02
「俺達別にソイツ等の仲間じゃねぇからそんな警戒すんな」
圭志が安心させるように笑って言えば少年は構えを解いて路地から出て来る。
「えっと…?」
少年は圭志達の前まで来ると二人を交互に見て首を傾げた。
圭志は目の前に立つ少年の顔をジッと見て、もしかしてと口を開いた。
「お前、坂下 廉か?」
「知ってんのか圭志?」
「あぁ。コイツもこの辺じゃ有名だからな。Larkってチームの総長だ」
自分の事を言われて廉はおずおずと二人の会話に口を挟んだ。
「俺の事知ってるんですか?」
見るからに年上の相手二人に廉は敬語を使った。
「そりゃアイツが煩いぐらい…」
はた、と途中まで言いかけて圭志は口をつぐんだ。
「あの?」
「良いこと思いついた。坂下も連れてこうぜ。アイツの慌てふためく様が見れるかも」
「何だそれ?」
意味の分からない事を言う圭志に京介が眉を寄せた。
圭志は京介の耳元に唇を寄せ悪戯っぽく囁く。
「工藤は坂下が好きなんだよ」
「へぇ、そりゃいい。朝、邪魔された仕返しも兼ねて連れてこうぜ」
それについては圭志も同じ気持ちなのか二人してにやり、と質の悪い笑みを浮かべた。
「ってことで坂下も来い」
「え?え?」
何だかよく分からない内に廉は、圭志と京介に促され、よく見知ったお店へと向けて歩き出した。
「おい工藤!来てやったぞ!」
店の扉を開けてそうそう圭志は開口一番にそう言った。
その声に店内に居た不良どもが一斉に圭志を睨むように見てきた。
「誰だアイツ?」
「知らねぇのかお前?あの人は工藤さんの友人だよ」
ジロジロ見てくる視線をものともせず圭志はズンズンと店の奥に足を進める。
その後を京介が廉の肩に腕を回してついて行く。
「あの人は?」
「さぁ?見たこと無いな…」
「あれって廉さんじゃ!?」
「ヤバイだろアレは…」
廉は困った表情で回りをちらり、と見て、自分の肩に置かれている手を叩いた。
「何だ?」
「手、離して貰えませんか?コレ見られたら貴方が危ない」
だが、時既に遅く…。
「誰だてめぇ?廉から離れろ」
奥の部屋から出てきた工藤が京介を射殺さんばかりに睨み付けていた。
目の前に立つ圭志を無視してである。
店内は一気にピリピリした雰囲気に包まれ、騒がしかった不良どもは静まり返った。
「圭志、コイツが?」
京介は睨み付けてくる工藤を上から下までじっくり眺め、圭志に確認した。
「そう。俺を呼び出した張本人、工藤だ。おい、工藤!」
「うるせぇ、後にしろ!」
工藤は京介を睨み付けたまま視線を外そうとしない。
「まったく、…京介」
呆れた声で圭志が言えば、京介は笑って廉の肩から手を離した。
「くくっ、これなら心配ねぇな。良いもん見れたぜ」
二人の間で口を出せずにいた廉が、工藤に駆け寄ると、工藤に腕を強く掴まれギュウッと胸の中に抱き込まれた。
「…貴宏///」
その様子に圭志はほんの少し驚いた。
「いつの間に両思いになったんだ?」
京介は圭志の隣に立つ。
「さぁな。俺達には関係ねぇ事だ」
そう言って京介は周りの目も気にせず、するりと圭志の腰に腕を回して抱き寄せた。
圭志も何時もの事と咎めることはしなかった。
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