02


一方、大学へと戻った拓磨は大学の敷地内に設置されている駐輪場の一つにいた。

「拓磨」

駐輪場の入口脇に停められた赤い車体が目立つ。
そのバイクの傍らに立つ、すらりとした長身の青年。相沢 大和。黒い髪に涼やかと言うよりは冷たい印象を与える鋭い眼差し。仄かに温かみを感じさせる声音が拓磨の名前を呼ぶ。

「こっちは完了した」

それと同時に差し出される紙切れ。
拓磨は紙切れを受け取りながら、紙片にさっと目を通すと背後に控える様に付いて来ていた周防にその紙切れを手渡す。

「日向に伝えておけ。女の迎えは一時間後だ」

「えっ、はい!」

実は誰からも何の説明も受けていない周防は意味が分からないまでも、とりあえず言われた事を実行しておけば間違いはないと、さっそく上司でもある日向に連絡を入れる。
紙片に書かれていたのは駅名とコインロッカーの番号、それからロッカーを開ける為の暗証番号だ。
周防の様子を視界の端で認めつつ、大和が声量を落とした声で囁くように言う。

「向こうが用意する女の裏は取るか?」

投げられた問いに拓磨は大和を真っ直ぐに見返し、短く答えた。

「お前の判断に任せる」

「分かった」

静かに頷き返した大和はバイクのシートに置いていたフルフェイスのヘルメットを被ると、バイクのスタンドを上げてバイクに跨がる。

「……気を付けろよ」

「あぁ。お前も」

片手を上げて返事を返した大和はエンジンをかけて大学を後にする。これからまた授業へと向かう拓磨は何事もなかったかの様に大和とはその場で別れ、五分もしない短いやり取りは誰かに見咎められることも無く終わった。



 

「よりにもよって鴉とは…」

「厄介な事になりやしたね」

組の金を持ち逃げした男が根を上げたのと、男が懇意にしていた女達の中で現在姿を消している女の身元が判明したのはほぼ同時だった。
男の身柄は部下達に任せ、組事務所の入るビルへと戻って来ていた柳原は若頭を務める男と共に悩まし気な溜め息を落とした。

この際、女の身柄は諦めるべきか。しかし、面子を考えるに組の金を持ち逃げした人間を見逃すわけにはいかない。また、万が一、絶対に無事とは思えないが、鴉に逃げ込めばどうにでもなると思われる前例を作るわけにもいかなかった。

「持ち出された金については、どうにかさせる手は色々とありやすが」

男に落とし前を付けさせるのは当然のことである。
二人が今、問題にしているのは鴉という、ただのガキの集まりと一口に侮る事の出来ない組織への対応だった。理由はどうあれ非は完全にこちら側にあり、取引にもならない。

「……逆に女一人で済ませられれば安いものか」

「組長。女の方は諦めるんで?」

「下手に藪を突いて蛇を出すよりはマシだろう」

どこぞの組が起こした、解散寸前まで追い込まれる事になった件を考えれば、二の舞は避けるべきだ。先程の言葉とは真逆になるが、多少の面子はあるが、組の存続をかけてまで動く話ではない。

「はぁ…やはりここは見て見ぬ振りが一番でしょうかね」

柳原の考えを汲んだ若頭が無難な答えでこの件の締め括りの言葉を口にする。

幸いな事に組の金を持ち逃げした男の身柄は確保されており、組の人間が実は男の囲っていたイロが金を持って逃走したのだと口にしなければ、詳しい内情までは分かるまい。それで一応、対外的な面子は保たれる。

