貰っちゃいました。


〜〜〜♪

枕元で携帯が鳴っている。

圭志はもそもそと布団の中から手を伸ばし、手探りで掴むと携帯を開いて通話ボタンを押した。

「もしもし…」

『よぉ、黒月。お前今日暇か?』

相手は名乗りもせずそう切り出した。

「……何だお前か。朝っぱらから何の用だ?くだらねぇ用なら切るぞ」

それに対し、圭志は睡眠を妨害した事に不機嫌も露に返す。

『朝っぱらってもう十一時だぜ?相変わらず朝弱ぇのな』

「切るぞ」

『まぁ、待て。その様子じゃ暇なんだろ?午後で良いから俺んとこ来いよ』

「だから用件は何だ?」

『来れば分かる。じゃ、待ってるからな』

言うだけ言って通話は切られた。

「お前も相変わらずじゃねぇか」

携帯を枕元に戻し、自分の体に巻き付いている腕を軽く叩いた。

「起きてんだろ、京介」

声をかけられ、一緒に寝ていた京介は圭志の体から腕を解いて上半身を起こした。

「出掛けんのか?」

京介は些か不機嫌そうな表情で圭志を見る。

圭志も体を起こすと欠伸をしながら言った。

「ん。午後にな。アイツの事だからどうせ大した用じゃねぇだろ」

「…ソイツと随分仲良さげだな」

「そうか?まぁ、気が合うのは確かだな」

ようやく回り始めた圭志の頭では、今の発言で京介の機嫌が損なわれた事に気づかなかった。

「圭志」

京介は上半身を起こした圭志の肩を掴み、ベッドに押し戻すとその上に覆い被さる。

「京介?」

そこでようやく圭志は京介が不機嫌なことに気づいた。

「お前は俺だけ見てりゃいんだよ」

そう言って京介は圭志の吐息を奪い、首筋に顔を埋めるときつく吸い上げた。

「んっ…はぁ、…いきなり何すんだ京介!」

顔にかかる髪を軽く引っ張ると京介が少しばかり顔を離し、文句でもあんのか?と、睨み付けてきた。

(何怒って……あ!?)

寝起きでなければ回転の速い頭が京介の行動理由を瞬時に弾き出す。

それと共に嬉しさで上がりそうになった口元を隠すため圭志は京介の髪に指を差し入れ、別に文句なんかねぇ、とキスしかえした。

「んっ…、なぁ。京介も一緒に行かねぇ?用が済んだらその後久し振りに外で夕飯食おうぜ」

スッと圭志の上から下りた京介に圭志は起き上がりながら言う。

「そうだな、明日も休みだしその足でどっか泊まるってのも悪くねぇな」

にやり、と機嫌の良くなった京介が妖しく笑った。

「夕飯って言っただけで俺は泊まりの話しなんかしてねぇぞ」

ベッドから下りた圭志は服を身に付けながら、シャツを羽織っている京介の背へ言葉を投げる。

「文句あんのか?」

不敵な笑みを称え振り返った京介の、先程と同じ問いに、圭志も同じ答えを返した。

「別に文句なんかねぇよ」







「それで、何処に誰に会いに行くんだ?」

何も聞かないまま街まで出てきた京介は隣を歩く圭志にそう聞いた。

「学園に入る前の夜遊び仲間で工藤 貴宏って奴のトコ。Dollっていうチームの総長でこの辺じゃ結構有名だぜ」

「へぇ、族の総長か」

京介は驚くでもなく興味を示した。

「そ。今向かってんのがそのチームがアジトにしてる店で…」

その店の看板が見えた辺りで二人はピタリと立ち止まった。

「何か聞こえなかったか?」

圭志は耳を澄まし、京介を見た。

「聞こえたな。そこの路地から汚ねぇ悲鳴が」

京介は顎指し示し、面倒臭そうに言った。

そんな京介とは逆に圭志は路地を覗き込んだ。

と、そこには地面に伸びているガタイの良い三人の男と、圭志達に背を向けている小柄な少年がいた。

伸びている男達が悲鳴の正体で、それをしたのが少年であろう。

圭志はへぇ、と感心したように息を漏らすと京介の腕を引き、その様を見るように言った。

「三人とも一撃か」

面倒臭そうにしていた京介も倒れている男達の怪我の程度を見て感心したように言葉を溢した。

その声が聞こえたのか背を向けていた少年はバッとこちらに振り返り、訝しげな視線を向け警戒してきた。



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