07
〔武田軍:子孫、完結編〕
「………」
「やはり、体を動かした後はコレでござる!そうは思わぬか湊殿」
「うむ。甘味の中では団子が一番美味いでござる」
鍛練の後、幸村が佐助を使いに出したから何かと思えば…。
泉は目の前に出された団子の山に開いた口が塞がらなかった。
旦那、口調が移ってるし。
「あらら、湊の旦那も団子が好きなの?」
お茶を入れながら佐助が聞く。
「好きだぞ。でもあんまり食べると泉がうるさいからな」
恐る恐る手を伸ばす湊の視線の先にはぼぅっとしている泉。
「ならば今のうちに食べるでござるよ」
ひょい、と一本とって幸村は湊に渡す。
「駄目だよ旦那。泉だって湊の旦那を思って言ってるんだろうし」
はい、と佐助に湯飲みを渡され泉は覚醒する。
「幸村様、旦那を甘やかさないで下さい。旦那も団子は一日五本って言ったでしょ?」
「泉…」
「そんな顔しても駄目。ご飯が入らなくなるでしょ」
きっぱり切り捨てられ、湊は項垂れる。
「泉、今日ばかりは某に免じて許可して頂けないだろうか?」
湊の落ち込みように幸村が口を挟む。
「うっ…」
そう言われると、と泉は考え込んでしまう。
「まったくしょうがないな。それなら明日の分を繰り上げて今一緒に食べるってのは、ど?」
見かねた佐助が泉に助け船を出す。
つまり明日の団子は無し、と。
「それなら」
考え抜いた後、泉は許可を出した。
その後、信玄が顔を出し、山となっていた団子はあっという間に消えた。
思わず現れた強敵に、明日の団子は無しだと約束させられた二人は肩を落としたとか。
その様子を忍二人が茶を啜りながら見ていた―。
end.
[ 32 ][*prev] [next#]
[top]