暫し考え込んだ二人の間に沈黙が落ちる。
窓の外では陽が傾き出し、そろそろ室内に電気が必要になる時分。
二人の思考を止めるように室外から部屋の扉がノックされた。

「どうした?」

答えたのは若頭で、扉を開けた組員は電話番として事務所に待機させていた、どちらかと言えばまだ経験の浅い若い組員だった。

「はっ、それが…」

年若い組員は組長と若頭を前に大変恐縮した様子で外から掛かってきた電話の内容を告げる。

「唐澤と名乗る男から、中国人系の女を引き渡したいと連絡が入ってまして」

唐澤と名前を聞いた途端、二人の双眸が鋭くなり、若頭がソファから立ち上がった。

「何番だ?」

「一番です」

組長の机の上にあった電話機の受話器を取ると、若頭は保留にされていた番号を押す。
手振りで電話番の退出を促すと、年若い組員は頭を下げてから部屋を出て行った。
再び柳原と二人だけになった室内で、若頭は電話口に向かって口を開く。

「待たせてしまったようで、すまない」

『いいえ、そちらも今はお忙しいでしょうから』

「何でも分かってる口振りだな」

苦笑交じりに返せば、その口調と同じく真面目で冷静な言葉が返される。

『何でもというのは言い過ぎです。私は会長程ではありません』

「氷堂さんか」

電話をしてきた唐澤という男は氷堂組の幹部の一人だ。
氷堂組は同じ葉桜会に所属する組であり、柳原が個人的にも懇意にしているのが氷堂組の頭である氷堂 猛だ。

『それで、うちで預かっている女はいつ頃引き取りに来れそうですか?』

「場所を教えてくれれば今すぐにでも」

『分かりました。場所は…』

机の上に置かれていたメモ用紙を千切り、言われた内容を走り書きする。
それをソファに座る柳原にも見せた後、若頭は電話口で一言告げて柳原と電話を交代した。

「柳原だが」

『これは柳原組長、昨夜振りで御座います』

メモ用紙を片手に、さっそく部下へと携帯電話を使って指示を飛ばす若頭の姿を目に柳原は組長の椅子に腰を下ろして唐澤と会話を続ける。

「二度も世話になるとはな」

『昨夜も申し上げましたが、どうかお気になさらないで下さい』

特に今回の女の件ではと、唐澤は少し引っかかる様な言い回しを使った。

「それは俺が聞いても良い事なのか」

ふと疑問に思い、半ば完全解決を諦めかけていた身として、世話になってしまった身として相手の不利益になるような事は元から尋ねる気のなかった柳原は念の為、正直に聞き返す。

『えぇ、別段会長からは何も言われてません』

「そうか。では、一つだけ」

『何でしょうか』

「どうしてその女を見つけた?」

どこででも、どうやってでも無く、どうしてと聞いて来た柳原に、その無駄の無い鋭い的確な疑問に、さすが柳原組長だと唐澤は敬意を払って質問に答えた。

『うちの会長がとても大切になさっている方のお知り合いが、数日前から妙な女に粉をかけられて迷惑しているとお聞きしまして』

調べたらそちらの関係の人間だと判明しましたので、こちらで勝手に処理するよりは引き渡した方が双方にとって利になるかと。そう考え、僭越ながら私から連絡を差し上げました。

「ほぉ…そりゃうちとしては助かるが」

あの氷堂が大切にしているという人間の話も気になるが。その知り合い程度の奴の事で氷堂が動くのか。気になる点である。ましてや、女が鴉に逃げ込んだと言う情報が正しければ、その知り合いと言う奴は鴉の関係者となるが…。
瞬時に思考を巡らせた柳原の耳に、その思考を断ち切るように重ねて唐澤が口を開く。

『えぇ、本当に。周囲の事にも目を配るぐらい、会長はその方を大事にしておりますので』

「……氷堂にそこまでさせるイロか。一度会ってみたいものだ」

『本人の同意と会長が許せば会える可能性はあると思いますよ』

これ以上の詮索は危ういと、重ねて言われた台詞からそう感じ取った柳原はもう一方の気になった話題に話の矛先を変える。
しかし、イロの件は先程以上にガードが堅く、柳原自身も忙しい身であり、最終的には氷堂に礼を言っておいてくれと伝言を残して柳原は唐澤との電話を切った。

