愛の比重


登場人物
ワイルド系不良(ちょっとヤンデレ気味?)
城之崎 久充 kinosaki hisamitu
男前
綾瀬 耕史 ayase koushi



また明日なと言って、鋭いその双眸を名残惜しげに細めた恋人の綺麗に染められた金髪をひと撫ですれば、言葉とは裏腹に降ってくる唇。それをしょうがねぇ奴と笑って甘受し、別れた帰り道。

「綾瀬 耕史だな?城之崎のダチの」

そう、土手の上で、薄暗くなった周囲に溶け込んでいたかのようにいきなりフードを被った見知らぬ男達に前後を囲まれた。
城之崎というのは確かにダチの名前ではあるが、今は恋人でもある男の名だ。

「…だったらなんだ。お前達も久充に蹴散らされた口か」

城之崎 久充という男は良い意味でも悪い意味でも目立つ。少し前までは茶髪だった髪を金色に染め上げ、切れ長の鋭い双眸はそのままに、すぅっと通った鼻筋。弧を描いた唇からは耳に残るテノールの声。
どこか野性味溢れる整った容姿は元より、その長身に加え、久充は非常に男らしいがっしりとした体格をしていた。
また、その身から繰り出される拳はしなやかで耕史はいつも久充の喧嘩っぷりには見惚れる前に感嘆の吐息を漏らしていた。

そんな久充は当然の如く蹴散らした相手から恨みを買うことがある。まぁ、その前に久充に喧嘩を売ってくる相手は大抵、久充に彼女を取られたとか勝手に被害妄想を広げてやってくる奴か、その敵討ちだとか。元から久充の事を気に入らないと思っている連中だ。
そんな彼らに耕史が言えることは一つ。
女が大事なら久充と遭遇させないことだ。久充はただそこにいるだけで、その場の空気を支配してしまうほどの存在感がある。

「それでアイツには敵わねぇから代わりに俺をボコろうって?」

皮肉げに笑った耕史に対し男達の雰囲気が一瞬で剣呑なものになる。

「分かってんじゃねぇか。はっ、城之崎のダチだったことを恨むんだな」

その男の言葉を皮切りに男達が耕史へと殴りかかってきた。
それは城之崎と付き合っていようが、付き合っていまいが、耕史の日常の中でたまーにある出来事であった。

耕史は殴りかかってきた男の拳をかわすと、背後から振り下ろされた角材を避ける為に土手の上を器用に転がる。そうやってとりあえず男達の輪の中から抜け出すと、手近にいた男の腹に拳をおみまいして沈める。素早く立ち上がった耕史はそれから続けて二人の男を倒し、土手の上に転がった角材を蹴りつけて土手の下へと落とした。

「へぇ、さすが城之崎のダチなだけあるな。ただじゃやれねぇか」

「そう思うなら帰ってくれ。俺も家に帰りたいんだ」

喧嘩の腕前は久充には敵わないが、自分の身ぐらいは守れると…そう、角材を蹴り飛ばした土手の下からいきなり足を掴まれるまでは思っていた。

「なっ…!」

「誰が俺達だけだって言った?」

足元に気をとられた瞬間、にやりと笑った男に距離を詰められ、左頬あたりをおもいきり殴られる。その勢いもあってか、不覚にも耕史は土手の上から斜面を転げ落ちた。
暗闇の迫る中、ばしゃんと水音が上がり、幸いなことに浅瀬ではあったが、冷たい水の中で両手を付くことになった。

「〜っ、てぇ……野郎…!」

「ははっ、ざまぁねぇな。城之崎に伝えろ。でかい顔すんのもいい加減にしねぇと、次はこんなもんじゃすまさねぇってな」

睨み付けた土手の上でフードを被った男が嗤う。
どうやら今日は警告に来ただけだった様で、男はそれだけ言うと負傷した仲間を連れて引き上げて行った。

「…やり逃げかよ」

ポツリと落とした言葉に殴られた左頬がずきりと痛み、水に浸かった身体が冷たかった。



「まずい…」

あれから真っ直ぐ一人暮らしをしているアパートへ帰り、左頬は直ぐに冷やして。お風呂を沸かして身体は温めたのだが。

翌日、熱が出た。心なしか気持ち悪くもあり、ベッドから起き上がるだけで気力を使った。また、それだけにとどまらず、左頬も熱を持ったように熱くて、ずきずきとした痛みが引かない。手で触れただけの感じだが、左頬は完全に腫れているようだった。

