08


翌日の天気はまさしく海水浴日和といっていいほどの好天に恵まれたのだが…。もうすぐ着くと受信したメッセージを前に俺は落ち着きをなくし、玄関の内側でうろうろとしていた。

「に、荷物は準備万端。着替えも入れたし、洗面道具も…」

ううっ、どきどきする。今から工藤に会うと考えるだけで、こんなにも落ち着かなくなるなんて。こんな調子で俺は大丈夫なのか?心臓が持たなそう。

「俺、工藤に殺されるかも…」

迷走しだした思考を止める様に、リビングの扉から顔を出した悠が心配そうに声をかけてくる。

「廉兄ぃ、どうしたの?具合悪いの?」

「いや、…大丈夫だよ。ちょっと今日が楽しみで…」

俺が泊まりに出かける間、悠は一人でも留守番できるよと言って、俺の背中を押してくれた。悠は悠で、俺の時間を自分の世話の為に使わせていると思っていたらしく、俺が母さんに友達の家に泊まりに行くことを伝えた時に、俺の援護をしてくれた。母さんも俺に妹の面倒を任せっぱなしにしていたのを悪いと思っていたらしく、俺が泊まりに行っている間は早く仕事を切り上げて帰って来るからと、悠に言っていた。
なので、俺が今ここで悠に心配をかけさせるわけにはいかない。
俺は出来る限り落ち着かない理由をそれらしく、口にした。

「昨日、少し寝れなくて。眠気を飛ばしてるだけだから」

こう歩き回って。

うろうろしていた足を止めて、そう悠に笑って返せば、悠も安心したのか満面の笑顔を浮かべる。

「そっか。…頑張ってね!廉兄ぃ!」

「うん?」

何を頑張れと?不思議な声掛けに俺は首を傾げ、その意味を聞き返す前に悠はリビングへと引っ込んでしまう。そして、その代わりの様に、家のインターフォンが鳴った。

「っ、工藤?」

もう来たのかと、玄関を開ければ、直ぐに出て来た俺に驚いたのか、工藤が目を丸くする。
インターフォンを押した右手をひらりと振って、工藤はその双眸を優しく細めた。

「おはよう、廉。迎えに来たぞ」

「う…ん。おはよ、工藤」

思わず玄関扉を開けてしまった俺だが、心の準備はまだ出来ていなかった。黒いキヤップの下から零れる金髪はきらきらしていて眩しいし、優しく注がれる茶色の瞳は俺から見ても恥ずかしいぐらい甘い熱を湛えている。じわりじわりと頬に集まりそうになった熱を振り払うように、俺は一度玄関の中を振り返り、そこに置いてあった荷物を手に取る。リュックを背中に背負い、それとは別の鞄を斜め掛けに肩にかける。

「ずいぶんと荷物が多いな。何が入ってるんだ?」

その量に工藤が首を傾げる。工藤は斜め掛けにした鞄を一つ背負っているだけの軽装姿であった。

「これは隼人の家に泊まりに行くようの荷物で、海に行く用の荷物はこっち」

リュックと斜め掛けにした鞄の説明をしながら、俺は玄関を後にして、工藤の隣に並ぶ。

「リュックの方は向日葵に預けておくから…」

「――相沢の家に泊まるのか?」

「うん。あっ、そうだ!昨日、隼人に会って話をしたから。それで何か心配されて、しばらく泊まりに来いって言われたんだ」

工藤の隣に並んで歩き出した俺は昨日の事を報告する様に口に上らせる。横から感じる視線にどきまぎしつつ、ただ前をだけを見て話を続ける。だから僅かに深みを増した茶色の双眸が揺らいだことには気が付かなかった。

