03


昨日は久しぶりにマスターの入れてくれたカフェオレを飲みながらLarkの皆とわいわい夜遅くまで騒いだ。
結局、隼人は最後まで店に来なかったけど。

「さて、今日はどうするかな…」

俺は着替えながら明るい陽射しのさしこむ窓の外を何気無く見た。
そんな時、机に置いてあった携帯が軽快なメロディーを奏で始めた。

「誰だろ?」

俺はLarkの誰かか学校の友人だろうと思ってディスプレイで相手を確認せずに通話ボタンを押した。

「もしもし?」

『よぉ、廉。今日暇か?』

「は?」

思わぬ人物からの電話に、俺は一度耳から携帯を離すと、ディスプレイに表示されているであろう相手の名前を見る。
と、そこには最近登録したばかりの工藤 貴宏という文字が表示されていた。

『おい、聞いてるのか?』

「えっ、工藤?何で…」

『何でって携番交換しただろ。それよりも今日暇か?』

「特に用はないけど」

『それなら30分後、五番街の時計台の下まで来いよ。暇なんだろ?遊ぼうぜ』

「うん、まぁいいけど」

『じゃ、待ってるぜ』

工藤はそう言うと電話を切った。
俺は急遽できた予定に携帯を閉じるとポケットに突っ込み、出掛ける準備をする。って、俺この前工藤に告白(?)されたんだっけ?
すっかり忘れてた。
どうしよう、どんな顔して会えばいいんだ!?








五番街の時計台の下――。
俺はあれこれ考えたすえどうにでもなれ、と投げやりになってここまで来た。

「時計台の下ってどこにいるんだよ…」

休日の今日、時計台の下ではフリーマーケットが開催されているらしく人がごったがえしていた。
この中から探せってか?
俺はしばらくきょろきょろと辺りを見回して工藤を探した。

「って、あれ?」

そんな人混みの中、若い女性がちらちらと同じ方向に視線をやっているのに気付いた。
まさか…。
俺はそう思いつつ、女性達の視線の先を見やる。
と、そこには案の定工藤が立っていた。
そしてその横にいた2人組みの女性が何やら工藤に話しかけている。
やっぱり…。
まぁ、男の俺から見ても工藤って格好良く見えるんだから、そりゃぁ女性陣には凄くモテるんだろうな。
…でも、なんかちょっとムカつくな。
なんでだろ?
俺は何と無く胸の辺りがもやもやした気がして、服の上から胸の辺りを掴むと一人首を傾げた。

「まぁ、いっか」

それよりもどうしよう?俺、あんなに目立ってる工藤のとこに行きたくないぞ。

「うむむ」

俺がそんなことを思いながら工藤の方をじっと見つめていると、ふいに工藤がこっちを向いた。








side 工藤
失敗した。
時計台の下で待ち合わせになんかするんじゃなかった。
俺は先に来て廉を待つ間、何人もの女に声をかけられて正直うんざりしていた。

「俺は廉を待ってるんであって、アンタ等何かお呼びじゃねぇんだよ」

「何よその言い方!?」

声をかけてきた2人組みの女に俺は鋭い眼差しを向けて言い放つ。
そうすると怒鳴ってきた女も、一緒にいた女も顔を真っ青にさせて逃げるようにして俺の元から去っていった。

「ちっ、うざってぇ」

俺が舌打をして忌々しそうに言葉を吐き捨てると、ふいに横から強い視線を感じた。

「何だ?」

俺がその方向に視線を向けると、その先には廉がいた。
なぜか少し泣きそうな顔をした廉が。

「なんて顔してんだよアイツは…」

俺は今までの不機嫌さを忘れて廉の方へ足を進めた。



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