「組長。彼らはどうやって?」

終始近くでやり取りを見ていた若頭が聞く。

「余計な詮索はするな」

それが答えだと、柳原は首を横に振って若頭に返した。

氷堂と鴉の間に何があるのか分からないが、それを繋ぐ何かがあるのは確かだろう。
それは氷堂が大切にしているというイロか、その知り合いか。だが、氷堂に世話になった身として、これ以上の詮索はしない。借りはきちんと返させてもらう。

「女から金を回収に行くぞ」

「はっ」

そうして結局、彼等の手元に戻って来た金は三分の一に減っていた。
足りない分は男と女にそれぞれの身にあった方法で補填させることに決まり、女の口から出た鴉の話は支離滅裂で要領を得ない事から柳原は組員達にこの件は黙殺するよう指示を出した。
組員達も鴉の厄介さは聞き及んでいたので反対する人間も無く、今回の件は金を持ち出した男とそれに加担した男のイロの処分で話は内々に処理されたのだった。



 

『何もないのが逆に不気味で。怪しすぎます』

花菱から受けた報告を思い出し、大和は人も疎らなカフェの店内で、しばし窓の外を眺めて思考していた。

陽はとうに暮れ、この店もあと数時間したら閉まるだろう。

直接、顔を会わせるリスクを避け、氷堂側が用意したという女の写真を配下の者に隠し撮りさせ、裏から花菱に調べさせてみたが。
用意されていた女は二十五歳前後。セミロングの髪にパッチリとした目。可愛い系で、プロポーションもそこそこ良い。水商売風の女でも無く、前職は保育士だという。

「…違うな。あの人は搦手を使う必要が無い」

これまでも氷堂が鴉に介入する素振りはまったく無かった。だとすると、女を用意したのは氷堂では無く、周りの人間達の方だ。
その事実に不快さを覚えながら、大和はこの事を拓磨に伝えておくべきかと思案する。

「………使える駒なら見逃すか」

幸運な事に用意された女の行先はそれほど悪くはないチームであった。

西の一角を守るチーム《如月》
諸事情から新たなる地位を与えられた如月は鴉に従順であり、今の所下手な問題は起こしていない。如月の総長は明るい茶髪に童顔なのを気にしているらしいが、喧嘩の腕は強く、仲間内からの信頼も厚い。

女を褒賞として引き渡したら、彼等は異性の扱いに慣れていないのか、女を前にわたわたと面白いぐらいに慌てていたとは花菱に送り込ませていた部下からの談だ。
これが古参のチームであれば女の扱いはもっと変わっていただろうが、その辺の事に感知するつもりは毛頭ない。
もし褒賞として与えた女が玩具代わりにされていようと、鴉という組織を守っていく上で必要なら割り切る覚悟は当に出来ていた。

「しばらくは様子見だな」

鴉と拓磨の害にならぬと判断できたなら使える隠し駒の一つとして放置しておくのも手だ。
万が一、拓磨の為に使う事があるかも知れない。
現状、鴉には拓磨以外で氷堂とを繋ぐ連絡手段がない。
その手を借りざる負えなくなった時の、そんな事態には絶対にさせないが、拓磨に何かあった時の為の保険と考えれば鴉としてもあの女の存在は呑み込める。

