04


得点の中間結果が発表され、午前の部が終わるとお昼休みになる。
広げたブルーシートの上に上がり、俺は紙袋から風呂敷に包まれたお弁当を取り出した。

「今日は何作って来たんだ?」

お昼休みということで散らばっていたメンバーが集まってくる。
俺は隼人の問い掛けに風呂敷を解いて、姿を見せた重箱の蓋をカパッと開けた。

「お握りとサンドイッチだよ。これなら皆食べれるし、箸とかいらないでしょ?」

「「「おぉ〜〜!!」」」

周りに集まっていた仲間達が嬉しそうに声を上げる。

「一杯作ったから食べてね」

仲間達に笑顔で言えば頂きます!とひょいひょいと手が伸びてくる。

「お前等少しは遠慮しろよ」

矢野が一番先に手を伸ばした仲間の頭を小突く。

「いてっ!って、慎二さんだって嬉しい癖に〜」

わいわいと盛り上がる仲間達に自然と笑みが浮かぶ。

「Dollの皆も食べていいよ。多目に作って来たから」

「マジッスか!?」

「姫の手作りが食べれるなんて!」

開けた重箱をDollの人に手渡して俺は笑った。
皆でこうやって騒ぐのはやっぱり楽しい。

「無理すんなよ廉」

隣から伸びてきた手が俺の頭をポンポンと軽く叩く。
そちらを見れば、しょうがないという風に柔らかい目をした工藤がいた。

「無理なんてしてないよ。俺、料理するの好きだし、美味しいって食べて貰えると凄い嬉しい」

重箱とは別に作ったお弁当を紙袋から取り出し俺はそう返した。

「はい、悠」

工藤とは反対側、俺の左隣にちょこんと座った悠にピンク色の可愛らしいお弁当箱と箸を渡す。

「わぁ、ありがと廉兄ぃ!」

「デザートはそれを食べてからな」

くしゃりと頭を優しく撫でて手を離した。
悠のお弁当箱には甘い玉子焼きやタコさんウィンナー、唐揚げ、ポテトなど悠の大好きな食べ物が詰めてある。
俺は悠の喜んだ時のきらきらとした笑顔が好きだ。

「おっ、悠ちゃん。可愛いお弁当だね〜」

「えへへ〜廉兄ぃが作ってくれたの!」

健一が後ろから覗き込んで悠が照れたように笑って自慢する。

「で、こっちが俺達の分な」

お握りやサンドイッチが入ってるのは同じだが、こっちには唐揚げや春巻き等摘まむものが数品目おかずとして入っていた。

「ちょっと数が足りなくてそっちには入れられなかったんだけど…」

仲間達の方を申し訳なさそうに見れば、皆ぶんぶんと首を横に振った。

「俺達これで十分嬉しいから!」

「そうッス!」

「総長に気にかけて貰えるだけで俺達は…」

大袈裟過ぎる仲間に俺は心が温かくなって笑ってしまった。

「それはちょっと言い過ぎだよ」

「いいやその通りだぜ。お前等、味わって食えよ」

いつの間に背後に立ったのか聖が俺の頭に手を乗せて偉そうに言い放った。
他に修平と悟、陸谷が用意したお弁当を広げて皆でつつく。

「坂下って器用なんだな」

デザートに、ウサギの形に剥いたリンゴと缶詰のミカンを出せば純が感心したような声で言った。
そんなまじまじとリンゴを見て言わなくても…。

「ん〜、でもこれぐらい普通だと思うけど」

そこまで感心されることじゃないと言えば、修平に叫ばれた。

「凄いことなんだよ廉ちゃん!だって俺がリンゴ剥いたら何故か四角くなっちゃうんだから!」

「え?」

「それはアンタが不器用すぎるんじゃねぇ」

サクッと爪楊枝をリンゴに刺して矢野が言う。

「ある意味シュウはすげぇからな〜。前にどんだけ不器用か針と糸を使って試したら、穴に糸通すのに一時間はかかったんだぜ〜」

健一がケラケラと笑いながら話せば、聖から冷たい視線が飛ぶ。

「それをやらせるお前もある意味馬鹿だろ」

「ちょっ…」

健ちゃんに容赦無い聖に俺は慌てる。

「最後は悟さんに取り上げられてた」

「へぇ。中々面白い事やってるな」

誠が後を継いで落ちを告げれば隼人が相槌を打つ。
なんでそんなのんびりしてるの隼人!

「修平が意地になって手放さなかったから強行手段に出たまでです」

と、永原さんまで。
一応、仲良くなっているみたいだが何か心臓に悪い。

「どうした廉?」

俺の様子に気付いた工藤が声をかけてくるが何でもない、と首を横に振って返しておいた。
うん。何はともあれ喧嘩もなく、皆仲良くなったんだ。
DollとかLarkとか関係なく、同じ学校に通っている人達は共通の話題とかで盛り上がっていた。

「おっ、そろそろ時間だな。行くか陸谷」

話の輪から抜け出した隼人がグラウンドにある時計を見て立ち上がる。

「もうッスか?」

「あぁ。最終確認するから遅れるなって先輩がな。笹木、お前も行くだろ?」

急に隼人に話を振られた純が慌てて、行きますと答えた。
その光景に俺はきょとんと瞼を瞬かせた。

「そっか、体育祭は同じチームだもんな。なんか不思議…」

そう思ったのは俺だけじゃなかったらしく、皆まぁとかそうだなとか言って頷く。
こういうちょっとくすぐったい感じ、悪くはない。むしろちょっと嬉しいかも。
自然と頬が緩む。

「そう思うのは今だけだ。そのうち慣れてくるさ。そうだろ、廉?」

工藤がこの光景をあたり前の様に言ってくれる。明日になっても俺達の関係は変わらないと。
敵になることはないって。
だから俺は笑顔で頷き返した。


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