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masaki様リクエスト
九琉学園。CPは静×明で、静が嫉妬して、明がお仕置きされる話。裏は出来れば入れる方向で。
※本編の都合上、裏という裏では無く、裏っぽくみえるよう執筆させて頂きました。







その日も明にとっては何てことない極々ありふれた一日で終わるはずだった。

「っ…静…、もっ…許して」

あれから何十分、いや、もしかしたらまだ数分も経っていないのかも知れない。
掠れた吐息を吐き出し、耳まで真っ赤に染め上げた明は涙で濡れた瞳をすぐ目の前にいる静に向ける。

「まだ駄目だ。俺が満足するまで、お前がちゃんと誰のものなのか理解するまで俺は許さねぇ」

青みがかった鋭い双眸に射抜かれてとくとくと明の鼓動が早鐘を打つ。
燃えるように熱くなった顔を苦し紛れに横へ反らせば、それも許さないと伸ばされた手が明の顎を掴む。

「駄目だって言ってるだろ」

「……っ」

壁際に追い込まれたまま間近から瞳を覗き込まれて今度は目を瞑る。

「往生際が悪いなぁ明くんは…」

言いながらクツリと低く笑った静は閉じられた瞼に唇を寄せるとちろりと覗かせた舌先で軽く明の瞼を舐めた。

「ひゃ…っ、な、何して!?」

思わぬ攻撃を食らった明は堅く閉じたはずの目を見開き、体を震わせる。

「なぁ明。俺は何か間違ったこと言ってるか?」

「うっ…で、でも!黒月とはそんなんじゃないって。友達だって、静だって分かってるだろ!」

「残念だが、理解するのと納得するのは俺の中じゃ別物なんだよ。お前がどう言葉を重ねても…な」

「そんな…」

だから、と静は明と視線を絡めて胸の中にどろどろと渦巻くほの暗い熱い想いを明に注いだ。

「分かったら言えよ、その口で。俺が満足するまで何度でも」

「…ゃ…無理っ…静…っ」

「無理じゃないだろ?それだけで済ませてやるって言ってるんだ。…優しいだろう俺は」

にこりと間近で甘く微笑まれ、どきりと胸が高鳴る。甘ければ甘いほど騒ぐ鼓動の裏で明はじっとりと冷や汗をかいた。

そもそもこうなった原因が明には分からなかった。

朝はいつも通り部屋まで迎えに来た静と登校し、教室の前で別れた。

「また放課後な」

「うん」

その後仲良く遅れて来た黒月と神城と他愛ない話をして午前中の授業は始まった。

「明〜!今日、佐久間さんとは別なんでしょ?圭ちゃんも一人なら一緒にお昼食べようよv」

お昼になって透が教室に呼びに来て、今日は何やら昼に生徒会の集まりがあるからと一人になった黒月を透が誘う。

「いいぜ。透と食うのも久し振りだな」

「でしょ?最近は明も別だしね」

そうして珍しく三人で食堂に行き、楽しく昼食を食べた。

午後からはまた授業を受けて、少し分からなかったところを授業後に黒月に教えてもらった。それを横から神城が覗いてぼやく。

「先にこっちを訳して、後からこっちを…」

「最近はどこも英語が主流だからな」

「うん、あ、分かった。ありがと黒月」

そして、放課後にはそのお礼といっては何だが、次にまた一緒にご飯を食べる機会があれば安いものなら奢ると…そう言って黒月とは別れた。

「別に礼なんて構わねぇのに」

「俺の気持ちの問題だから」

「じゃ、次の機会にでも奢ってくれ。楽しみにしとく」

「おう」

果たして、この中に静の勘に障ったものがどこにあるというのか。

いつの間にか教室の扉に寄り掛かり明を待っていた静はその時既に不機嫌な様子だった。
朝はいつも通りだったはずなのに。

「黒月と何の話してたんだ?」

「ちょっと授業で分からなかったとこ教えてもらってさ…そのお礼をしたいって」

机の横に掛けていた鞄を手に取り、明は静と一緒に教室を出る。
ぱらぱらと人気の少なくなった廊下を並んで歩き寮へと向かう。

「また一緒にご飯ってのは?」

「あぁ…今日のお昼、久し振りに透と黒月と俺の三人で食堂で食べたんだ」

「…楽しかったか?」

「うん。静は生徒会室で?」

そんな何気無い会話を交わしていた、次の瞬間。

「っ――」

何の前触れも無しに静に腕を掴まれ、いきなり空いていた教室の中へ明は押し込まれた。

「ちょっと静!いきなりなに…」

ドンッと背中を壁に押し付けられ、掴まれた腕は頭の上で固定される。文句を言おうと静を見上げた明はそこにあった苛烈ともいえる鋭すぎる眼差しに言葉を途切れさせ息を飲んだ。

