子孫組小話-夏05
〔子孫組:夏の過ごし方D〕
生温い風が吹き、提灯に灯した火がゆらりと揺れる。
「OK、揃ったな。Let's go!」
「足元にお気をつけ下さい遊士様」
「いざ尋常に勝負!」
「ちょっと旦那ぁ、アンタ何と格闘する気よ?」
「何故俺までこんな児戯に参加せねばならんのだ」
「元晴はお化けが怖いんだ?怖いなら帰ってもいいのよ」
普段は静かな墓地に、賑やかな集団が足を踏み入れる。
「………」
しかし、墓地の奥へ奥へと足を進めるが一向に何かが出てくる気配はない。
「ah-、これじゃ肝試しにならねぇな」
「むむっ。どうしたものか。ん?あれは…」
「どうしたの幸弘?」
幸弘は不思議がる陽菜に答えず、足早に進み出るとその場にしゃがむ。
「こんな所で何をしておるのだ。早く家に帰らねば親が心配するぞ。…なに、迷子?」
「……虎若子、お主誰と話しておるのだ」
「だ、旦那?」
幸弘がしゃがんだ場所には何もない。あるのは砂利と所々に生えた雑草。
「まさか真田、お前…」
「Do I see it!?」(見えてるのか)
驚く面々をよそに、逆に幸弘は何を言っているのだという顔をして元晴達を振り返る。
「居るではないか、俺の目の前に。五歳ぐらいの男児が」
「………」
いくら目を凝らしても誰も何も見えない。
「俺、一応塩持って来たんだけど…」
「虎若子が心配ならば一摘まみと言わず、すべて振りかけてやれ」
「猿、てめぇその塩どこから盗って来やがった」
「遊士様。あれは西瓜に添えて出した塩かと」
「何でも良いからその塩貸しなさい!幸弘、動くんじゃないわよ!」
ばっと明良の手から塩の包まれた紙を奪うと、陽菜はしゃがむ幸弘の頭の上にぶちまけた。
「なっ!?からっ…ぺっ、…何をなさるのだ!長曾我部殿!」
「ふぅ、これで安心ね」
あーぁ、と明良は幸弘に近付くと髪についている塩を払う。
「大丈夫、旦那?その少年はまだいる?」
「む、…いない。いつの間に帰ったのだ?」
「帰ったも何もソイツはGhostだぜ真田」
遊士の言葉に幸弘は何か考える様な仕草を見せた後、きっぱりと否定した。
「いや、幽霊では御座らん。彼の者にはきちんと足が御座った!」
「………そうか」
何だか腑に落ちない感じで肝試しはその後も続行された。
end.
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