子孫組小話-夏



〔子孫組:夏の過ごし方@〕



チリーン、
涼やかな音が緩やかに吹いた風に乗って流れる。

「ん、美味い。やはり彰吾殿の作られる西瓜は格別ですな!」

「その台詞、たしか昨年も聞いた気がするんだが」

幸弘の台詞に呆れたように返す彰吾、そこへ遊士が口を挟む。

「それだけ彰吾の西瓜が美味いってことだろ」

「ほんと、毎年夏になると自然と奥州に足を運んじゃうな」

「フン、それは貴様等だけだ。俺は別に…」

そう言いつつ、元晴も陽菜の隣でしゃくりしゃくりと西瓜を食べている。

「毛利の旦那も毎年来てる癖に素直じゃないねぇ。ま、旦那みたいにいきなり『彰吾殿の西瓜を食べに行くぞ、明良』なんて素直すぎるのも困りもんだけどさ」

やれやれと肩を竦めた明良に、西瓜に夢中だった幸弘が顔を上げてもごもごと反論する。

「おい真田、喋るなら口の中の物を飲み込んでからにしろ」

「ん、んぐっ。…俺は別に彰吾殿の西瓜を食べたくて来たわけではないぞ!」

「ah-、じゃぁ何しに来たんだよ?」

西瓜を食べ終えた遊士が濡れた布で手を拭きながら聞く。

「御館様に美味しい西瓜を召し上がって頂きたく、これは言わば味見。彰吾殿、よろしければ西瓜を幾つか包んで下さらぬか?」

「どっちにしろ目的は西瓜なんだ」

お茶に口をつけ、陽菜はふと苦笑を浮かべる。

「ったく、長曾我部、毛利。ついでだ、お前等も持って行くか?」

「じゃぁ、お言葉に甘えて」

「ならば俺も貰おう」

コトリと西瓜の皮を器に置いた元晴の口元は微かに緩んでいた。

今年の夏も彰吾の西瓜は大人気だ。



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