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会話を交わしている間にも京介の手は緩まず、一本、二本と、馴染んできた所で三本目を入れられる。

「うぁっ…っ…く…」

中を広げられる感覚に、痛くはないが自然と眉が寄る。

圭志はその感覚を誤魔化そうと覆い被さる京介の髪に指を絡め、自ら引き寄せた。

「けい…っ…ん…」

京介が口を開こうとしたのを遮り唇を合わせる。
驚いてる隙に舌を差し込み、自身の口内へと引き込んだ。

「んっ、…ふっ…っ…」

くちゅりと、上か下かどちらか分からない濡れた音が室内に落ち、二人はますます熱を昂らせていく。

秘孔を弄っていた京介の指が抜かれ、何とも言えぬ感覚に襲われた圭志の口から、吐息とも声ともつかぬ音が漏れた。

「ぁ……」

京介は一旦体を起こし、履いていたズボンを脱ぎ捨てる。

「力抜いてろよ」

躊躇いも、惜し気もなく肌をさらした京介は圭志に覆い被さり、熱を宿した眼差しで圭志を見下ろした。

「っは、…いいぜ。来いよ」

俺が欲しいんだろ?

情欲の籠った視線に圭志はゾクリと背筋を震わせ、…口角を上げる。

「お前は…人がせっかく…いや、もういい」

ふっと諦めた様に唇に苦笑を刻んだ京介は圭志の腰を掴み、ぐっと腰を進めた。

「くっ…、初めからそうしろ。はっ…っん…、優しくなんか…」

中を押し広げ入ってくる異物感に圭志は浅く呼吸を繰り返す。

京介も僅かに息を詰め、圭志の腰に添えていた右手を外すと、挿入がスムーズになるように、萎えてしまった圭志のモノに指を絡めて刺激を与えた。

ズンッと腰にくる甘い痺れに、圭志は京介の首に腕を回して耐える。

「―っん…はぁ…っ…」

耳元で漏らされた甘い吐息と矯声に、中に侵入を果たしたモノがぐっと質量を増す。

「くっ…ぁっ…京介…お前っ…」

上擦った声で批難してもたいして効果はなく、全てを圭志の中に納めた京介は直ぐ側にある圭志の耳元へと唇を寄せた。

「はっ、…何だ、感じたか?」

熱の籠った低い声を流し込み、赤く染まった耳に歯を立てる。

「ゃめ…っ…ぁ…」

弱い部位を攻められ、圭志は体を震わせみじろぐ。京介の首に回していた右手を解き、後頭部に移動させて、抗議するように京介の髪を軽く後ろに引いた。

「もっ…っ、いー…から。…んっ…動け…」

圭志からの催促に京介は口元を緩める。耳から唇を離し、睨むように見上げてくる圭志の目元に口付けを落として、ゆっくりと腰を動かした。

「っぁ…くっ…ぅ…んっ…」

絡み付いてくる内壁に京介も吐息を漏らし、圭志の感じる所を突く。

「あっ、っく…んぅ…」

体の中を走る熱に思考を浮かされ、抑えきれなかった声が圭志の唇から溢れる。

「っは…、イイか…圭志?」

ぐちゅぐちゅと湿った水音と肌を打つ乾いた音。
とろとろと二人の腹を濡らす熱に圭志は息を乱し、右手を京介の背に落として軽く爪を立てた。

「…はっ…ン…っ、わかってる…くせにっ…っ…」

聞くんじゃねぇと濡れた瞳と背に走った痛みで返されて、京介はクッと額に薄く汗を浮かべて笑った。


次第に二人の息遣いと肌を打つ乾いた音の感覚が短くなり、圭志はたまらず京介の背に回した腕に力を込める。

「ンっ…ぁ…っ、京…キス…しろ…」

声が、抑えられねぇ。

「はっ、良いじゃねぇか。…っ、聞かせろよ」

京介は右手で、今にも弾けてしまいそうな圭志のモノに触れる。

「ばっ…っぁ…あっ…」

「――っ…ぅ」

同時に中が締め付けられて京介の表情が崩れた。

「ぁあ…もっ…っ…」

その隙を付いて、京介の頭を抱くように腕を回した圭志は、無理矢理京介の顔を引き寄せて噛みつくようなキスをする。

「んんっ…んっ…」

ふるふると震える体が限界を訴え、京介もそっちがその気ならと圭志を追い詰めるように右手で圭志のモノを刺激しながらラストスパートをかけた。

「ぁあ…っ…ん、ん…ンン――!!」

ビクンと圭志の体が大きく跳ね、京介の手の中で熱が弾ける。指の隙間を抜けた熱が互いの腹を汚し

「――っ…はっ…」

キツい締め付けに数瞬遅れて京介も圭志の中へと熱を解き放った。

「ぁ…っ…はっ…はっ」

「…はぁ…はぁ…」

唇を離せば交じりあった唾液が圭志の口端から伝う。

「んっ…はっ…」

それを、整わぬ息を待たずに京介は唇を寄せて舌で舐めとった。

見上げた視線と見下ろす視線が冷めぬ熱を孕んだまま絡まり、二人はどちらからともなくまた唇を重ね、長い夜へと沈んでいった。



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