02
工藤は駆け寄ってきた廉の腕を掴み、腕の中に閉じ込めた。
「廉」
「ちょ、離せよっ///」
こんな公衆の面前で、恥ずかしい///
廉は顔を真っ赤にして工藤から離れようと両手で胸を押し返す。
だが、びくともしなかった。
「待ってる間変な奴に絡まれなかったか?」
「…っ、今絡まれてる///」
「そうか」
工藤はさらりと廉の言葉を流し、腕の中から廉を解放するとその手をとって歩き始める。
「さて、行くか」
へぇ、そういうことか。
青年は二人がいる方向を見ながら心の中で呟いた。
少年は気付いてなかったみたいだけど、待ち人の方はしっかり周りを牽制してるな。
その微笑ましい光景を見ていると、不意にぐっと右肩を掴まれた。
俺は振り向かず口を開く。
「遅い」
「これでも早い方だ。お前のために抜け出してきたんだぜ」
遅れて来たくせに偉そうに言う京介に圭志は溜め息を吐いた。
コイツはこういう奴だ。
「サボらず仕事してりゃ休みに捕まったりしねぇ」
「はっ、一緒にサボってる奴が今更何言ってやがる」
京介は肩に置いた手を離すと、圭志の正面にまわり、するりとその手を圭志の頬に滑らせ顎に添えた。
圭志はその手を掴み、止めさせるとちょっと待て、と制止の声を上げる。
「あ?」
不満そうに眉を寄せた京介の肩越しに、少年がこちらを振り返ったのが視界に入ったからだ。
少年は俺と京介を見ると、赤かった顔を更に赤く染め視線を反らして軽くぺこっとお辞儀をして待ち人と共に人混みの中に消えて行った。
あれじゃ相当苦労すんだろうな…。
少年の初初しい姿に笑みを溢せば、目の前にいる京介が怪訝な表情を浮かべた。
「おい、圭志。俺がいんのにどこ見てんだ」
その笑みを浮かべたまま圭志は京介に視線を戻し、掴んでいた京介の手を離す。
「なんでもねぇよ。それより行こうぜ」
「フッ、まぁいい。時間はあるんだ、後でたっぷり聞き出してやる」
にやり、と笑い京介と圭志も人混みの中へと消えて行った。
end.
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