07


いつもの様に学校へ行き、Larkのアジトへと向かう。
何か誰かに見られてる様な気がする。
気のせいか?
ちらりと後ろを振り返り、周囲を見渡して見るがこれといって変わったことは何もない。
とりあえず早くアジトへ行こうと俺は歩くスピードを上げた。

-カラン、カラ〜ン

「よっ、廉。元気にしてたか?」

アジトへ入るとカウンター席に座っていた男が振り返り、こちらを見て片手を挙げてそう言った。

「隼人!!」

カウンターに座っていたのはLark副総長の相沢 隼人だった。
俺は隼人の横に座り、マスターにいつものカフェオレを頼む。

「元気にしてたか、じゃないだろ。俺に黙って何してんだよ」

俺がいない間に起きていた事件の事を指して言えば隼人はあぁ、聞いたのかとあっさり認めた。

「廉が出るような事じゃないさ。大体調べがついたし」

隼人はコーヒーのお代わりを頼んで俺の方を向く。

「犯人が分かったのか?」

「まぁな。教えてやっても良いけど条件がある」

隼人はいつもそうだ。教える代わり条件を出してくる。

「どうせまた俺に大人しくしてろって言うんだろ」

「そゆこと。廉が態々出なくても俺達で片付けられる。廉は総長らしくでんと構えとけって」

髪をくしゃくしゃと掻き混ぜられ、俺は膨れっ面をする。

「たまには俺も暴れたい…」

隼人はカフェオレを受けとる俺の頭から手を放した。

「また今度な。おい、お前らちょっと集まれ」

隼人はコーヒーのおかわりを受けとるとカウンター席から立ち上がり、奥のテーブル席に足を進める。
俺もその後をついて行く。
隼人は俺を椅子に座らせ、横に立つと集まってきたLarkの面々を見回し口を開いた。

「最近この辺のチームを潰してた奴らとその目的が分かった」

隼人がそう言うと皆はざわざわと騒ぎ出す。

「犯人はSnakeっていうチームらしい。結構前からあったチームらしいが最近は目立った活動はせず大人しくしてたようだ。それが急に活動し始めた」

「それで目的は?」

俺が隼人を見上げて続きを促す。

「目的は俺達だ」

ざわり、と空気が張り詰めたものに変わる。

「Snakeは俺達を標的に定めた。Larkを潰してNo.3になるつもりなんだろ」

フン、と馬鹿にしたように隼人は鼻で笑う。

「それは俺達に喧嘩を売ってきたってことッスね」

隼人の横に立つ、灰色の髪をツンツンに立たせた男がそう聞く。
こいつは幹部の一人で陸谷(リクヤ)。
俺は陸谷の言葉に頷くと立ち上がる。

「そうだな。もちろん、売られた喧嘩は買う。それがLarkだ」

ちらり、と隣の隼人を見ると隼人もうんうんと頷く。
しかし、…。

「喧嘩は買う。でも、廉は約束通り大人しく待ってろよ」

そう言った隼人に俺は不満だと視線を向けた。

「お前らもそう思うだろ?」

「そうッスね。廉さんが出るまでもなく俺達で片付けますよ」

「そうそう、総長は大人しく待ってろよ」

「総長が怪我でもしたら大変だからな」

皆は次々に隼人に同意する。
なんだよそれ。皆の裏切り者。

「俺の味方はいないのか…?」

肩を落とす俺に矢野が笑って言う。

「それだけ大事にされてるってことだろ」

「むぅ」

むくれる俺の元に矢野を残し、Snakeのアジトも突き止めていた隼人は全は急げとばかりに仲間を連れて出て行った。

「つまんない」

俺はカフェオレをすすりながらポツリと溢した。
その呟きに矢野が頬杖をつき、窓の外を眺めながら返してきた。

「まぁまぁ、隼人さんも何か考えがあって廉さんを残したのかも知んねぇだろ」

「さっきと返答が違う」

俺はカップをテーブルの端に置き、机に顔を伏せた。
だから窓の外から視線を俺に向け、髪の間から覗いたカフスを見て驚いた顔をした矢野に気付かなかった。

「矢野、俺ちょっと用事を思い出した」

がばりと起き上がり、俺は立ち上がると外へ行こうと歩き出した。
矢野は歩き出した俺の腕を掴む。

「駄目だって。そう言って行く気なんだろ?」

「行かないって。そんなに心配なら付いてこいよ」

矢野は俺の腕を放すと立ち上がった。
店から出ても良いってことだよな?
俺は矢野を連れて店を出た。
そして、人通りの少ない道を選んで歩く。
そんな俺に気付いたのか矢野が眉間に皺を寄せて聞く。

「廉さん、どこ行くつもりだ?」

「ん?そのうちわかるよ」

それは、俺達が人通りの少ない道から人がひとっこ一人いなくなった道に入った時起きた。

「――っ」

矢野が俺を自身の後ろにかばい瞬時に身構える。
俺はそんな矢野の後ろから顔を覗かせ口を開く。

「誰だか知らないけど出てこいよ。さっきも俺を見てただろ」

そう、アジトに向かう途中感じた視線と気配の持ち主を誘きだしてみたのだ。
矢野は身構えながら俺に文句を言う。
そういうことは早く言え、だって。言ってる暇なかったんだから仕方ないだろ。
あーだこーだやってる内に二人の男が出てきた。
緑頭と信じられないぐらい明るいド派手なピンク頭の奴。
どちらも俺より背が高くガタイもいい。
俺と矢野が二人に視線を向けるとピンク頭が口を開いた。

「坂下 廉、率直に言う。俺と付き合え」

「「はぁ?」」

俺と矢野の声が被った。

「えっと…付き合うって何処に?」

俺は思わずそう返していた。
矢野も構えを解くと肩を震わせ笑い始める。

「何笑ってんだてめぇ!!」

その様子にピンク頭の横に立っていた緑頭が怒鳴る。

「わはははは、廉さんその切り返しはいくらなんでも無いだろっ」

あまりの笑われように俺は恥ずかしくなり僅かに頬を染めた。

「だって、アイツが付き合えって言ったんじゃん」

「あ〜、そっかそっか。それでこそ、廉さんだ」

矢野は意味不明な事を言って、笑いを納めると男達に向かって言う。

「と、言うことで廉さんは付き合わねぇってよ」

「あ゛ぁ?断るって言うのか?」

ピンク頭は矢野の言葉に青筋を立てる。

「そゆこと。てめぇら見たいな奴に廉さんは渡せねぇしな。さっ、店に帰ろうぜ」

矢野は言うだけ言うと俺の肩に手を回して歩き始める。

「おい、待てよ。俺の誘いを断っておいてただで帰れると思うなよ?」

ピンク頭がパチリと指を鳴らせばそこらの路地から男達がぞろぞろと出てくる。
矢野はそれをつまらなそうに見て、フンと鼻を鳴らした。

「廉さん、暴れてもいいけど怪我だけはすんなよ。バレたら俺が皆に袋叩きにされちまう」

「何だそれ?」

俺は首を傾げながら矢野と背中合わせになるように立った。
どこから持ってきたのか知らないが男達は鉄パイプを握り締めて一斉に襲い掛ってくる。

「ったく、手に入らないとすぐこれか。これだから馬鹿は…」

俺の背後で戦いながら矢野は何かぶつくさ呟いている。
まぁ、それだけ余裕があるってことなんだろうけど俺的には気になるから止めて欲しかった。


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