間
真っ先に窓を開け駆け出した生徒が走りながら背後を振り返り、頬を引き吊らせる。
「げっ!山口の奴、追い掛けてきてんじゃねぇか!」
それを聞き、続いて窓から逃げ出した生徒もちらりと顔だけで自分の後ろを振り返る。そこには確かに、自分達とは全く違う黒髪に制服をきっちり着こんだ生徒が、二人を追い掛けて来ていた。
「しかもアイツ、足速くねぇか!?」
「たしかっ…風紀、入る前は…陸上やって…たっ…て!」
走りながらの会話は途切れ途切れになる。中庭を突っ切り、校舎の昇降口に向かう。
「おいっ、どこ…向かって!?門は!?」
「この時間、門には守衛がいるんだよ!抜け出せねぇ!」
前を行く生徒からの返事に、後ろを走っていた生徒は段々と詰まってきた自分と風紀の距離に、前へ向けて声を振り絞る。
「おいっ、ふたてに…分かれんぞっ…!」
そう言いながら自分は昇降口の手前で脇道に反れ、植え込みを跨いで、校舎の裏側へと回る。おい、待て、そっちは!と仲間からの声が聞こえてきたが無視をして逃げれる所まで走った。
そうして、
「お前の良いところは仲間を大事にする所だな」
校舎裏、逃げ道のない壁を背中に、息一つ切らせず涼しい顔をした風紀委員長に捕まった。
[ 40 ][*prev] [next#]
[top]