子孫組小話02
※夢主の名前は固定です。
〔子孫組:現代日常編02〕
突然やって来た真田主従を迎え入れ、流石に来て早々甲斐に帰れとは言えない、一泊させた翌日…。
「―――!!」
「―――。」
遊士は煩い話し声と気配で目が覚めた。
「…真田の野郎だな。ったく、あれさえなけりゃまともなのにな」
掛け布団を捲り、上体を起こす。ふぁ、と欠伸をしていれば障子の前に慣れ親しんだ気配が現れた。
「遊士様。お目覚めですか?」
「ん。今、起きた。入って来いよ」
静かに障子が開けられ、彰吾が入室して来る。
「で、アレは何なんだ?」
布団の温もりを名残惜しく思いながら布団から出る。
「はぁ。真田が庭で猿飛を相手に朝の鍛練をしている様です」
「ah〜、それで人ン家ってことも忘れてヒートアップしてんのか」
彰吾から手渡された着流しを受け取り、遊士は時折聞こえる声に眉を寄せた。
「その様です。…では俺は真田達を諌めて来ますので、遊士様は着替えてからお越し下さい」
「OK.真田にはこれ以上煩くすると朝餉は抜きだって言っとけ」
「はい」
苦笑しながら頷いた彰吾が部屋から出て行き、遊士は着替える為に帯に手をかけた。
東の空に陽が昇りきり、朝の執務を終えた遊士は早朝に一度会っただけで別れた真田の元へ顔を出す。
「悪ぃな。ろくに相手も出来なくて」
「なんの。文もなく突然来たのは俺の方で、遊士殿が気にする事ではごさらん」
昨日、手合わせをして気は済んだのか幸弘はすっきりした顔で笑った。
「そうか」
遊士もふっと笑みを溢し、文と言えば…と続けた。
「今日あたり陽菜が来る予定になってるんだが、会ってくか?」
「長曾我部殿が?…うむ、久し振りに会いたいな」
相手は四国の人間。奥州や甲斐を拠点とする遊士達はそうそう会う機会はない。
「あぁ、もしかしたら元晴も来るかも」
「元晴殿と長曾我部殿はいつ見ても仲良しだからな」
自分の言葉に、納得した様に頷いた幸弘を遊士は何とも言いがたい表情で見返した。
「仲良しねぇ…。それ、陽菜には言っても構わねぇけど元晴には言うなよ」
「何故?」
心の底からあの二人が仲良しだと思っているのか、幸弘は不思議そうに首を傾げた。
「何故って、…そうだな。お前、オレと仲良しだって言われてどう思う?」
「遊士殿とは良きライバルである故、仲良しと言われるとどこか違和感が…」
むぅと眉を寄せて答えた幸弘に、あの二人もそんな感じの仲だ。分かったら言うなよ、と遊士は一応注意しておくことにした。
誰だってとばっちりは避けたい。
暫く幸弘と他愛もない話を続けていれば天井の板が外れ、明良が降ってきた。
それに遊士が反射的に構え、鋭い眼差しを向ける。
「おい、猿。てめぇ彰吾の言葉を聞いてなかったのか?いくら友好国であろうとふざけた真似ばっかしてんとKillぜ」
ピリッと遊士から冗談ではない殺気が明良へと向けられた。
「怖いねぇ。折角の美人が台無しだよ竜の旦那」
明良は肩を竦めおどけてみせる。そして、遊士に近付き耳元で囁いた。
「鼠を一匹始末させてもらったよ」
「……そうか。Thanks」
ポンと遊士の肩を軽く叩き明良はヒラヒラと右手を振って離れる。
「明良!お主、俺の言葉も忘れたと申すか!遊士殿に迷惑をかけるなど!」
「Stop、真田。彰吾もいねぇし見逃してやる。だが、次はねぇからな」
「はいはい、っと。…それより片倉の旦那が城門にいたけど誰か来るの?」
幸弘を宥めながら明良は然り気無く話題を摩り替える。
「陽菜だ。彰吾が迎えに行ったんならもうすぐ来るだろ」
「へぇ、鬼のお嬢がね。っていうと毛利の旦那も来るのかな?」
誰もが皆、陽菜と元晴はセットだと認識していた。
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