06


九琉学園の寮は1、2年専用の東寮と3年専用の西寮に別れている。
といっても完全に切り離されているわけではなく、4階の渡り廊下で繋がってはいるのだ。



圭志は2年なので東寮の管理人に挨拶をすませると、エレベーターに乗り6階へ上がる。

「さて、俺の部屋は…」

エレベーターから降り、圭志はブルーのカードに記された番号を探す。

「お、ここだな」

圭志は201と書かれたプレートを確認すると、ドアの横にある溝にブルーのカードを差し込みスライドさせる。

-ガチャン-

ロックの外れる音がし、圭志はドアを開けて部屋の中に入る。

中は寮の一室とは思えないぐらい広く、何処かの高級マンションの一室のようだった。

「すげぇな、これが学生寮かよ」

リビングの机の上にパンフレットとカードを置くと奥にある扉を開ける。

そこには勉強机と段ボールが四箱、制服などが置かれていた。

その左隣の部屋も開けてみると、そこは寝室らしくなぜかダブルベットが設置されていた。

「これは俺に使えってことか…?」

他にはキッチン、洗面所、バス、トイレ、何もない部屋が二部屋あった。

「で、この二部屋は好きに使えって事か…」

圭志は一通り見終えると冷蔵庫からペットボトルの烏龍茶を取り出し、リビングに戻る。

ペットボトルのキャップを開け、喉を潤すとソファに体を預けて一息ついた。

「はぁ〜。何か疲れた…」

テーブルの上に置いてあったテレビのリモコンに手を伸ばすと電源ボタンを押して、適当なチャンネルをつける。

「さっさと片付けて飯食って寝るか」

烏龍茶を飲み干し空にすると、立ち上がり段ボールの置かれていた部屋に向かう。

その際ドアを開け放し、テレビの音をBGMに黙々と片付け始めた。







「…やっと終った」

圭志が窓の外を見るとすでに陽は暮れ、時計は18時を指していた。

「夕飯どうするかな…?冷蔵庫に食材は入ってたけど作るの面倒だし」

圭志は自分のお腹の空き具合いと疲れ具合いを考えて、食堂に行くことにした。

そうと決まれば携帯とブルーのカードだけポケットに突っ込み玄関へ向かう。

そして、ガチャリとドアを開けたところ物凄く鈍い音がした。

-ガァン-


「〜〜っ」

「あ〜ぁ。馬鹿だねぇ、明(アキラ)」

ドアを開けるとそこには頭を抱えてしゃがみこむ男と、そんな男を見下ろして冷笑している背の低い少年がいた。


どうやら圭志がドアを開けた時、その真ん前に立っていたらしい。

「あ、悪ぃ」

圭志が謝ると少年はパッと爽やかな笑顔を造って、しゃがみこんでいる男を指差して言う。

「ううん。別に悪いのは明だから気にしないで」

少年はくりくりした大きな黒い瞳に黒い髪、男の方はオレンジに近い茶色い髪に茶色い瞳をしていた。

ようやく痛みが引いたのか、男は頭から手を離して立ち上がると圭志の前に立ちにっこり笑った。

「初めまして。編入生の黒月だよな?俺、隣の部屋の新見 明(ニイミ アキラ)ってんだ。よろしく!で、こっちが…」

「明の幼馴染みの三澄 透(ミスミ トオル)だよ。よろしく〜」

先程、明を冷笑していたとは思えないぐらい可愛らしい笑顔を振り撒いて圭志の手を握ってきた。

「あぁ、よろしく。ところで俺に何か用でもあったのか?」

二人が圭志の部屋の前に立っていたので、圭志はそう思って聞いてみる。

「そうそう。もう夕飯の時間だから一緒に食堂行かないかなぁ、って思って誘いに来たの。ね、明?」

透の言葉に明はうんうん、と頷く。

「そゆこと。どう?俺達と一緒に食堂行かね?」

その誘いに、食堂に行こうとしていた圭志は乗ることにした。



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