とりあえず、久充にだけは今日は行けなくなったと連絡を入れようと、ベッドサイドに置いていたスマホを手に取り、操作しようとして思い出す。
昨夜、川に浸かった時に尻ポケットに入れていたスマホも同時に水没していたのだ。

「はぁ…」

もう溜め息しか出なかった。
これはもう早々にショップにも行かなければならない。
耕史は更に重だるくなった頭に、もう少しだけ休んでから動こうとベッドに身体を横たえた。
幸いなことに、久充との約束に時間は指定されていない。何とか今日中に連絡を入れればいいだろうと。
そう頭の片隅で考えながら耕史は微睡みの中に身を委ねた。

それにこんな顔では当分久充には会えない…。
アイツは意外と心配性な所があるから。


そう…耕史が軽く考えていた事態は思わぬ偶然の重なりにより、思わぬ事態へと発展する事となるのだが、この時の耕史はまだ何も知らなかった。





また明日なと言った恋人を、離しがたくて口付けた。その後ろ姿が見えなくなるまで見送ったあの日。
城之崎 久充は恋人である綾瀬 耕史の言葉を信じて大人しく待っていた。彼が自分の自宅へとやって来るのを。

「耕史。…どうして来ねぇ」

しかし、その翌日、夜まで待っても耕史は現れず。何の連絡もない。
試しに久充から連絡を入れてみたが、それにも何の反応も返らず、久充は眉をしかめた。

「何かあったか?」

更に翌日、久充はそう考えて耕史が一人暮らしをしているアパートまで足を運んだ。
恋人としても、友人としても何度も来たことのある場所で、鍵の隠し場所も本人が留守の時に上がっても良いと言う耕史に言われて教えられていた。

「いねぇのか…?」

インターフォンを押しても出て来ない住人に、久充は隠し場所から鍵を見つけ出すとその鍵を使って玄関の扉を開けた。

「邪魔するぞ、耕史」

一応声をかけてから玄関を上がる。
耕史の部屋は一般的なアパートと同じ間取りで玄関から直ぐ左手にキッチンがあり、右手にトイレや洗面所、風呂場といった水回り。真っ直ぐ進んでドアを開ければ八畳の洋室にバルコニー。

基本、耕史がリビング兼寝室にしている洋室のドアを開けた。
しかし、そこにも耕史の姿は無い。

「何処に行ったんだ」

バルコニーに続く大きめの窓にはカーテンが引かれ、薄型のテレビの前に置かれた折り畳み式のテーブルの上にはからからに乾いたタオルが転がっている。壁に押し付ける様に置かれたベッドは、掛け布団がぐしゃぐしゃに乱れたまま。耕史が普段、部屋着として重宝しているジャージが絡まっていた。

久充は念の為、トイレや洗面所、風呂場も覗くが。洗濯機の中に二日前に耕史が着ていた服がそのまま入っていて、浴槽には溜められた水だけが残っていた。

「耕史…」

急に人の気配の無い部屋だと認識して、すっと心に冷たい風が吹く。
久充はこの部屋にある唯一のウォークインクローゼットを開けて、中に仕舞われていた服を確認した。
すると服以外にも鞄が一つ無くなっている事に気付く。

「本当、……何処に行ったんだ耕史」

俺との約束を破って。
連絡も無い所か、電話も通じない。
そう呟いた久充の瞳が仄暗い光を宿して鋭く細められた。

「…とりあえず、待つか」







「ぅん…?あ…?」

ぼんやりと耕史が目を覚ました時には、そこは見覚えのあり過ぎる部屋であった。
しかし、ここ暫くは御無沙汰していた部屋でもある。
何が、どうなってと…額に貼られた冷えピタらしきシートに触れて記憶を掘り返す。