「俺一人だと危なそうだって…」

「そうだな。その方が俺も安心だ」

「工藤までそう言うのかよ」

ほいほいついて行きそうだって。俺ってそんな簡単に騙される奴だと思われてんのか。むっと微かに膨れた面で不満を零せば、横から伸びて来た手にそっと頭を撫でられる。

「前にも言ったかもしれねぇが、皆、お前が大事なんだろ」

「うっ…」

さらりと髪に触れて来た手に意識が引き寄せられる。ちらと動かした視線の先で、不意に視線がぶつかる。思わず固まりそうになった反応を見られるより先に、複雑な感情を滲ませた言葉が鼓膜を揺らした。

「本当は俺の家に来いって言いたいんだが、お前の身の安全を考えると確かに相沢の方が適任か。……妬けるな」

「や、妬けるって。何言ってんだよ!?俺と隼人は別にっ!…確かに隼人との付き合いは一番長いけど、そんなんじゃないし!」

言葉と共にそっと離れていった手を視線で追いかけ、何を誤解しているのかと、俺は慌てて口を開く。

「隼人はただ困ってた俺を助けてくれて、それからもずっと悠の事とか色々相談に乗って貰ったりもして、つい頼っちゃうこともあるけど。隼人は友達で、仲間で…、頼れる先輩…みたいな…?」

妙な誤解が増えないように言葉を選んでいたら、工藤は何故か目を丸くして俺を見ていた。

「え?何?」

俺、変なことは口走ってないよな?
むしろ、ここできっぱりと俺が好きなのは工藤だからとか、言えば良かったのか?でも、それは無理!恥ずかしい。心の準備が。…無理。絶対に無理だから。

とりあえず機械的に足だけ動かして、歩みを進める。

この際、早く向日葵に着くか、誰か他の知り合いにでも遭遇したい。

そんな妙な空気になってから、数秒か数十秒か。長く感じた時間は隣からふっと柔らかく空気を吐き出す音に破られた。低い声音が俺の耳朶を打つ。

「そんな必死に否定されるとは思わなかった」

「え?」

何故か機嫌良さそうに笑った工藤に俺は戸惑うばかりだ。
今の間はなんだったのか。どきどきと早まった鼓動に、工藤の笑みは心臓に悪いと心の中で呟く。

「それで、昨日は他に何も無かったか?変な事とか」

「あ…うん。大丈夫だと思う。皆も色々と調べてくれるって言ってたし」

俺の戸惑いなどお構いなしに、工藤は急に真面目な話に戻って聞いて来る。

「そりゃ、頼もしいな」

Larkは決して弱いチームじゃない。情報も拾えるだろう。

「うん」

だから俺も負けてはいられない。しっかりしなくては。
自分で自分に気合を入れる様に力強く頷き返せば、横からするりとその気持ちに釘を刺す様に言葉が滑り込んでくる。

「俺がいるのも忘れるなよ」

言外に一人で無茶だけはしてくれるなよと言われた気がして、俺はとりあえずもう一度頷いておいた。しかし、どうやらその曖昧な相槌が気に入らなかったのか、工藤は微かに眉を寄せると何故かそこで隼人の名前を呟いた。

「やっぱり少し相沢と話し合う必要があるか」

「何で?というか、何を?」

いきなり飛んだようにみえた話題に俺は疑問符を浮かべる。隼人の事は解決したんじゃないのか?それとも工藤の中では何か誤解が生まれていたのか。再び直面した危機に焦りが生まれる。
けれども、何をと聞き返された工藤は俺が考えていた危惧とはまったく違う回答を口にした。

「お前の危機管理についてだ」

自分一人で解決できそうだと思ったら、そのまま一人で突っ走って行きそうな気がする。

「あと、生返事をするな」

軽く握られた右拳でコツリと額を叩かれる。

「今回ばかりは飛び出して行くなよ。狙われてる張本人が」

「今回ばかりはって、俺、工藤の前ではそんな何度も無茶な真似はしてないと思うんだけど」

「俺の前ではって、自覚はあるんだな?」

「えっ、あ、いや…。今のは言葉の綾と言うか…、売り言葉に買い言葉的な…?」

「はぁ…。大方、相沢に止められてんだろ。だから、お前の事については相沢と話し合った方が話も早いだろ」

そう言う意味だと、工藤は先程の自分の言葉の真意を教えてくれる。でも、それは俺本人に言う事か?せめて、俺の前以外で言う事じゃないか?なんか、俺に信用がないみたいで地味に傷つく。