「なぁ…明」

視線が絡んだところで静が口を開く。いつものからかう様な口調ではなくただ冷ややかでそっと鼓膜を震わせる低い声。

いきなりの静の豹変に明は戸惑い、返事を返せずに静を見つめ返す。

「俺、言ったよな?付き合う時に。黒月にばかり頼るなって」

「え……」

そして、唐突に引き出された過去の話に明はきょとんと瞼を瞬かせる。
意味の分かっていないその様子に静はふぅと重たい息を一つ吐くとゆっくり明に顔を近付けた。

「他の男を頼ったらお仕置きする、とも…言ったはずだぜ」

悪さをした子供に言い聞かせるような、ほんのりとした甘さを滲ませながらも厳しい声が明の耳を打つ。

「ぁ…っ、でも、それは…」

「それは?」

覚えてはいたのかカッと顔を赤くした明に、続きを促す静の瞳は微塵も揺らぐ気配をみせない。

「言い訳する気か?」

寄せられた唇が明の耳朶を掠め、囁くように流し込まれた声に明の肩がぴくりと跳ねる。

「っ…だから、俺は…別に…そんなつもりはなくて…」

「どんな?」

「ほ、他の人…頼るとか。…俺には静がいるん…だし」

徐々に俯き加減になって語尾も小さくなっていく。それでも明は懸命に言葉を紡ぐ。

「……」

ぽつぽつと届く声を聞きながら静は明を押さえ付けていた片手を外すと、その手で掛けていた眼鏡を引き抜く。制服のポケットにぞんざいに眼鏡を挿した静はクリアになった視界で俯く明の頭を見つめて言葉を落とした。

「聞こえないな」

「えっ…」

驚いてぱっと顔を上げた明と視線を絡めて静はにこりと甘く表情を崩す。

「聞こえないって言ったんだ。言い訳するなら俺の目を見て言ってみろ」

「…っ…」

「目を反らさずもう一度。俺だけだって言ってみろよ。そうしたら許してやれるかもしれない」

青みがかった不思議な色合いの瞳に見つめられてじわじわと明の頬は更に熱くなる。
すぃっと耳元へ寄せられた唇が急かすように囁く。

「なぁ、俺はお前の何だ?分かってるなら言えるよな?」

甘く微笑んだ口許とは裏腹に向けられた眼差しは真剣で、答えを間違えてはいけないと感じ取った明は羞恥に堪えながらも答えた。

「――こ、恋人…」

答えて、こくりと明の喉が鳴る。

「…俺が好きなのは…静だけ…だから」

ジッと目を反らさず言い切った明に静の目元が淡く緩む。そしてそれを目にした明はほっと気を緩めた。
これで誤解が解けたと安堵したのも束の間、冷ややかな態度は崩されないまま静が言った。

