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〔竜の雲:二匹の竜と右目、完結編〕


この地で一番の権力者、城主である政宗とその血を受け継ぎ二番目の権力を持ち得る湊。

そんな二人は今、文句も言えず正座させられていた。

「いいですか、政宗様。貴方様はこの奥州にとってなくてはならないお方。軽率な行動をとって何かあったらどうなさるおつもりですか!」

「湊様、貴女もです!貴女に何かあったら置いてきた者達が路頭に迷うことになるのですよ。もっとご自重下さい!」


腹心の部下、双方にとって兄兼保護者的存在の小十郎と泉によって。

どちらの言い分も正論。もとより反論できる術もなく二人はそれぞれ謝罪の言葉を口にした。

「Sorry…」

「悪かった…」

いつになく大人しく反省の様子を見せる主君達に二人は分かって下さればいいのです、と言葉を畳んだ。

「では、政宗様は執務の続きを」

「湊様には壊した障子を弁償して頂きましょう」

そう促すように言った二人に気付かれぬよう、政宗と湊はチラと視線でアイコンタクトをとった。

従うようにスッと立ち上がり、廊下へ出る。

そして、…二人は同時に駆け出した。

「政宗様!?」

「湊様!?」

驚きに声を上げた二人を尻目に走り出した政宗と湊は声を揃えて屁理屈を捏ねた。

「「分かったぜ!城内ならOKなんだろ!」」

そう言ってフッと廊下の角を曲がり、姿を消した主君に二人が呆気にとられたのは一瞬。

次の瞬間には…、

「いい度胸じゃねぇか、悪餓鬼共」

「鬼事なら俺も負けませんよ?」

凶悪な面構えの小十郎と、にっこり冷笑を浮かべた泉がいた。



その日、青葉城場内では命掛けの追いかけっこが目撃されたとかされなかったとか…。





end.


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