「そう落ち込むな。お前が聞いて来たんだろ?」

「そうだけどさ」

じりじりと照り付ける太陽までもが俺の気持ちをへこませる様に降り注ぐ。海に行って遊びたい気持ちはあるのに、朝のテンションはどこへやら。工藤ともいつも通りに会話を続けられていることにも気付かぬまま、俺は少し不貞腐れた。

しばし落ちた沈黙の後、工藤は自ら被っていた黒いキャップを外すと、何の前触れもなく俺の頭にそのキャップを被せて来た。

「わっ!いきなり、何…?」

「みんなお前に頼られたいんだ。お前を信用してないわけじゃない。お前が一人でも強い事は、お前の仲間なら誰だって知ってる。それでも、お前から頼りにされるのとされないのじゃワケが違う」

「工藤…?」

被せられたキャップの下から工藤を見上げれば、僅かに悪戯めいた表情を浮かべた工藤と視線がぶつかる。

「お前だって仲間に頼られたら嬉しいだろ?」

そのキャップは被ってろと、照り付ける太陽よりも優しく温かな手がキャップの上に乗せられる。

「お前自身は動けなくて不満かも知れねぇが、それは同時にお前自身が自分の仲間を頼りにしてる証拠だ」

それじゃ嫌か?と、工藤は返事の分かり切った質問を自信に満ちた顔で聞いて来る。

「分かってるくせに」

「分かってるのと口にするのは違うだろ」

「…そんなの嫌なわけないじゃん。みんな、俺の自慢の仲間だし。俺はみんなのこと頼りにしてるよ」

「そうだろ。お前のチームはそういうチームだ」

仲間思いで、団結力があって、強い絆がある。総長である廉がそういうものを大切にしているから自然とそうなったんだろう。それでいて、何か事が起きれば真っ先に総長である廉本人が先頭に立つ。個人の強さもあるだろうが、そこは廉の気質か。相沢達はその度に色々と手を回して、廉自らが出て行かなくても済む問題は他の連中で片付けているみたいだが。
その辺りDoll-うち-とは決定的に違う。
Dollは総長である工藤自らが出て行き、片付ける問題などそう多くは無い。ほとんどはDollの中でも下の連中か、Doll傘下と呼ばれる他のチームが対処している。

「Larkは良いチームだ」

「まぁ…な」

改めて工藤にそう言われると、何か…嬉しいんだけど、そわそわとして落ち着かない。擽ったい気持ちと一緒に恥ずかしさが込み上げてくる。
でも、Larkが俺自慢のチームだというのは本当で。
俺は被せられたキャップのツバに指をかけると、くっと強くそのツバを下に引き下げる。その影で俺は緩む表情を隠して笑った。

キャップに乗せられていた工藤の手はその時に離れて行ったが、表情を隠すのに必死だった俺はその事に気付かなかった。
工藤があえてその行動を止めなかったことも、いきなり顔を隠した俺に追及の言葉を投げなかったことも、俺は知らない。工藤はただ優し気な眼差しでキャップと黒髪の隙間から僅かに覗いた、赤く染まった耳たぶを見て口許を緩ませていた。







「ん?…悟?」

集合場所であるLarkが拠点とする、喫茶店『向日葵』に近付いた時、隣を歩いていた工藤が不意にそう呟いた。俺はその呟きを拾って、キャップの下から顔を上げて、工藤が前方へと投げていた視線を追った。
するとその視線の先に、Dollの副総長でもある永原 悟がいた。向こうもこちらの視線に気が付いた様で、曲がり角で足を止めると右手をひらりと顔の横で振って、俺達が近付いて来るのを待つ。