「それなら…」

「……?」

「好きでも、愛してるでも、俺を求める言葉でも何でもいい」

ひっそりと心を絡めとるように低く甘い声音が明の中へ注ぎ込まれる。

「たまにはお前の口から聞かせろよ」

「な…っ〜!」

「俺が満足するまで言えたら今度こそ許してやる。もし…嫌だって言うなら直々に身体に刻み込んでやるけど、お前はどっちがいい?」

言われた意味を理解して明はじたばたと抵抗し始める。壁に押し付けられ頭上でひとくくりにされていた手を動かし、激しく動揺した。

「な、なんでっ!それにさっき許してくれるって…嘘かよ!」

真っ赤な顔でキッと明は静を睨み付ける。
まったくもって怖くない、それどころか静の心を擽るその表情に静は澄ました顔のまま答えた。

「許してやれるかもしれないって言ったんだ俺は。嘘は吐いてない」

「うっ〜…ぅ」

言葉に詰まった明に静は軽く唇を触れ合わせ優しげな声を出す。

「俺が嫌いか?」

「っ…らいじゃない」

「じゃぁ好きか?」

「う…ん」

「好きか?」

誘導するように言葉を繰り返し、熱を持った頬に唇を移動させる。
頬を悪戯に掠める静の唇に明はふるりと身体を震わせるとぽつりと小さな声で言った。

「…す…き」

「ん。愛してる?」

「あ、…愛して…る」

「俺だけを?」

「―っ…ぅん」

「本当に俺だけ?」

「…こんなこと、…静にしか…言わない」

返答が気に入らなければ聞き返されて、ずるずると明の想いが引き摺り出される。

「ならもっと聞かせろよ。俺だけの言葉」

頬を掠めた唇は羞恥に潤んだ明の目元に触れ、流れるように明の耳元へ移動した。

「俺しか見てないって」

言えるだろう?と、甘く流し込まれる声にくらくらと熱が上がり、明は助けを求めるよう静を見つめ返した。

「もう…むり…」

それから何分、何十分経ったのか明には分からない。ただこの間、散々恥ずかしい言葉を言わされ、明はそろそろ本当に泣きそうだった。

「これだけで…可愛いなお前は」

「…っ…ぅ」

「嫌いになったか?」

「…なってない。…好き」

教室に射し込むオレンジ色の陽の光が大人びた静の横顔を照らす。もう無理と泣きそうになりながらも素直に答える明を見つめ、静はようやく明にだけ向ける柔らかい笑みを浮かべた。

「もういい。…許してやる」

「え…」

「正直お前がここまで頑張るとはな。今はむしろ抱いて離したくなくなった」

明の手を拘束していた手を解き、壁に押さえ付けていた身体を腕の中に浚う。
危うく流されかけた明は最後に聞こえてきた台詞に口をぱくぱくとさせた。

「ま、待って。もういいって、許してくれたんだろ?だったら…」

「気持ち的にはな、満足した」

ふわりと腰に回された腕に力が入り、身体が密着する。頬が静の胸にくっつき、お腹の下辺りに下肢が触れる。

「これって…」

触れた熱に気付き、明はピシリとぎこちなく動きを止めた。

「言わせたいのか?俺に。好きな奴にあれだけ囁かれたら誰だってこうなる」

するりと足の間に静の足が割り入れられ、その足がぐっと軽く明のものを刺激する。

「ひぁ…っ…!」

思わず明の口から高い声が漏れる。

「お前もその気になってるじゃねぇか」

「これは…あッ…ぅ…」

ふるふると静の制服を掴んで明は懸命に首を横に振る。込み上げてくる羞恥と快楽に涙を滲ませた明を宥めるように静は明の額に口付けを落とし、上機嫌で歌うように言葉を落とした。

「部屋に帰るか。その口で今度は俺が欲しいって言ってみな」

それを耳にしてぶわわっと顔を真っ赤に染め上げた明はわなわなと唇を震わせると、とうとう堪えきれなくなって叫ぶ。

「そもそも何で俺が許してもらわなきゃなんないんだよ!静が勝手に…!」

「妬かせたのはお前だ」

しかし直ぐさま切り返されて、畳み込むように兆しを見せた熱をさわりとズボンの上からなぞられた。

「こっちの責任はとってやるから、お前は俺を妬かせた責任をとれ」

「―…ッ…、責任って…今…」

「あぁ、今のは…俺以外の男を頼ったお仕置き。妬かせた責任とは別物だ」

赤くなったり青くなったり忙しくなった明へ静は寄せた唇で囁く。

「明…。俺だって不安に思うことはあるんだぜ」

「静…?」

「だから確かめさせろよ」

直に触れ合って、胸の内に微かに残る不安を消したい。
絶対に口には出さない弱さを静は巧妙に隠して笑う。

目の前で浮かべられたいつもと変わらない笑み。

「……」

誰が見ても変わらないいつも通りのその笑みに、あわあわと慌てていた明が落ち着きを取り戻す。

「明?」

「……いい、よ。それで静が安心するなら。俺も…嫌じゃない、から」

言い終わってふぃと真っ赤な顔を反らした明は静の驚いた顔を見ることもなく。静は口の中で呟く。

「ったく、敵わねぇな…」

「…?なんか…言った?」

「いいや。明がのり気で楽しみだ。言ってくれるんだろ?…俺が欲しいって」

クツクツとからかうように鼓膜を揺らした甘い声音に明は静を睨み返す。

「それは絶対言わないからな!」

「嫌でも言わせてやる」

明の腰を抱いていた手を離し、静は明の右手をとる。

「人がせっかく心配してやれば…」

「行くぞ」

繋がれた右手を引かれ明もまた歩き出す。
ぶつぶつと文句を言いながらも離されない手に、静は明の想いを感じて口端に温かな笑みを浮かべた。

その後二人は仲良く寮へと辿り着き、手を繋いだまま同じ部屋へと帰って行った。



end.


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