「確か、熱が出て。それで…」

自分の記憶を確かめる様に口にしていれば、部屋にある唯一のドアノブが回される音がした。次いで、柔らかな声が投げられる。

「あ、やっと目が覚めた?」

「姉貴…?」

「姉貴?じゃないわよ、もう!お母さんに頼まれて野菜をあんたン家に届けに行ったら、あんたベッドでダウンしてるんだから!」

熱があるのに常備薬一つ見当たらないし、頬は腫れてるし。これは病院行きだって言っても、病院よりか先に携帯ショップに行くとか馬鹿なこと言うし。

「熱出して馬鹿なこと言うアンタを何とか騙してタクシーに押し込んだ私に感謝しなさいよ」

「あー、俺…そんなこと言ってた?記憶に無いんだけど」

「言ってたわよ。病院で点滴してもらって、熱は下がったようだけど。治るまではうちに居なさい」

その頬も、喧嘩か何かでやったんでしょ。
しばらく実家で大人しくしてなさいと、姉貴は新しい冷えピタを置くと、耕史の部屋から出て行った。
よく見ればベッドの下に置かれている鞄にも見覚えがあり、実家には無い着替えを自分で詰めたか、姉貴が適当に詰めたかして持ってきたのだろう。

そして、テーブルの上にはご丁寧にも水没して使えなくなったスマホ。ミネラルウォーターのペットボトル一本に薬の袋。湿布薬まで置いてあった。

「やっちまったな…」

一人暮らしをしていて初めての失態だ。
耕史は見慣れ実家の天井を見上げ、息を吐く。

「久充…怒ってるか。それとも心配してるか」

一人暮らしのアパートの場所は教えてあるが、実家の場所までは伝えていなかった気がする。
これは早く体調を治して、携帯ショップに行くか、久充の家へ行かなければ。





待てどもアパートに帰って来ない耕史に、久充は重い腰を上げる。

「嘘だったのか、お前の言葉は」

耕史と口内で呟いて、手にしていたジャージをラグの上に落とす。

「俺は最初に言ったはずだ。逃がさねぇぞ、耕史」

鈍い光を宿した飢えた獣の双眸が怪しくぎらりと光った。







実家へと身を寄せて、体調も漸く回復し、頬の腫れも引いた耕史は何日振りかに外へと出掛けた。
やはりショップより先に恋人の家へと急ごうと足早に近所の公園の中を突っ切る。

「まず謝んねぇと…」

恋人の事を考え過ぎて周囲への注意が散漫になっていたせいか、不意に通り過ぎた繁みの中から伸びてきた手に気付かなかった。

「っなーー!」

腕を強く掴まれ、繁みの中へと引きずり込まれる。抵抗しようとした所で発せられた声に動きを止めた。

「耕史」

「っ久充か…?脅かすなよ」

後ろから抱き締められる様に強く身体を抱かれ、それが自分の知る体温だと分かって耕史はほっと安堵の息を吐く。

「あー…その、久充。悪かったな」

身体に強く巻き付いた腕を叩きながら耕史は謝罪の言葉を口にする。だが、久充は何も答えず、耕史と再び名前を呼ぶと何の前触れもなく無防備に晒されていた耕史のうなじに噛み付いてきた。

「いっ…!なっ、久充!」

突然の久充の強行に痛みを感じて、咎めるように声を上げれば、熱い舌がうなじを這い上がって、耳をなぶられる。

「絶対に逃がさねぇ」

「んっ、ちょっ、待て!落ち着け、俺は…」

「俺にはお前だけなのに。言い訳なんか聞きたくねぇ」

するりとシャツの隙間から忍び込んだ右手が、勝手知ったる我がものと胸の飾りを摘まみ、ぐりぐりと強く押し潰すように動く。

「ン…っ、久充!ほんと、待てって!」

「いいのか?そんなに声を上げると聞こえるぞ」

言いながらもう片方の手が、ズボンの中に挿し込まれる。
下着の上からやわやわと中心を握られて、久充に知り尽くされている弱点を攻められて足がぶるぶると震えた。

「っ、ぁン…ぅ…久充、なんで…」

久充の指摘の後に耳に入って来た賑やかな子供の声に、自分が今いる場所を思い出して咄嗟に自分の両手で口を塞ぐ。
後ろから抱き締められているせいで、久充の顔が見えない。何を考えているのか。

「ぅン、はっ…ぁ…、やめっ…ぁ、久充っ」

言葉を発しようにも、久充の手が悪戯に胸の飾りを引っ掻き。じわりと先走りが滲んできた下着の中へと直に指が入り込んでくる。直接中心を握られ、緩く反応を見せていたそれに刺激が与えられる。意味も分からず一方的に性急に扱われる。