「貴宏に廉さんも。おはよう」

永原さんが足を止めた曲がり角を曲がれば、その先に向日葵が見えてくる。

「何でお前がここにいるんだ?」

工藤は挨拶もすっ飛ばして永原さんにそう問う。俺は一応会釈で返しておいたけど、確かに何で永原さんはここにいるんだろう?この周辺はLarkの拠点があるせいか、あまり他のチームの人間は見かけないし、Dollのたまり場はここから離れている。それとも何か用事かな?
不思議そうにする俺と工藤の顔を交互に見た永原さんはあれ?と首を傾げた。

「聞いてませんか?俺も今日、誘われたんですよ。海に。隼人さんから」

「え?そうなの?」

俺は初耳だ。そう思ってちらりと工藤を見れば、工藤は工藤で何故か眉をしかめていた。

「俺も聞いてねぇぞ。まさかとは思うが…」

「あぁ…それは安心して下さい。誘われたのは俺個人なんで、他は来ませんから」

そうそう貴宏の邪魔はしません。それに俺達がいなくても動けるように鍛えておかねば、次の代が困りますから。永原さんはさらりと内輪の話らしきものを口にする。

「それなら良いが」

「そういうわけで、今日は俺も一緒によろしくお願いします。廉さん」

「え、はい?」

何だかよく分からないが、隼人が誘ったんなら大丈夫なんだろう。俺は何の根拠も無く、そう信じて二人と共に向日葵へと足を向けた。

カラン、カラ〜ンと聞きなれたドアベルの音を耳にしながらお店のドアを開ければ仲間達はもう店の中に集まっていた。

「みんな、早いな。おはよう!」

「あっ、廉さ…!」

「おはようござ…!!」

「えっ、何で!?」

「そんな、総長っ!」

ざわりと一瞬にして店内の空気が変わる。わいわいと明るく、賑やかだった空気が何とも言えぬ妙な湿気を含んだものになる。

「え?なに?みんな、どうしたんだ?」

その変わり様に俺の方が驚いて、戸惑う。店の奥から顔を出した隼人によってその妙な重さを持った空気はからりと払拭される。

「揃ったな。今日はこの面子で海行くからな。個人的な話し合いがしたい奴は海に行ってからにしろよ」

「隼人さん。後出しはズルすぎるでしょ?」

「個人的な話し合いなら何でもありっスよね?」

隼人の言葉にカウンター席に座っていた矢野がそうぼやき、陸谷は何だか物騒な言葉を呟く。

「ズルくはないだろ。お前が度々、廉のアリバイ工作に加担してるのを見逃してやってるんだ。それよりはマシだろう?」

「げっ!バレてたのか…」

じゃぁ、この前の、スネークの一件の時、留守番をしてろと言われてたのに外に出てたことバレてたのか。矢野がクレープの移動販売がどうのとか言って誤魔化してたけど、あれは意味がなかったのか?それはマズいんじゃ…。というか、隼人はどこまで誤魔化されてくれてたんだ?度々って言ってるけど。これまでも色々と…。

ぎくりと身を強張らせた俺の背後で話を聞いていた工藤が酷く冷静に口を開く。

「お前、そんなことしてたのか?」

「いや…、まぁ、…ちょっとだけ?」

俺は工藤の追及と隼人の意識を反らす為に、声を上げる。

「そ、そんなことより、早く海に行こう!いつまでもここに居たら邪魔になるし、話なら歩きながらでも出来るだろ?」

な?とみんなに行動を促せば、店内にある時計に目を向けた隼人も、集合時間も過ぎた事だしと、移動を決める。
俺は店を出る前に泊まり用の荷物が入ったカバンをお店に預けておく。

