05
d
もう無理!
俺は羞恥に耐え切れなくなってその部屋を飛び出した。
バァン!と勢い良く開く扉。
そして、ガクリと俺の身体は下へ落ちた。
「えっ!?わぁぁぁぁーーー!!!」
ぽっかりと口を開いた底なしの闇に吸い込まれる…俺は、心の中で助けを求めた。
「兄ちゃん!!」
「おわっ!?何だ、いきなり起きるなよ」
「えっ、に、兄ちゃん?兄ちゃん!」
バクバクとはねる鼓動に、乱れた呼吸。
俺はジワリと涙を滲ませ目の前にいる三番目の兄ちゃんに抱きついた。
「っ!ど、どうしたんだ?怖い夢でも見たか?」
戸惑いながらも抱き締め返してくれる兄ちゃんに俺は小さく頷き返す。
「もう兄ちゃん達に会えなくなるかと思った…」
「何だと?ンなこと俺がさせねぇよ。万一そんなことになっても、絶対俺がお前を迎えにいってやる」
「うん…。そうだよね。ありがと、兄ちゃん」
ぽんぽんと頭を撫でる手と、抱き締められた身体が温かい。
「あれ?そういえば何で兄ちゃんが俺の部屋に?」
「ん?あぁ。部屋のドアが少し開いてて、お前が魘されてんのが見えたから」
「そっか。ありがと兄ちゃん!」
ぎゅっと抱き締め返して兄ちゃんから離れる。
「もう平気か?」
「うん。そうだ、俺出かけるんだった!転入先の学校見に行こうと思ってたんだ」
「一緒に行ってやろうか?」
「いいよ。兄ちゃんだってまだやることがあるだろ。俺、一人でも大丈夫」
部屋を出て行く兄ちゃんと一緒に一階まで降りて、俺は行ってきます!と三人の兄ちゃんに声をかけて新しい街へと一歩足を踏み出した。
next
[top]