夢も現も甘く(工藤×廉)
side 工藤
すっぽりと大人しく腕の中に納まったぬくもりに表情が緩む。
艶やかな黒髪に唇を寄せれば、腕の中にある身体がぴくりと反応した。
「…廉」
甘く名前を囁けばじわりと赤く染まっていく耳朶。擽ったそうに身じろいだ廉に笑み溢して、耳元に寄せた唇で柔らかい耳朶やんわりと甘く噛んだ。
「んっ…ゃ…工藤…」
嫌と言いながらも廉は腕の中から決して逃げようとはしない。ただ恥ずかしそうにうろうろと視線をさ迷わせて、最後にはお腹へと回していた俺の腕をぎゅっと掴んだ。
「あんま可愛いことするなよ廉」
「かわ…っ俺は別に可愛くなんて…」
徐々に小さくなっていく語尾に、ほんの少し抱き締めた腕に力を入れる。
仄かに熱を宿した茶色の瞳を細め、愛しげに口にした言葉で廉の鼓膜を揺らした。
「ただでさえ可愛いんだ。あんまり煽るようなことするな。…我慢出来なくなるだろ」
「なっ……」
大袈裟なほど肩を跳ねさせ反応を見せた廉に苦笑を浮かべ腰に回していた腕を解く。
唐突に解かれた腕に廉は顔を赤く染めたまま狼狽えた。
動揺しながらも凛とした眼差しでなんでと訊いてくる廉の黒髪をくしゃりと優しく撫で、隣に座らせて言う。
「優しくしてやりたいんだ」
「――っ」
「だから焦らなくて良い。お前のペースで。俺が合わせるから」
「でも…」
何か言いたげに眉を寄せた廉の言葉を、少し狡いかと思いながらも唇を重ねて奪う。
「ぁ…っ…」
「今はお前が俺を好きだって言ってくれただけで十分」
「…工藤」
頭を撫でていた手を滑らせ廉の肩を抱く。
引き寄せればちょっとだけ廉からも身を寄せてきて、仄かに宿っていた熱は緩やかに鎮まっていく。
「今日は外に出たくねぇな。このまま家の中でデートするか?」
「…ん」
訊けば小さく返された返事に俺は満足げに口許を緩めた。
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