引いて見ても京介って、男の俺から見てもやっぱり格好良いな。
そんなことを思い、見つめすぎたのか京介がふとこちらを向いた。
そして、圭志と目が合うなり京介はフッと口元を緩め、話をしていた相手に何やら断りを入れてこちらの方へ歩いて来た。

「お前も来てたのか」

「まぁな。海外に行ってる親の代わりに。京介は?」

「俺も似たようなもんだ」

側を通ったボーイから新しいグラスを受け取り、京介と圭志は壁際まで移動した。

「さっき話してた人はもういいのか?」

グラスを傾けている京介の隣で圭志は会場内を眺めながら聞く。

「あぁ、挨拶は済んだからな。お前の方こそ終わったのか?」

「ん、まぁ。ちょうど終わって余計な奴等に捕まる前に帰ろうかどうしようか考えてたとこだ」

その時にお前を見つけた。

「ふぅん。お前寮に帰るのか?」

今日のパーティー会場は主催者がホテルを貸し切って行っている。
その為、各賓客にはホテルの一室が宛がわれ泊まっていく事も出来るようになっていた。

「そのつもりだけどお前はどうするんだ?」

チラッと隣を窺えば、壁から背を離した京介に手に持っていたグラスを浚われる。
そして、空になったグラスをテーブルに置くと京介は圭志の方に向き直った。

「お前も泊まってけ」

そうだな、京介がここに泊まってくなら俺も泊まってくか。
どうせ帰っても京介はいねぇんだし。
そうするかと頷き、圭志は京介と共に各賓客に宛がわれているホテルの一室に向かった。
予め渡されていたルームキーで鍵を開け、中に入る。

「お前アルコールいけるよな」

「ん?大丈夫だぜ」

ネクタイを緩めている京介の背に圭志はそう声をかけて、ミニバーで二人分のグラスを用意した。
そして、それを持って京介の元に戻り、テーブルの上に置く。

「パーティーじゃ飲めなかったし、少し飲もうぜ」

カチリとグラスを合わせて圭志は言う。

「いいぜ」

圭志の隣に腰を下ろした京介もグラスを手に取ると、カチリと圭志の持つグラスに合わせフッと笑った。
本来なら未成年の部屋にお酒は置いていないのだが、共に親の名代として急遽顔を出すことになった二人の部屋には撤去し忘れたお酒が置いてあった。

お酒も進み会話が程々になってきた頃、圭志はグラスを置いた。

「京介…」

静かな室内に圭志の声が落ち、京介も飲むのを止めてグラスをテーブルの上に置く。
そして、誘われるようにその手を圭志の頬に持っていくと少し熱を持っているその顔を自分の方に向けさせた。

「熱いな。酔ったのか?」

「酔ってねぇよ」

ちらちら、と京介の瞳の中に見え隠れし始めた熱に気付いた圭志はなんだか可笑しくて笑いたくなった。

きっと自分も今似たような目をしているに違いない。
それは会場で京介を見てからかも知れないし、アルコールのせいかも知れない。
もっと言えばクリスマスという特別な雰囲気を持つ今日の空気に流されてかも知れない。
まぁ、この際どちらでも良いと自ら京介の首に腕を回す。
京介は圭志の誘いに応えるよう、そのままゆっくりと顔を近付け唇を重ねた。

「んっ…ン…」

舌先で唇を軽くつつけば圭志は逆らわず唇を開き、京介の舌を迎え入れる。

「…んっ…はぁ…」

熱い吐息と共に離れた唇との間に銀糸が紡がれ、京介はニヤリと口端を吊り上げて笑う。

「お前の口ん中熱いな」

「はぁ…、ンなのお前も一緒だろ」

いつもより熱いのはお互い様で、圭志も同じような笑みを浮かべた。

「そうか。ならこっちはどうかな?」

ごそりと京介の手が怪しく動き、ズボンの上から臀部を撫でる。

「…っ、…確かめてみりゃいいんじゃねぇ?」

ピクッと小さく体を跳ねさせた圭志は、京介の耳元で笑みを含ませた声で挑発的に囁く。

「言われなくても」

どさりと圭志をソファに押し倒した京介は、圭志の弱点でもある耳から攻め立てる。

「ーっ…ん…ちょっ、と待て!」

「何だよ?誘っといて今更止めたは聞かねぇからな」

ふっと耳に息を吹き掛けられ声が上擦る。

「そっ…じゃなくて。やるならベッドに連れてけ」

ソファだと余計身体に負担がかかって明日が大変だ。
その意味を京介はどう受け取ったのか、仕方ねぇなと言葉とは裏腹に愉しげに唇を歪めて言う。

「ベッドの方が満足いくまで出来るってお前が言うんじゃな」

「いや…言ってねぇし」

聞く耳を持たない京介にやたらと丁寧にベッドに運ばれ、キスを落とされて何だかんだ言いながらも結局圭志はその深い愛情を丸ごと受け入れた。


END.


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