自身の中でそう結論を出した大和は店内に目を戻すと、問題なくこちらの話は片付いたと拓磨に連絡を入れた。
それから飲みかけで置いていたカップを手に取った。





全ては恙無く終わり、いつもと変わらぬ様子で帰宅した猛を拓磨は玄関で出迎えていた。

「珍しいな。お前が玄関まで出て来るとは」

何かあったかと訊ねてくる視線に、拓磨は別にと猛の顔を見るなり踵を返す。

「時間をもて余してたから、…たまには良いだろ」

ほっと小さく息を吐きながら呟かれた台詞に、猛は玄関を上がりながら、その背中を眺めて微かに口許を緩める。

「そう心配せずとも相手は顔見知りだ。恩を売っても損はない」

「……何を」

「昼間の件だ」

顔だけで振り向いた拓磨に、猛はちらりと視線を投げて言葉を続ける。

「外部の人間に詳細まで明かす必要はねぇと思って言わなかったが、お前が話を聞かせていた相手は…相沢か」

「…気付いてたのか」

猛を見る拓磨の瞳が微かに見開かれる。
写真を出し入れした際にリュックの中で操作されていた携帯電話。
拓磨が大学に戻るまでの短時間で話が動いていたのはこの為だ。

「お前がわざわざ事務所の方に来るぐらいだ。時間が惜しけりゃ、二度手間も避けるだろう」

例えそれが電話一本で済む話でも。
まぁ、それとは別に拓磨の友人でもある相沢には相沢なりの思惑もありそうだが。
これを機に氷堂組と鴉総長としての拓磨との関わり合い方を再確認しておきたかった等。その辺りは直接本人に聞かねば分からぬことばかりだが。方向性はあながち外れてはいないだろう。

「連絡が早いと日向が驚いていた」

「さっさと片付けたかったからな」

「そうか」

拓磨の隣に並んだ猛はゆるりと双眸を細めると拓磨の腰に腕を回し、顔を近付けて囁く様に告げる。

「それほど腹が立ったか?」

拓磨にとっての平凡で幸せな日常。
それは恋人でもある氷堂組の会長、氷堂 猛と拓磨が受け継いだ暴走族グループ、鴉の存在無くしては成り立たない。どちらも拓磨が拓磨らしくあれる場所であり、拓磨が大切にしているものだ。

それをあの女は身の程知らずにも、自分達の私欲の為に土足で踏み込んだ。その上、踏みにじろうとさえしたのだ。

「俺がその場に立ち会ってれば、身元なんか調べさせる前に女の存在そのものを無かった事にしてたかもしれない」

そんなギリギリのライン手前で踏み留まれたのは一重に大和の配慮によるものだ。
拓磨が実際にその女と顔を合わせる事は無かった。手渡された写真で顔を見たぐらいだ。

「お前が望むなら、今からでも消してやるぜ」

事情が変わったと言えば、柳原は女を手放すだろう。もとから守る価値もない女だ。

猛の魅力的な誘いに心惹かれつつも拓磨は首を横に振る。

「いい。もう終わった事だ」

普段と変わらない様子で帰って来た猛に、拓磨は腰に回された猛の腕を掴むと、離せと言って引き剥がす。

「そんなことより、俺はこれから風呂に行くんだ」

「ほぅ…それは誘ってるのか?」

「ーー好きにとればいい」

猛から顔を背けて、拓磨は廊下を歩き出す。
珍しいこと続きの拓磨の様子に猛は言葉が足りなかったかと、僅かに揺れる拓磨の心情を察してその後をゆっくりと歩き出した。

 



吐息ともつかぬ掠れた声が落ちる。
しっとりと身体から抜けきらぬ甘やかで熱い熱に意識が浮つく。
正面から立ち向かうには捨てきれない些細な羞恥心に、背中から包み込むように抱き締めて来る力強い腕。触れあった肌からは生の鼓動と体温が伝わってくる。

「っ、たける…」

「どうした?」

悪戯に耳を食まれて、抗議すれば低く笑う声が直接耳の中へと流し込まれる。

「そこで喋るな」

僅かな抵抗とばかりに拓磨は目の前の波打つシーツを握りしめる。

「お前がこっちを向けばいい」

バスルームから布団の上へと移動して、拓磨はそれきり猛に背中を向けていた。

猛の体温を感じて、心の片隅に残っていた不安がさらりと崩れていくのが分かった。
鴉が手放した女の事で猛に迷惑が掛かったのではと、全てを終えた後で頭を擡げてきた私情が、今の拓磨を突き動かしていた。
だが、そんな些事など気にする事でもないといつも通りに拓磨を翻弄する熱が、不安定に揺れる心を捉えて言う。