「ま…っ、あッ…ン…ふっ…」

次第ににちゃにちゃと湿った水音と独特の匂いが鼻に付くようになり、腰ががくがくと震え出す。
身を捩って逃げようにも、背後から回された久充の腕がそれを許さない。
逃れられない恋人の手に、吐く息が次第に荒く短くなっていく。

「あぁ…っ、も…やめっ…い…くっ…ぅッ!」

トップスピードで引き摺り上げられた昂りに、成す統べもなく下着の中で吐精してしまう。

「……何で、逃げる?俺を好きだって言ったよな?だったら…」

「は…っ、ぁ…ン、ひさ…みつ…?」

顔は見えないが、自分よりも苦しそうに吐き出された台詞に身を捩っていた動きが止まる。

「何で居なくなった。俺を置いて…」

ぐっと唸るように深みを増した声に、知らず久充の事を不安にさせていた事に気付く。
久充は怒ると心配を通り越して、不安になったのだ。
俺の事情はどうあれ、久充からしたら、また明日と約束した俺が突然何の連絡も無く姿を消した様に見えたのだろう。

「許さねぇ。もう二度と逃げる気が起きねぇように…」

「ぅあっ!」

下着の中で吐き出したものを掌で受け止めていた久充はその指を中心の更に奥に隠されている秘孔へと潜らせる。その感覚に自然と身体が強張る。しかし、久充の暴挙の理由が分かった耕史は抵抗する事を止めた。

「うっ…久充、悪かった」

俺は逃げない。何処にも行かないと、呻きそうになる声を右手で抑えつつ、未だ胸を這う久充の右手に左手を重ねる。ぴくりと僅かに反応した右手に、俺は重ねて言った。

「不安にさせて悪かった。今なら何をされても受け止めるから、せめて…お前の顔を見せてくれ」

それほどお前が不安になるとは思わなかったのだ。まだ友人でいた頃の感覚が抜けきれていなかった、これでは恋人として失格だ。

「耕史…」

「ん…」

「お前は約束を破った。家にもいねぇし、連絡もつかねぇ」

今度は成り立った会話に安堵して頷く。

「だから捜した。捜して、もう何処にも行かねぇように閉じ込めて」

「そんな事しなくても俺はお前から絶対逃げない。俺はお前が好きだから。だから、抱くならちゃんと俺の顔を見て抱いてくれ」

「耕史…」

すっと秘孔から抜かれた指先に、後ろから抱き締めていた腕の力が緩んだ。
その隙に身体を反転をさせて、耕史は久充と数日振りに顔を合わせた。

綺麗な金髪に、相変わらず端整な顔立ち。
鋭い双眸が迷子の子供の様に不安定に揺れ、更にその奥に矛盾した獰猛な獣の本性が今にも耕史の喉笛に噛みつかんとばかりにちらついている。

「久充…場所を移そう」





とりあえず、手近にあった公園の中にある男子トイレの個室に身を滑り込ませた耕史は現在便座の蓋を閉めてその上に座った久充からの攻めに耐えていた。

「はっ…ぁ…久充っ…!」

何をされても受け止めてやると言った手前、久充から上に乗れと言われて、耕史は自らその昂りに腰を落としていた。
がつがつと容赦なく突き上げてくる下からの攻めに、身体を揺さぶれ、久充の両肩に置いていた指に力が籠る。

「あぁっ…ひさみ…っ、ふか…ぃ…ッ…」

「はっ…ぁ、気持ち良いか…耕史?気持ち良いよな。こんなに溢して」

うっそりと嗤った久充が瞳を細め、二人の腹の間でとぷとぷと蜜を溢す芯をにちゃにちゃと乱暴に上下に擦る。

「ン、んんっ…ぁ…うッ…」

「あ…締まった。…感じたか?でも、仕置きはまだこれからだ」

そう言った久充の手が、涙を溢す芯の入口をきつく握り締めてくる。

「い…っ、ぁ…なに…?まさか…」

ざぁと血の気が引くのと同時に、熱を放射する出口を塞き止められたまま、ぐんっと強く下からの突き上げを再開されて目を見開く。

「ンぁっ…ぁ…う…は…」

内壁のイイところを狙って擦られて、上擦った声が口をついて出る。
久充の肩に置いた両腕が震え、胎内で脈打った灼熱の拍動を感じてはくりと悩ましげな息が漏れる。

「次はお前が待つ番だ。待って、待って、俺を求めろ。俺なしじゃ駄目だって…」

言えと、俺が味わった苦痛を感じろと、久充は容赦なく腰を動かした。
ガタガタと便座の蓋が軋むような音を立てる。

「ぁン、久充っ…ぅ…」

みっちりと秘孔に収まっていた熱塊がこれ以上無い奥を穿ち、その衝撃で腰が浮く。だが、逃れようにも自然と落ちる自重で再び串刺しにされ、身を震わせて久充に凭れる様に身体を折る。