「廉。家の方は大丈夫だったか?」

カバンを預けた俺に隼人が近付いて来る。

「うん。むしろ、しばらく遊びに出てても良いって」

母さん、極端なんだと俺はそう言って苦笑を浮かべた。すると何故か隼人は俺を通り越して工藤へ言った。

「廉から聞いたか?」

「あぁ。ついさっき。ここへ来る前にな」

「じゃ、そういう事だから。まだ工藤サンの許可は必要ねぇよな?」

「まだ、な」

「…隼人さんも言いますね」

「ちょっと隼人!許可とか何言ってんだよ!」

「ほら、廉。矢野達が呼んでるぞ」

話しの途中で隼人に背中を押される。言われてみれば確かに店の入口で矢野達が手招きしているが。俺は隼人と工藤の話が気になって、ちらと重なった視線の先で工藤がその双眸を緩める。

「俺に構わず先に行っていいぞ」

そうじゃなくて。俺は…。

「それなら俺も廉さんと一緒に先行きますね。廉さんとは個人的にも話したいことがあるので」

「おい、悟。廉に余計なこと言うなよ」

「分かってます」

工藤と永原さんにまでそう言われては、俺も足を動かさざるを得ない。

「隼人。…隼人も余計なこと言うなよ」

「大丈夫だって」

隼人は俺の言葉に苦笑を浮かべて頷いた。

「それじゃ、先に行きましょうか。廉さん。隼人さんとはまた後で」

永原さんに促がされる形で俺は先頭を行く矢野達に合流した。
まずは向日葵を出て、近くの駅へと向かう。

「それにしてもDollのツートップが、揃って暇なのか?」

「矢野、言い方!永原さんは隼人が誘って、来てくれただけだし。工藤は俺が…」

「良いんですよ、廉さん。彼らの言い分も分かります」

それに今は個人としてこの場に居るので、何を言われても問題にはしません。隼人さんも個人的な話し合いがしたいならと言っていたでしょう。

矢野の嫌味ともとれる発言を気にするどころか真っ向から受け止めて答える永原さんは温和な表情を崩すことなく続ける。

「逆に俺達が暇なのは良い事です。俺達自身が動く=街の治安がそれだけ悪化しているという事になりかねませんから」

それだけ、Dollの名は伊達ではないのだ。強い影響力を持つ。

「そういうわけで、今日は俺も貴宏も個人参加なので、何か言いたい事があれば直接本人に言ってもらって構いませんよ」

永原さんはそう言って矢野を始めとした俺の仲間達を振り返り笑顔を浮かべてそう言った。

「…つまり、今日は何をしても許されるってことだよな?」

「Dollの副長がそう言うんだ。俺達の総長を守る為にも今日こそは!」

「あの顔面にビーチボールを叩きこんでも、お咎めなし!」

「やったぜ!!断然ヤル気が出て来た!」

「あぁ、工藤を見た時は一瞬目の前が暗くなったが。見てて下さい、廉さん。俺達があの工藤に一泡吹かせてやりますよ!」

いきなりやる気を見せた仲間達に俺は戸惑いつつも頷き返す。
これまた何だかよく分からないが、ほどほどにしておけよと言っておく。
てか、いつの間に工藤は俺の仲間達から恨みを買っていたんだ?
首を傾げる俺の横で永原さんはくすくすと可笑しそうに笑っていた。

「まぁ、病院送りにさえしなければ大丈夫ですよ」

「えっ」

ぽろりと零された一言を耳にして俺はぎょっとして、永原さんの方を見る。同時に僅かに身を引いた矢野と視線が途中でふつかり、こいつはヤバいと矢野が視線で俺に訴えてくる。でも、だからって俺にどうしろと?むしろ、矢野はさっきその永原さんに喧嘩を売っていただろ。

「ん?どうかしましたか?」

「えーっと…、そうだ。さっき俺に話があるって言ってたけど」

ぱっと矢野から永原さんに視線を流して、俺は咄嗟に話題を変える。その隙に歩みを緩めた矢野は俺達から距離を取ると、仲間と一緒に後方を歩いていた陸谷とちゃっかり合流していた。



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