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夜景が綺麗に見える一室。だけど、今の二人の視界には入らない。

場所をベッドに移し、京介は戯れるようにキスを降らせた。

「っ…、くすぐってぇ」

その感触に身を捩らせ、圭志は口元に淡い笑みを浮かべる。

コイツでもこんな、優しい触れ方するんだな。

京介と付き合うようになってから今まで知らなかった、気付かなかった京介の一面を発見する。
それは分かりにくい優しさだったり、甘さ、強さ、時折覗く子供っぽさとか数えれば切りがない…

「ん…。――っ、…」

じゅっと肌を吸われる感覚に圭志は意識を引き戻され、吐息のかかる距離にいた京介を軽く睨む。

「集中しろよ」

咎めるように耳朶を軽く噛まれて圭志はビクリと肩を揺らす。耳を攻めながら京介の手が圭志のシャツに掛かかった。

すっと素肌を撫でられ、ゾクリとした震えが背中に走る。

首筋に京介の吐息を感じ、また、じゅっと肌を吸われた。

「んっ…ぅ…」

胸の上を悪戯に這う指先を意識しないようにしながら圭志も京介の服に手を伸ばす。

しかし、

「お前、今日は何もするな」

その手は途中で掴まれ止められた。

「……あ?」

不満だと、熱っぽい吐息を吐き出しながら見上げてきた圭志に、京介一旦上半身を起こし、着ていたシャツを脱ぎ捨てながら返す。

「俺に全部預けろ。任せて感じてろ。…忘れられねぇぐらい甘い夜にしてやる」

何か言いたげに眉を寄せた圭志を再び組み敷き、京介は甘い声音と眼差しで圭志の心を絡めとった。






言葉通り今夜の京介はやたら甘く、優しく圭志を追い詰める。

ちゅっとリップ音を立てて、瞼、鼻、唇、鎖骨と徐々に下へ向かいながらキスを落とされる。

「んっ…京介…」

慣れない扱いに思わず圭志が戸惑いと羞恥を覚え、手を出そうとすると京介は殊更優しく圭志に触れて言った。

「隠すな。お前のありのままの姿を俺だけに見せろ」

「京、んっ…っ…」

ふわりと唇を重ねられ、舌を絡めとられる。それに気をとられている間にベルトを外され、ズボンの中に京介の指が侵入してきた。

「…つぅ…ん…ぁ…っ!」

いきなり直に触れられ、声が漏れる。京介の不意打ちに圭志は瞳を鋭くさせ、言葉の代わりに京介を睨み付けた。

「っ、煽んじゃねぇよ。我慢できなくなんだろ」

その眼差しに京介は眉を寄せ、ポツリと溢す。ズボンの中に侵入させた右手を緩急つけて緩やかに動かし始めた。

「っ、んぁ…くっ…ンで、我慢なん…お前には…んっ、似合わ、ねぇ…」

ズボンも下着も取り払われ、じわじわと迫り来る快楽の波に圭志は体を震わせる。

手を伸ばし、抗議する様に京介の腕を掴んだ。

「大人しくしてろ」

「…はっ…ンでだよ…?――っ、んぁ…」

とろりと先端から溢れてきた熱が京介の指を汚す。息を乱し、それでも快楽に落ちない圭志を見つめ京介は強く想う。

…身体だけが欲しいわけじゃねぇ。お前は…、一緒に心を手にいれねぇと意味がねぇ。

「俺が優しくしてやろうってんだ、素直に落ちろ圭」

熱っぽい低い声が耳へ流し込まれ、その声に反応してか、京介の腕を掴んでいた圭志の手がふるふると小刻みに震えた。

高まる熱と慣れぬ扱いに自然と顔が赤くなる。
圭志はせめて声は出すまいと口を閉ざす。

「っ、ぁ…あっ…くっ…」

しかし、それを京介が許すはずもなく、くちゅくちゅと水音が立ち始めたソコを京介は親指の腹でぐりぐりと更に刺激し、ふっと笑った。

「全部見せろ。他の誰でもない俺に」

「―っ、きょ…ぅ…っ…ぁ…」

「なぁ、圭…」

「くっ…ん…んっ―…!?」

ビクリと圭志の体が跳ね、同時に京介の手の中で熱が弾ける。

「っ、はっ…は…」

弛緩した体がベッドに沈み、京介は満足そうに瞳を細めた。

「ンで、その名で…呼ぶんじゃねぇ…」

乱れた呼吸を整えながら圭志は生理的に潤んだ瞳を鋭くさせて京介を見る。

「今さらだろ。それにお前、俺に圭って呼ばれんの好きだろ」

右手を汚す熱を、だらりと力を抜いて文句を垂れる圭志の後ろへ持っていき、京介はゆるりと口端を吊り上げて返した。

「っ、何を…根拠に…」

ピクリと体を反応させながらも止めようとしない圭志に京介は気を良くし、続けて言う。

「お前だってたまに、無意識かもしれねぇが俺を京って呼ぶだろ。アレ、割りと嬉しいもんだぜ」

「んっ…っ―…」

圭志の吐き出した熱をジェルの代わりにして、京介は閉ざされている秘孔へと指を一本侵入させた。


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