竜の雲小話01


〔竜の雲:二匹の竜、逃亡編〕


バタバタと厩(うまや)に騒々しい足音が近付いてくる。

「ah〜?ありゃ湊じゃねぇか」

鞍を整えられた馬の手綱を持った政宗はこちらに向かって走ってくる湊に気づいた。

「政宗!Help meー!オレを助けろ!!」

「またか。今日は何を仕出かしたんだ?」

厩番に湊用の馬を出すよう指示をして、政宗は息を整えている湊を見下ろした。

「泉から逃げてたら勢い余って障子に突っ込んじまって…、したらこ、こ、小十郎さんが目の前にいて」

「oh...It is a misfortune。というかてめぇ俺の城破壊しまくってんじゃねぇよ。叩き出すぞ」(そりゃ、災難だったな)

「ha、そんなこと言ってられんのも今のうちだ。なんたって小十郎さんはオレが障子を破る前から怒ってたし。執務を放り出して雲隠れした誰かさんを探してな」

パッと悪戯めいた笑みを浮かべ厩番から手綱を渡された湊はヒラリと馬に飛び乗る。

「shit!まさか俺がここに居るって言ってねぇだろな?」

同じように愛馬に跨がった政宗は馬上の湊をジロリと睨み付けた。

「言ってたら来るわけないだろー。お?」

不意に湊の視線が政宗から自分がやって来た方向へ向けられる。

そして、そこには…

「政宗様ー!」

「湊様ー!」

小十郎と泉が鬼の形相でこちらへ向かって来ていた。

「この馬鹿!ちゃんと撒いてから来いよ!」

「うっ、次からは気を付けます…」

「はぁ、まぁいい。行くぜ。Here we go!」

「Yeah―!」

馬の腹を蹴り、二匹の竜は逃亡した。



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