「…ぃ…あっ…ン……だめっ…だ」

さんざん繰り返される抽挿に腰が砕けたように痺れ、頂へと昇り詰めようとした熱が久充の指に塞き止められて体内を逆流してくる。
身体が燃えるように熱くなり、放出出来ないに熱に身を苛まれる。呼吸は荒くなり、中を突かれる度に身体をびくびくと震わせて甘い声を上げる。

「ひさみつ…ぅ…ぁン、も…くるし…」

「あぁ…お前の中が良すぎて俺ももうイキそうだ」

はぁっと熱い息を吐いた久充が不意に耕史の胸に舌を寄せ、ぷっくりと赤く主張していた果実を舐める様に舌で転がす。

「ンぁっ、久充っ…そこは…」

「好きだよな?弄ってやれなくて悪かった」

新たに与えられた刺激に無意識に秘孔が締まる。

「ばっ、ちがっ…ぅン、はっ…ァ…あぁ…!」

そこへ僅かに身を引いていた灼熱の塊がずぶりと深くグランドインして全てをぶちまける。
びくびくっと断続的に震えて熱い体液を胎内に撒き散らしたそれに、耕史のものも限界を迎えて熱を吐き出せずにイく。

「ひっ…ぁ、ぁあっーー!」

パンパンに膨らんだそれから蜜が放たれる事はなく、がくがくと腰だけがイッたように前後に震える。

「あぁっ、そん…な…」

その事実に目を見開いた耕史を久充は愛しげに見つめる。

「ちゃんと待てが出来たな」

「ひ、久充…俺…」

「ん。ちゃんと分かってる」

もう一回と、何も分かっていない久充はたらたらと秘孔から落ちる自分で放った体液を使い、再び律動を再開させた。

「わ、分かってな…っ、ぁン…ぁ…あ、なに…」

妙なイキかたをさせられたせいか、胎内をぐるぐると回る逃げ場の無い快楽に久充がもたらすちょっとした振動に感じてしまう。
常にイッている状態が続いているような感じが逆に辛い。

「ぁあ…ばか…、久充っ…」

「耕史、好きだ。好きなんだ」

この男はまったく何を見て、何を言っているのか。

耕史は強気に出たと思ったら、好きだと言って気弱そうに愛しそうに眉を寄せて胸に頬を寄せてきた久充に俺も大概馬鹿だけどと思って言葉を返す。

「はっ…ぁあ、俺も久充が好きだ。…だからっ、もうお前の手でいかせてくれ」

感じすぎて辛い。苦しい。

「久充、…頼む」

お前しかいないんだと、身を屈めて久充の額に懇願するように唇を落とした。





公園のトイレで、不覚にも何回か致した耕史は腰が立たずに久充に腰を支えられ、肩を借りて一度実家に戻る事にした。
その道すがら、耕史は久充の誤解を解くようにこれまでの経緯を説明していた。

「今日はもう動けないから、明日携帯ショップ行ってくる」

「じゃぁ俺は明日、お前を殴った奴を潰しに行ってくる」

携帯ショップにスマホを替えに行ってくるのと同じ調子で言われた台詞に、耕史は御愁傷様だと心の中だけで呟く。

「耕史」

「ん?」

「俺はもうお前と別れたくない」

「うん?俺にも別れるつもりはないけど」

今度はいきなり何の話だと首を傾げれば、久充は耕史の返事に満足したように獰猛な笑みを溢した。

「それなら話は早い。今日から俺の家がお前の家だ」

「え……まぁ、いいけど」

荷物運ぶの手伝えよと、耕史は交際に関しての別離の話だと思って答えたことを黙って頷いた。
久充が喜ぶならそれで良いか。



END.



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