「顔を見せろ、拓磨」

心が安心しきった所で冷静さを取り戻した思考が停止する。

「…嫌だ」

己は自分の大切にしているものに何かが起こると、自分では冷静に対処していたつもりでも本当の意味では冷静ではいられなかったらしい。それが、この醜態…。

自らの行動に羞恥で頭を抱えつつも、猛に抱かれる安心感に心が満たされていく。

「いまさら照れてるのか?」

「…アンタのせいだ。全部」

この男の隣にいる心地良さを覚えてしまったから。この男の些細な言動に心が揺れる。
昼間、自ら話を持ち込んだとはいえ、あれは鴉の総長としての判断であり、拓磨個人のことではない。そう屁理屈を捏ねて、自分の事を棚に上げて、僅かでも拓磨に不安を抱かせた猛のせいにして自分の行動を肯定する。

「俺のせいか。そうだな」

「え?」

「碌な説明もせず、先に私情を挟んだのは俺の方か」

拓磨の身体を包むように背中から回されていた猛の腕が、シーツを掴む拓磨の腕に重ねられる。

「顔見知りの組とは言え、お前の顔を同業者に晒すのが惜しくなった」

「…っだから、女の引き取りを提案したとでも?」

自分の組の話でもなかったのに。
本当にそれだけで?
疑いの籠った声に猛は堂々と答える。

「あぁ。女自体はどうとでも出来た。俺が動かせないのはお前だけだ」

それならば、お前と女の関係を断ち切った方が早い。同業者から鴉を遠ざけたのは猛の方だ。
組の話ならば猛の方でどうとでも出来た。

「信じらんねぇ…」

俺が今回の件で氷堂組に迷惑が掛かったんじゃないかと、猛の身を心配していれば。

「まるっきり私情じゃねぇか」

もそもそと猛の腕の中で寝がえりを打ち、拓磨はあまやかな熱と羞恥で濡れたままの赤い目元を晒す。呆れたように吐息を吐いて猛を見つめ返せば、その目元へ唇が寄せられた。

「何か不都合でもあったか」

「…ねぇけど」

じわじわと唇で触れられた目元を中心に微熱に侵されるように熱い熱が身体の中へと広がっていく。
私情でしかないと断言されて、この男に自分はどれだけ愛されているのか、守られているのかと心が騒ぐ。
この男に愛されたいと告げたのは自分だが、未だに正しいその受け止め方が分からなくて戸惑う。

「それならこの話はもう良いだろう」

「たけ…っ」

目元から移動してきた唇に口を塞がれ、もう黙れと熱が揺らめく深い漆黒の双眸に見つめられる。ぞくりとまだ身体の奥で燻っていた熱を呼び起こされ、背中へと滑らされた手が背骨を辿り、臀部へと…その奥に密やかに存在する窄まりへと落ちていく。

「っ…、あ……」

バスルームで一度綺麗に流したとはいえ、そこはまだ熱く熱を持ち、猛の指先を歓迎するように呑み込む。

「お前からの誘いだ。もう少し付き合え」

低く笑う様に零された猛の言葉に、侵入してくる男らしく長い指先に内壁が応える様に蠢く。拓磨は頬を紅潮させながら、仕方なさげに瞼を伏せると「自分の発言には責任を取る」と小さく呟く様に溢した。

「でも、…少しは手加減してくれ。明日も、大学に行くんだ」

「お前が煽らなければな」

上機嫌で笑って再び口付けてきた猛に拓磨は少しばかり明日の心配をしたが、なるようにしかならないだろうと、嫌ではない気持ちを誤魔化しつつ猛の首に自ら腕を絡めた。

二人の夜はまだ始まったばかりだ。

 

そうして…夜が明ければ、また明日になれば。いつもと変わらぬ、拓磨が望んだ平凡で幸せな一日が始まる。
隣には猛がいて、側には気の置けない友人。鴉というチームがあり。
拓磨はこれからも自分が大切だと思う人達と共に時を刻み続ける。

 

End.



2019.8.1

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